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eスポーツにおいて「勝つ」ということが「価値を生む」とは限らないというお話

今ではもう「eスポーツ」という言葉が市民権を得つつあり、昔のような「なんかゲームしている人」から「かっこいい存在」と認知されるようになってきています。

ただし、悲しいことに「かっこいい存在」であるだけではお腹は膨れませんし、お金を稼がなければ毎日酷使しているパソコンの光熱費も払えません。

我々eスポーツチームにかかわる人間は、何らかの形で価値を生まなければなりません。

そんな中で「勝つということが価値を生むとは限らない」という今のeスポーツ業界について触れていきたいと思います。

eスポーツにおいてお金が発生するシーンは少ない

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eスポーツにおいて、選手にお金(対価)が発生するシーンは以下のようなものです。

・大会の賞金
・配信での投げ銭
・配信での広告費
・イベント出演料

金額の大きさとしては以下のような感じかなと。

大会の賞金※>>出演料>投げ銭・広告費
※ここでは賞金が2桁万円以上を超すものを指す。

eスポーツにおいて選手が手っ取り早くお金を稼ぐことは、大きな大会で結果を残して賞金をがっぼり得ること。これは間違いありません。

ただし、多くの人がご存じのように、日本のeスポーツはまだ未発展であり、海外のdota2、Fortnite、CS:GOのような億単位の賞金が出るのは少ないです。

またそのような賞金を手に入れられるのは、TOP中のTOPとなっており、多くのeスポーツチーム(そしてプロゲーマー)が到達できるわけではありません。

では、ほかの部分(イベント出演料・動画の広告費など)で生活ができるほどお金を稼げるのかというと、はっきり言ってそれも厳しいです。

そもそも企業が「eスポーツ」における価値を見出していません。
これは企業が悪い、という話ではなくそもそも市場が未発達なゆえに「eスポーツに投資すると、どれくらい儲かるの?」ってのが誰も分かっていません。

そのため、「まずは小額から・・・」「とりあえず様子見で・・・」という風に、手探りで進んでいます。

一方で、eスポーツという市場が未発達であるがゆえに「我々eスポーツチームが何を提供できるのか、企業は何を求めているのか」を理解しているオーナー(代表)も多くないです。

そのため、一部の稼げるeスポーツチームと、稼げずに悩んでいるeスポーツチームの差がどんどん広まっていっているのを感じます。
※ここでいう「稼ぐ」というのは「金額の大小」ではなく「安定して価値を提供し、対価を得られている」と定義します。

eスポーツチームの設立をこれから考えている人で、長くチームを運用しようと考えているのであれば「選手たちが大会で優勝できるように応援する!」というよりも、「いかに自分たちの選手が価値を生み出せるようになれるか」を考えられるスキルが必須だと思っています。

価値を生み出せるeスポーツチームとは

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繰り返しになりますが、"スポーツ"において「強い」は正義です。

他人と技術を争い、どちらが優れているかを決める"スポーツ"において、他人より優れているということはそれだけで価値があり、その価値を求めている人は多く存在します。

しかし、そのようなトップに君臨している人材はそもそもこんな記事を読まなくても価値を生み出せているでしょう。

我々のような中小eスポーツチームが今後も生き残るには「自分たちが何をできるのか」を理解することから始める必要があります。

実際、私が所属しているeスポーツチーム 思考行結 では過去に以下のようなイベントの主催・共催・手伝いなどで対価を頂いています。

【ぷよぷよeスポーツ大会】萌えサミ杯【山口県】主催
「HADO体験イベント@マツダスタジアム&広テレ社屋」出展
「広島東洋カープvs阪神タイガース」始球式登板
「Mini四駆 mitte宇品カップ」共催
「HADO×思考行結ブースで、最先端テクノスポーツ「HADO」を体験しよう!」RIZeST Gamers Base 2018出展
「倉敷JC復興支援事業第3弾 サブカルソニック2018 ~All you need is smile~」主催

今現在、我々は特定のゲームにおいてトップを目指しつつも、遠い道のりにある状態です。

それでも上記のような「お仕事」を頂けているのは「自分たちが与えられる価値」を理解し、「企業が求めているニーズに合わせて営業をしている」からにすぎません。

"スポーツ"において「強いことは正義」ですが、"eスポーツチーム"において「強いことは正義」ではありません。

eスポーツチームにおいては「所属選手に価値を生み出せる人」が正義です。

チームのオーナー(代表)と選手・スタッフはRPGでいう主人公と装備のような関係だと思ってます。

どんなに武器(選手)が強くても、その武器を振るう人(オーナー)が貧弱であれば武器を正しく扱えません。
※逆に武器を振るう人が屈強であれば、武器が弱くても戦えてしまうのがeスポーツの面白いところでもあります。

運営スタッフは代表や各選手をサポートする盾や防具の役割でしょうか。

屈強な主人公、頼れる武器、そして守ってくれる防具、すべてがそろっていないと勇者は魔王を倒せません。
つまりはeスポーツチームを作るということは、RPGにおけるキャラ育成と同じであると思っています。

思考行結で「価値を生みだしている」選手を例に

じゃぁ「価値を生み出せる選手って何よ?」ってところで、弊チーム所属の一人を紹介させていただきます。

名前はDIO。ぷよぷよ部門で活動をしています。

思考行結DIO(@baretanyo)

ぷよぷよには「プロライセンス」が存在し、大会などで実績を残すと名実ともに「プロゲーマー」となるのですが、DIOはプロゲーマーではありません。

なぜか本人は「俺はプロゲーマーだ!」と名乗っているので「ぷよぷよ界のブラックジャック」「無免許プロゲーマー」などと呼ばれています。

しかし、彼はトークスキルと大会運用スキルがカンストしており、ぷよぷよのイベントを回すのが超うまいです。

そのため、プロゲーマーではないですが、様々なぷよぷよの大会の主催しており、企業とタッグを組んでイベントを開くこともあります。そして多くののイベントで「大成功」を納めています。

確かに彼はプロゲーマーではないです。確かに彼はプロゲーマーではないですが、それでも「eスポーツ業界」で価値を生み出しているうちの数少ない一人です。

たとえ強くなくても、たとえプロゲーマーでなくても、自分の武器を正しく理解し、求められているニーズに合わせることができれば、eスポーツ業界でも生きていくことができることを彼は今後も証明してくれることでしょう。

まとめ

eスポーツ業界は"スポーツ"という言葉が入っており、強い=絶対の正義であるかのように思われますが、実際は「ゲームにおける強い弱いを問わず、なんらかの価値を生み出せる人間が一番"強い"」です。

確かにゲームが強いことは素晴らしいことです。

しかし、絶対強者であり人間よりも強かったはずの恐竜が絶滅したように、将来生き残る人というのは「変化に対応できる人」です。

そして現在のeスポーツにおいては「選手の強さよりも適応力」が重要になっているのを感じます。

思考行結では「現状維持は退化と同じだ」という指標を掲げながら、活動をしています。

今後もいろいろなイベントを企画しており、広島県のeスポーツを盛り上げていきたいと思います。
※そしてゆくゆくは東京も。

本日は以上です。

では、eスポーツの世界でお会いしましょう。

執筆者:Rainbee(@Rainbee_Amebati)

所属チーム:Pro esports Team 思考行結 

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