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13 ご近所さん・腎臓愛再び

ご近所に面会に来るメンバー


しばらく四人部屋に入院していて様子がわかってきた。同部屋の患者さんはみんな年配の奥さん。お見舞いはだいたい顔ぶれが決まっていて会社帰りの家族。夜7時頃に来て、面会終了の8時までベッドサイドでおしゃべりしていくものと理解した。この部屋の患者は、私と他の二人はずっと変わらず、私の向かいのベッドの一人だけ入れ替わりがある。その人たちの話を書きます。向かいのベッドに入った人は三人いたよ。

一人目の患者さんは元女優?

一人目の人は入院当初からいた人で、どこか不思議な人だった。予想では、元女優さん。というのは、声が役者さんっぽく、活舌と通りの良い特殊な発声だったから。ちらっと見たら、白が混じった髪はセミロングでヘアバンドをして下ろしてる。ほかにも不思議に思えたことがいくつかあって、窓際なのに、ず~っとカーテンを閉めて暗くしている。そしてよく夜中にぱりぱりって何か食べてる。マスクをしないで大きな咳をして私のお隣さんに大きな声で怒られても、何も言わずしれっとしている。消灯後にもテレビをつけているのがよくわかる。基本的に介助を受けておりトイレもおむつのようだけれど、しっかりした理知的な口調で話している。看護師さんにもリクエストをはっきり伝えてどこか女王っぽい感じがする。
毎日、夜になると「息子さんらしき人」がお弁当をもって来て、おかずの評価などをしながら仲良く一緒に食事をしておしゃべりをして帰っていく。私はイヤホンをしていることも多く、近所の会話をずっと聞いているわけではもちろんないが、会話の中に「プリズンブレイク」ってTVドラマの名前が出てきて、それについて二人が熱く語ってるのに気づいた。私も見たことがあるドラマだから自然に耳が吸い寄せられ、その時「あれ???」と思った。なんか変だな、と思ったら、息子と思われたこの見舞客は患者さんに向かって「ですます調」で話しているのだった。
「?」
息子じゃないとしたら、誰だろう?毎日訪ねてくるからてっきり息子だと思っていたが違うよね。だって、ですます調で話さないよね?。ですます調さえなければ、親子のような気の置けない会話なのだけど、時々かしこまった調子がある。弟子?というほどでもないし、どういう関係なのかな?施術者と患者?上司と部下?来てくれてありがとうとか、そういう感じではなくて、来て当然という女王みたいな態度。不思議な人。結局わからず仕舞だった。
その人は一昨日どこかの病棟に移動していってしまった。

二人目の人は小森のおばちゃま風の声

この間、この人のことは書いた。全介護のおばあさん。息子さんが付き添いにきていたけれど、まるで小森のおばちゃま見たいなかわいい声、だけど大声で「イタタタタタタ」「ヤダヤダヤダヤダ」って叫ぶ。それはそれは気の毒。体を少しでも動かすと腰が痛くて、もがいて悲鳴をあげてしまうようだ。介護の人も試行錯誤で「もうすぐ終わるからね」とか「少し我慢してね」とか、「痛いね、痛いね」とか、声かけをしながらおむつ替えや、ベッドからストレッチャーへの移動などをする。看護師の人数がどんどん増えて大騒ぎでベッドに入った。検査や透析へ行くときにどうもお通じが漏れてしまうらしく、それも大変。

同室の他の人たちは息をひそめて成り行きをうかがっていた。(私は自分のことで頭がいっぱいで、ばい菌恐怖症でパニックしていた。)少しでも動かすと暴れてしまうので、おむつ替えがとにかくカオスになっていたようだ。ほんとうに看護師さんやヘルパーさん?頭が下がります。移動するプロセスとか道具とか、みんなで試行錯誤。少しも嫌がらず前向きに取り組んでいる。

おばあさんは、次の日、半日透析で留守にしていて、そのあと、介護度の高い患者さんの部屋に移動していった。病棟には介護度の高いおじいさんやおばあさんもたくさんいる。おばあさんは引っ越ししていくときもかわいい大声で「イタタタタタ」って叫んで、腕っぷしをかわれた男の看護師さんが「痛いね、ごめんね、これからこっちのベッドに移動するから、少しだけ我慢してね、すぐ終わるからね。」といった言葉がとてもやさしくて、親身で、ジーンときた。

三人目の人は女の子?

