茜色の夕日

サヨナラCOLORから色々音楽を聴くようになったとはいえ、野球部に入っている私としては中々足を運んでという時間は取れないでいたのもまた事実である。(某音楽通の友人は姉から色々吸収していた模様)

なので他の子が聴いている音楽を教えてもらうことが重要になっていた。

2009年12月某日。

桜の季節も陽炎が出そうな暑い季節も赤黄色の金木犀の匂い漂う季節もとうに過ぎた。

冷えた空気が漂うグラウンド。
肌感とは裏腹に体から蒸気を出す坊主達。

「フジファブリックって知ってる?」

「フジファブリック?なんか名前だけ聞いたことあるかも」

「そっか。良い曲いっぱいあるし、多分あんまり聴き馴染みない感じの音楽だと思うから聴いてみて。」

と練習の間に間に話をした。

私の中でその不思議な音楽は新鮮だった。
ロックという言葉では括れない個性的な音楽とボーカルの抜け感。(最初に聴いたのはたしか銀河)

その時聞いた中でも私は【茜色の夕日】を好きになった。


こんなにも歌詞の情景が浮かぶものは初めてだった。
目を閉じて浸っていたくなるような感覚。
見たことない変化球を投げてきた後にくる真っ直ぐの球。
この曲は私の心を貫いた。

「フジファブリック聞いた!!茜色の夕日めっちゃ良かった!!」

「茜色の夕日いいよな!!」

「なんか初めて聴く音楽だった!!歌い方も不思議で…etc…。」

と練習の間に間に話し、フジファブリックがこれからもっと聴けるのを楽しみにしていたその1週間後にボーカルの志村正彦さんの訃報が流れた。

知ったのはつい最近。
ファンの人からしたらお前が何を知ってるのかとか思われるかもしれない。
ただ、ただ齧っただけの私でもこのワクワクや楽しみからの落差は心苦しかった。

なぜ。どうして。これから沢山の景色を見せてくれるんじゃないのか。ふざけんなって。

勝手に期待して叩きつけるかのように愚痴をこぼした。
結局、そこに喪失感だけがあった。

その日の部活終わり。
丁度夕日が落ちる頃、茜色の夕日を聴く。
喪失感で空いた穴をこの曲が埋めていく。
埋めたと思ったらそれは溢れ出し、涙が出てくる。

亡くなっても音楽にその記録はある。
本当はもっともっと新しい作品も聴きたい。
けど、彼の作品は少なからずも十二分に厚い。
これらをまだ私には聴ける機会がある。
出会えたことに感謝しなくてはならない。
と勝手な解釈で感情はぐしゃぐしゃになっていた。

今でも夕方。夕日がじんわりしている頃。

イヤホンの中で聴き眺めた茜色の夕日で思い出すのは高校時代のそれ。

しむらさーん。

おれはまだあかねいろのゆうひ。

きいてるよー。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?