見出し画像

新しいいのちのお話。②

前回の続きです→

覚悟を決めたは良いものの、小心者なので夜は殆ど眠れませんでした。
初めての入院、初めての出産、初めての体に傷跡の残る手術。
今までのことが色々と頭をよぎりましたが、このままでは体に障ってしまう!と頑張って眠りにつきました。

翌日、朝起きて回診に来てくださった主治医から「午前中は無理そうなので午後からの手術になりそう」とのお話が。
予定を変更しての帝王切開だったので致し方ないのですが、21時から絶飲食だったので、空腹と乾燥に耐えるのが大変でした。相部屋の皆さんのお食事の香りがもう羨ましくて羨ましくて!

もうとにかく待つことしか出来ないので、スマホや持参したタブレットPCで暇を潰しつつ二度寝する…を繰り返していたのですが、お昼になっても一向に呼ばれず気が付いたら14時に。
精神的疲労が溜まってきて、もしかして今日はこのまま呼ばれないのでは?などとネガティブなことを考えていたら14時半ごろにやっと手術室に案内できるとのお知らせが!
準備に時間かかるだろうから、そこから30分は待たされるのかなーと思っていたら15分で向かいますとのこと…!
あまりにも急展開すぎてたくさん待っていたはずなのに心の準備が出来てませんが!?
ともかく気持ちを落ち着けて家族に連絡を入れて、いざ手術へと向かいます。

この時点で自分の体調に違和感を感じ始めていたのですが、呼吸がおかしくなるのはいつものことだし、少し大人しくしてたら徐々に良くなるだろうと思って誰にも伝えなかったのが完全に悪手でした。
帝王切開は立会いは禁止、赤ちゃんが出て来たらカンガルーケアは出来ず、お顔だけ見せてもらって一日は母体の回復に努める。
予定と狂ってしまったけどもう少しで会える、今多少具合悪くても30分くらい我慢したらあとは幸せが待っていると。

手術室に着いてからはほぼ休むことなく順調に処置が進んでいきました。
特に背中から注入する下半身麻酔が本当に怖かったのですが、本当に全く痛みがなかったので拍子抜けでした。
担当してくださっている皆さんと簡単なやりとりをして、仰向けになったところで少しずつ体調に変化が。マスクをしているのでただでさえ浅い呼吸がどんどん乱れて大変なことに。過呼吸とかでなく、吸って吐くということをしっかり意識しないと息ができないレベルになってしまいました。
苦しい、辛い、意識が飛びそう。
助産師さんたちの「もう少しで出て来るから頑張って!」という励ましが遠くに聞こえる。
もしかしてこのまま自分はだめになってしまうのか?
いやいや、それなら私は古河渚になってしまう。それだけはだめだ。
と、なんとか今残っている気力を振り絞っているとなにやら泣き声が…!

予想以上に大きくてぷにぷにしていて、一目で夫似とわかる可愛い女の子でした。
もっとたくさん声をかけてあげたかったのに、一言
「かわいい」
と言うだけでその時はもう精一杯で。
本当なら術後の流れ的に傷の縫合して元気な状態で病室に戻るのでしょうが、声をかけた後に力を使い果たしたようで、呼吸困難と嘔吐で文字通り意識がなくなりました。

目が覚めたら既に病室に戻っていて、足には血栓防止用の器具が取り付けられていた状態でした。
良かった、死んでなかった。
安心したは良いものの、とてつもない喉の乾燥で再び呼吸困難に。
自分の呼吸で喉がかすれてとにかく痛い。
どうにかして水分を補給しないとこのままじゃまただめになりそう。
目覚めたばかりであまり自由のきかない体を必死に動かして、枕元のナースコールを押して助けを呼んでみることにしました。

「どうしましたか?」
助産師さんがすぐ駆けつけてくれたのに喉がつぶれて声が全然出てこない。
「す、すごく喉がかわいたので、水、もらってもいいですか…」
良かった。かすれながらも話はできる状態らしい。あとはこのままお水をぐびぐびっと飲ませてもらえればどうにか少しでも復活できるかな、と思っていたのに、
「ごめんなさいね、術後4時間はまだ絶飲食のままなの。」
と言われたときの絶望たるや。
唾を飲み込もうにも、呼吸困難がずっと続いていたからなのか口内があまりにも乾燥しすぎていてどうすることもできない。
この時本当に人生が終わると思いました。

すがるような気持ちで「どうにかならないですか」と聞いてみたらうがい程度なら可能とのことで、持ち込んだストローとコップで介助してもらいながら横になったまま水をふくませてもらいました。口の中に広がっていく水分は大げさに聞こえるかもしれないですが、日照りで干からびた畑に久々に降った雨のようでした。
飲み込まないように気をつけながら受け皿に吐いてほんの少しだけすっきりできましたが、それだけでは全然足りなかったので、申し訳ないと思いつつも10分おきくらいにナースコールを呼んでしまいました…反省。

目が覚めてから体感30分くらい経ったくらいで携帯を確認できるくらいに復活しまして、LINEを開いたら「15時29分に3522gの女の子」と夫からのメッセージを見て、やっと現実に戻ってきたような感覚に。
時計を確認すると既に20時半。4時間以上意識をなくして寝ていたようです。
その後無事に水分もとれる時間になって事なきを得ましたが、血栓防止の装置は一日経たないと外せないとのことでした。

またまた次回へ続きます→

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?