ゲーマーに投げられる「プロ意識」を持てという言葉
(総文字数:約4500文字、記事を読み終えるのに必要な時間:約11分)
鶏が先か、卵が先か問題というのがあります。
これは、哲学者達が長い間議論をし続けている問題で、鶏と卵はどっちが先に生まれた(発生した)のかを問うものです。
鶏は卵から産まれるため、卵がなければ鶏は発生しません。
つまり、卵が先に生まれた説。
しかし、卵は鶏が産まなければ発生しません。
つまり、鶏が先に生まれた説。
この両者の考えがどちらが正しいのかを長年議論し続けています。
この、鶏が先か、卵が先か問題なのですが、意外と日本のプロゲーマーを目指す人たちにも当てはまるのでは?と思い、今回少し考えてみました。
サラリーマン(アルバイト)は働くから給料がもらえるのか、給料が貰えるから働くのか
たまに、Twitterのタイムラインで以下のような意見が見られることがあります。
「日本のプロゲーマーのリテラシー低くね」
「こんなんだから日本でe-sportsが流行らない」
一方、こんな意見を出す人もいます。
「いやいや、給料も発生しない、時間も拘束される、将来性も不明、そんな日本のプロゲーマーに対してプロ意識持てって言っても無理だろ」
「”プロ”って名乗る人に期待しすぎでしょ」
日本では、一部のプロゲーミングチームでは給料を支払っているところもありますが、多くのプロゲーミングチームでは給料等は支払われていないところが多く感じます。
そもそも、日本においてまだe-sportsで金を生むサイクルが未発達なのも強く影響しているかと思いますが、給料の発生しないプロゲーミングチームの選手達に「プロ意識を持て」、というのは酷なのでしょうか?
冒頭で書いた「鶏が先か、卵が先か問題」よりも身近な問題に、以下のようなものがあります。
サラリーマン(アルバイト)は働くから給料がもらえるのか、給料が貰えるから働くのか。
サラリーマン(アルバイト)として働く場合、当然ながら給料が発生します。
しかし、この給料が発生するサイクルは、「給料が発生するから働く」「働くから給料が発生する」という2つの観点から見ることが出来ます。
給料が発生するから働く
これは主に、被雇用者側(サラリーマン/アルバイト)から見た目線です。
給料が貰えることが確定しているから、働く。
だから人によってはいわゆる「仕事をサボる」人もいます。
なぜなら仕事をサボろうか、ちゃんとやろうが、彼の中では「給料が支払われることが決まっている」からです。
働くから給料が発生する
これは主に、雇用者側(オーナー)から見た目線です。
従業員が働くからこそ、利益が発生し給料が支払える。
だから従業員には仕事をしっかりすることを命じますし、会社のルールを破った場合には罰則を与えます。
実はこの、「被雇用者」と「雇用者」はプロゲーミングチームにおいても当てはまります。
多くの部外者は雇用者目線でプロゲーマーを見る
Twitterで「プロゲーマーのリテラシー問題」を指摘する人たちは、被雇用者目線(選手目線)と雇用者目線(オーナー目線)、どちらで見ているのでしょうか?
おそらく、多くの人は雇用者目線(オーナー目線)で意見を言っていると思います。
しかし、多くの選手は被雇用者目線でチームのことを考えています。
この差が、「プロゲーマーがプロ意識を持つべきなのかどうか」の議論につながります。
Twitterなどでの部外者(雇用者)「日本のプロゲーマーはプロ意識が低い」
選手達(被雇用者)「対価(給料)も発生してないのに、プロ意識もって活動しろって言われてもなぁ。。。」
上記の言い方を少し変えてみましょう。
Twitterなどでの部外者(雇用者)「日本のボランティアはプロ意識が低い」
ボランティア(被雇用者)「対価(給料)も発生してないのに、プロ意識もって活動しろって言われてもなぁ。。。」
発言者を変えただけですが、言っていることはほぼ同じです。
ボランティアも、プロゲーマーも対価は発生していないが、自分の好きなことしていることに変わりありません。
先日も、東京オリンピックのスタッフをボランティアで集めようとして大炎上しました。
活動にあたり提供する物品等
ユニフォーム
活動中の飲食
ボランティア活動向けの保険
東京(会場が所在する都市)までの交通費及び宿泊は自己負担・自己手配となります
東京2020大会のボランティア活動|東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
あれが炎上した点としては「無償で人を働かせようとした」からです。
この部分だけを見ると、被雇用者(ここで言う選手たち)がプロ意識をもって活動するのは、給料や物品として対価が発生しているから。
そのため、多くのプロゲーミングチームで対価が発生していない以上、プロ意識を持てというのはおかしい、という意見が正しいように感じます。
給料などの対価が発生してないので、選手たちに向かってプロ意識を持てという指摘は変。
以上!
と、話が終われば簡単なのですが、プロゲーミングチームは「スポンサー」という概念があるため、話が難しくなっていきます。
スポンサーは選手たちにプロ意識を求めるのか
では、「給料は発生してないが、スポンサーのついている、もしくはスポンサーがつくことを目的の一つとしているゲーミングチーム」はプロ意識を持つべきなのでしょうか?