おばあさんが移動した日の夜に、やはり大騒ぎで担ぎ込まれた女性。初めはどんな人かわからなかったけれど、二日一緒にいたら顔を見る機会があった。岸田劉生の絵のような感じの、いくつかわからないけれど10代か、20代か? 白髪の60代ぐらいに見えるお母さんに付き添われた娘さん。
その子は、入床したその日から、夜中じゅう断続的に苦しんでした。吐いて、痛みに?呻いて、咆哮のような咳をしていた。おそらく同室のみんなは震え上がっていたと思う。またしても私がウイルスなどの感染の危険に怯えたことはさておき、それよりも、(どうしてこの人はこれほど苦しい思いをしなければならないんだろう?)と思って気の毒でならなかった。ベッドの中で身もだえしている様子が聞こえてきて心が締め付けられた。

二人目の患者さんの時に、「どんなことが起きてもそれは私にとって意味があることだ」と決意を新たにしたから、これもきっと意味があることと思って観察していた。私のお祈りが通じるとも思えないけれど、楽になりますようにとお祈りしながら。夫にもお祈りしてもらった。

この人の声を聴いたのは次の日。子供のような声で話している。吐いちゃうから禁食にされてしまっている。やはり透析患者で昼間はいない。糖尿病でもあるようだった。生まれつきの糖尿病から腎臓をわるくして透析になったのかもしれないなと思った。少し地方の言葉のアクセントのあるお母さんが看護師さんに説明しているのをきけば、ちょっと前に脳梗塞もして入院したという。なんというチャレンジの大きな人生を歩んでいるんだろう。
このお母さんが同室の人たちに「ご迷惑かけます」って挨拶しているのが切ないんだよね。きっとこういう体験は何度もあったんだろうな。私の隣の怖い人もさすがに何も言えないみたいだった。

初の主体的社交に出た


ここの病院の個室は二万円台から。。。。最高級は応接室付き一泊13万円台くらい。おおい!誰がはいるんだよ!って感じ。スタッフも特別室付きのスタッフしかそこには入れないらしい。
それに比べたら、この広い快適な差額ベッド代のない大部屋は天国。だから、部屋を変わりたいなんて思わない。けれど、不眠に悩まされることもある。
一昨日の夜は、そんなわけで向かいの女の子が一晩中苦しむ声のため同室のみんなは寝不足になってしまって、次の日の日中はみんなグーグー眠ってしまっていた。それはそれで昼間は静かでよかったけど。。。

次の晩は、彼女は疲れたのか、夜はぐっすり眠れたようで心からほっとした。毎日あの苦しみを聞くのは堪えがたい。だけど、ぐっすり眠れたことはよかったのだが、代わりに、気持ちよさそうに、とても大きないびきをかいて寝ていたのだ。
それで、みんなはまた別の意味で不眠になってしまったようだ。

今朝、私の隣の人とその向かいの人(いびきのベッドの隣の人)が「昨日はいびきで全然眠れなかった」という話をこそこそしているのが耳に入った。だから、私は思わずそこで初の主体的社交に出た。

