本の続き 今回の内容は裏話アリ

このコロナ禍でテレビの演出も大きく変わった。ソーシャルディスタンスやアクリル板、いきなりステーキでしか見たことがなかった透明マスク。

バラエティ番組の形態も同じように変化した。ステイホームのお笑いだ。
緊急事態宣言時には外出を控えなければならない。よってスタジオ収録などはほとんどできない状況だ。
家からお届けできるネタがあればテレビに出られる状況になった。

しかし、売れっ子と並ぶにはもう一つ仕掛けがいるだろう。知らない芸人の家での即席芸は、あまり視聴者に響かない。

僕らはクラウドファンディングで集めた支援から単独ライブを月一で行っていた。
どれもステイホームで取り組んだ。

相方空との写真漫才だ。
漫才を作る。台詞をお互いの家で録音する。電話をしながら漫才をすればいい。そしてそれらを繋げられたら音声だけの漫才が完成する。そしてその台詞に沿って、場面場面の写真を撮る。その写真をパラパラ漫画のように組み立てて、最後に音声を足す。
すると、ボラギノールのCMのような静止画の漫才が完成する。

YouTubeにアップしたときにコメントでも「ボラギノール漫才」と例えられた。

これをテレビで出したい。
無いのは知名度。しかしアドバンテージはある。まだ静止画での漫才は誰もやっていない。知名度の無さだけで捨てるのには勿体無いと感じた。

ーーーならば意図的にバズらせるしかない

僕はオンラインサロン「うめむら村」のメンバーである村人たちに相談した。

「Twitterにアップするのでおもしろいと感じた方は拡散してください。みんなの力でラフ次元がテレビに出られるかもしれません」

僕はこのクチコミに賭けてみたのだ。

皆さんはマスコミの対義語をご存知だろうか。
マスコミュニケーション。大衆伝達。
テレビや新聞、ラジオなどによって大衆に向けて発信するコミュニケーションのことを指す。
一気に知ってもらうにはマスコミを利用するのが最も効率的だ。

その対義語が「クチコミ」だそうだ（笑い飯哲夫さんが教えてくれた。間違ってたらごめんな、ともおっしゃっていた）。

人から人に伝えられる情報はクチコミだ。クチコミはマスコミのように一気に伝えられたり広まったりはしない。しかし、クチコミは信憑性が高い。「あそこのお店、美味しかったよ」は宣伝ではなく感想だ。利害が無いのに勧められるものには信用がある。

僕はこの先クチコミがとても重要になり、マスコミに並ぶとんでもない武器となると信じて止まない。

コマーシャルではない賛美には、人に喜んで欲しいという純粋な気持ちの割合が高いからだ。

そのクチコミの信頼をマスコミに載せることができる。SNSだ。広告のない賛美には信頼があり、SNSで大衆に発信している。広告のハイブリッドだ。

僕はこれを自ら生み出せないかと考えた。もちろん嘘が入っていない感想を生み出したい。その数字が少しでもバズればテレビに出られるかもしれないと考え実行した。

ちょうど日本テレビの「スッキリ」でステイホームの短めのお笑いネタを募集していた。
募集要項はTwitterでのハッシュタグだ。

僕は作戦をうめむら村のメンバーとシェアして、さらなる拡散を促した。

結果、僕らは全国テレビスッキリにネタで出られた。写真漫才のツイートを広げてくれたおかげだと思う。#スッキリ でのネタのアップはその時期たくさんあった。その中で無名にも関わらず選ばれたのはみなさんのおかげに違いない。

僕らはコンビを組んで全国テレビでネタをしたことがなかったが、このコロナ禍で初の全国テレビの出演を果たした。静止画だが漫才は漫才だ。

これはとても嬉しかった。

さらにパネルクイズアタック25にも出演できた。
日頃のうめゼミなどの活動を見てくれたマネージャーが押してくれたのだろう。
パネルを一番獲得して一位を取れた（本当は同点決勝で負けた。でも一番パネルは取ったし一位タイなので、こう表記させていただいた。この表紙が大事で、掘り下げられると具合が悪いことが梅村には多々ある。この張りぼてスタイルでとにかく前へ進んで、あとから結果を出して「正解」にしてしまう、という考えだ。今はまだ過程なので非常にダサい）。

さらに、MBS明石家電視台で一ヶ月に一番稼いだ芸人は誰だ！？というコーナーに出演できた。
関西の若手芸人である月に一番稼いだからだ。
クラウドファンディングのおかげである。一度収入として計上されるので数字上一番稼いだことになった（経費でほとんど無くなった話はカットされていた。これも表紙が大事といったところだろう）。

僕はこのコロナ禍で「自分の見せ方」と「何が仕事になるか分からないから何でもやっておく」という二つを学んだ。