個人的にはこれにはYesだと思っています。
スポンサーが付く、ということは「金銭や物品などの付与」がスポンサーからゲーミングチームに対して発生します※。
※内情に詳しくないので、ご指摘ある人はこちらまで。
つまり、雇用者と被雇用者の概念から考えると、アマチュアゲーミングチームと、プロゲーミングチームは以下のようになります。
~アマチュアゲーミングチーム~
雇用者⇒オーナー(対価を被雇用者に支払っていない)
被雇用者⇒選手
~プロゲーミングチーム~
雇用者⇒スポンサー(対価を被雇用者に支払っている)
被雇用者⇒オーナー・選手
仮に、プロゲーミングチームの目標の一つが「スポンサーを付けること」である場合、スポンサー(雇用者)の理念に沿わない行動・発言はすべきではない、というのは簡単に想像できると思います。
理由は簡単で、プロゲーミングチームの不祥事は、スポンサーのブランドイメージを傷つける可能性があり、傷つけられたスポンサーは降板する可能性があることが簡単に想像できるからです。
自分達の背後に「スポンサー」という、自分たちを応援している企業が存在しており、彼らのブランドイメージを傷つけるような行動・発言はしてはいけない。
これが「プロゲーマー(スポンサーのついている人)はプロ意識を持って活動しないといけない」ということにつながります。
では、「スポンサーを付けようと考えているアマチュアゲーミングチーム」はプロ意識を持つべきなのでしょうか?
習慣は簡単には変わらない
心理学用語で、現状維持バイアスや、現状維持の法則と呼ばれる言葉があります。
これは「人間は習慣付いたことを簡単に変えられない」ということです。
寝る前のスマホをやめられない。
お菓子を食べるのをやめられない。
これらは既に日々の生活において習慣付いてしまっているため、いざやめようとしてもなかなかやめることができません。
では、普段からTwitterで危ないこと(暴言に近いものや晒しに近いこと)をしている人に対して、ある日突然「今日からそういう発言禁止ね」と言われた場合、その根付いている習慣はすぐにやめられるのでしょうか?
答えはNoです。
人は習慣付いていることをやめることに対して、抵抗を持ちやすい生き物です。
「人は簡単には変われない」という言葉もこれに関係しています。
ここで話は最初に戻ります。
対価(給料)の発生していないゲーミングチームの選手たちは、プロ意識を持つべきなのかどうなのか
これは、選手個人の最終的な目的が「何」かによります。
スポンサーを付けることに興味がなく、純粋にチームとして活動できれば良く、白い目で見られることなど一切気にしないのであれば、プロ意識を持つ必要はありません。
その分、自分たちが周りから白い目で見られることは避けられないでしょうが。
しかし、将来的にスポンサーを付けようとしたり、将来的にゲーム業界で働きたい場合、「普段の発言を気を付ける習慣」を身に付けておいて損はありません。
スポンサーが付くということは、スポンサーが付く前と比べてより多くの人たちから注目される立場になります。
ある人は憧れの目で見るでしょうし、ある人は嫉妬の目で見るでしょう。
特にTwitterは140文字という制限があるため、「正しい意図を伝えづらく、揚げ足を取られやすい」SNSの一つなので注意が必要です。
プロ意識って何?
ここまでで散々取り上げた「プロ意識」ですが、一体プロ意識って何でしょう?
Wikipediaによると、以下のような解説がなされています。
プロ意識(プロいしき)とは、専門職(特に芸能・プロスポーツ・芸術家・職人)が持っているプロとしての高い職業意識のことである。
プロ意識 - Wikipedia
「料理とは」で調べたら「料理とは調理をすることである」と書かれていた時のような役に立たなさを感じましたが、ここは独自の解釈で進めたいと思います。
プロ意識に対する定義に関しては各々持っているかと思いますが、一つの判断基準として
次世代のゲーマーたちに憧れられる存在になれるかどうか
が、一つの指標になるかと思います。
どんなにゲームがうまくとも、SNSで暴言ばかり吐いていれば「強いんだけどねー。。。ちょっと一緒に仕事はしたくないかな」となります。
また、ゲームがうまくなくとも、マネージャーとして活躍をする、アナリストとして活躍する、実況/解説として活躍するなど、今のゲーム業界には様々な「プロ」の道が存在しています。
人間は必ず衰える生き物です。
どんなにゲームで最強であっても、いつかは世代交代が来ます。
「実はロボットだった」と揶揄されるFakerでさ、ミッドレーナー世界ランキング1位から4位に下落したと発言しています。
今の所、僕のミッドレーナーとしてのランクは4位です。2014年にはチームのパフォーマンスに関係なく1位にランクされていました。でも、去年のパフォーマンスは僕をトップに置くには不十分でした。
Faker「今はミッドで4位。自信がない。もう1度上手くできるか分からない」【海外インタビュー翻訳】 - LoL情報ナビ
もし、世代交代が来た時に「ゲーム業界で選手以外の道に進める可能性を残す」のか「ゲーム業界を諦めるしかないのか」かは、普段からいかにプロ意識を持って活動しているかが影響するのではないでしょうか。
まとめ
プロ意識を持つ・持たないは自分が将来どのような道を目指したいのかによって異なると思います。
スポンサーのついているチームに属している人、将来的にスポンサーの獲得を目指しているチームに属している人、将来的にゲーム業界に携わり続けたい人。
このような人たちは常にプロ意識を持って活動すれば、より自分の目的に近づくでしょう。
逆に、これらに対して一切興味がない人たちにプロ意識を問うのは時間の無駄です。
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