てくてく歩いて行って、
「こんにちは。〇〇さん、開けていいですか? あの、私、耳栓持ってますから、お貸ししましょうか」といびきの影響が一番あると思われる人に声をかけた。
「ええ?いいですよ~。わるいから、、、」と遠慮したが、私の隣人が出てきて(結局この人が一番世話好きな人)
「あら、〇〇さん、借りたほうがいいわよ!」と後押ししてくれて、
「いいの~?じゃあお借りしますわ」ってことになった。
「百円ショップのものだから、どれだけ効果があるかわからないけど、どうぞ」と言って1セットさしあげた。
「I さんも使いますか?」(I さんというのは例の私の隣の人)
「ええ?いいわよ~わるいから・・・」っていうから、
「私はイヤホンしているから全然大丈夫だし、スペアでもう一個あるからどうぞ」と言ってもう1セット、おやつのメロンボールの入れ物をとってあったからその中に入れてあげた。
感謝された。
それで、なんとなく少し肩の荷が下りた。今まで同室の人との人間関係にはバリアを張っていたし、緊張感もあったので。一度話せば緊張も溶ける。

病状&主治医との会話

私の病状、病状というかステロイドの影響なのか、わからないですが、風邪っぽいラインを華麗に綱渡りしている。
でも、抗菌スプレーもゲットしたし、微熱もたまにでているけれどもこここそ、休むべき!と思って休んでいる。

ステロイドは点滴が終わり、今日から20mg分の錠剤を1日2回服用に代わった。薬を飲んだら上原ひろみを聴いてイメトレ。そしてそのことを医師にもアピールした。(笑)

西洋医学でなんと言われとようが、馬鹿にされようが自分なりの「不思議ケア」をしてる。そのことと、自分が治療に協力的であることをアピールするのに余念がありません。こそこそしないと決めたから!

さっき、主治医が来てお話した。喉が痛くなりそうといったら、うがい薬を出してくれることになった。「先生の名前は出さなかったけど、先生の腎臓愛について書きました。」といったら、困ったような顔をして照れていたので、おかげで腎臓のファンがちょっと増えましたよ!と言ったら、「わーい!うれしー!」パチパチパチと手をたたいていた。かわいいな。自分より腎臓か!

私の病気は体中に炎症が起こってもおかしくないけど、血中の酸素量がいつも98%以上あって、その兆候はない。「酸素濃度をキープする砂糖粒のんでますからね!」とまた匂わせておいた。先生は、多分そういったことを腎臓が一手に引き受けて頑張って堪えてくれてるんだと思うと言ってた。そして病気治療中は、気持ちの面が一番大変で、病気のことや検査のことで泣いちゃったり不安定になってしまう人がよくいるそうなので、ヨウコさんのやり方がうまくいったら体験記を読ませてね。と言われた。

この病気(私の場合は腎臓原発のANCA関連血管炎)って、長期戦になるから気持ちがくじけちゃうとほんとに大変なんだそうだ。この前病院に入った人も泣いちゃったり不安で先のこともわからなくて精神的ダメージが大きいのだそうだ。ちょうど話ができそうな同じ病気の人がいると意気投合して少し勇気がでることもあるんだそうだ。

そうですよね。その不安で仕方がない気持ちはとてもよくわかります。私も入院前は家で泣いてましたし。でも、お薬飲んでイメージトレーニングしたり、ホメオパシーの砂糖粒とか、これまで学んだこととか、いろいろ人体実験して試せるし、すぐに結果がでるかわからないけれど、気持ちは自分の責任として前向きにと思ってます。と答えた。
生検についてもホメられた。「ええ。私も体の使い方の方面では専門家なんで。(どや顔)」しておいた。笑

腎臓内科医の腎臓愛的発言その二


「そうですよ。腎臓はね、ゆっくりゆっくり自分で回復していくんです。そして、体はほんとにすごいんですよ。一つ問題があったらほかのところがカバーしてなんとかやっていくんです。すぐに結果はなかなかでないかもしれないけど、腎臓はちゃーんとやっていくから、急がなくていいからね、ゆっくりでいいからねって思ってあげてください。なかなか結果が出ないって焦らないで。」泣かせるぜ腎臓愛!

今日も書きすぎたけど、ほんとは隣の人の話を書きたかった。そのうち書く。ステロイドの副作用に躁鬱というのがあるから。今は躁なのかもしれない。ダウンが来たらまたそれも書きたい。書きたいことがいっぱいある。病院はワンダーランド!

写真は病室からのタワー

つづく

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