女でありたくて、逃げたくて。
「お前ってなんか女っぽくない」
「女として見れない」
数年前、高校卒業直前に、好きだった人に言われた言葉を未だに思い出す。
「女っぽくない自分」に囚われ始めたのは、この時だった、と思う。
***
中高生の頃、自分が女の子であることが嫌だった。
好きな色は青と言い、
ボーイッシュな服を着て、
ちょっと粗雑な言葉を使って、
恋愛なんて興味ないといろんな誘いを断って、
元々ドライな部分のある自分の性格を前面に押し出して、
151センチの身長を笑いながら、「身長さえあれば女子にモテたと思うわ〜笑」と笑顔で言い放ってた。
間違ってはいない。全て。
ピンクより青が好きだったし、
女性的な服より男性的な服に憧れた。
「か弱い女の子」として扱われたくなくて、男性的な「強さ」がほしくて、
自分を好きだという男の子の女々しさ、受け入れ切れない自分に辟易していたのも事実。
ちょっと粗雑な言葉を使うのだって、なんとなくそちらの方がカッコよくて、強くなった気がしたから。
「自分一人で生きていける力、自分とあと一人を余裕持って養えるくらいの力がほしい」という当時から持っていた理想像も変わってない。
ただ、それだけじゃなかったんだと思う。
女の子として扱われたい時もあって、
女の子らしい服を着て「可愛い」と言われたくて、
少女漫画のような恋愛に憧れたりもして、
なんなら今思い返してもピュアすぎるくらいの片想いをして。
冷血ドライと言われながら、どこか、自分はそんなんじゃないと思い続けて。
そう、どこまでもわがままで、身勝手で。
今思い返せば、
自分でもどうしたいのかわからないまま、ぐっちゃぐちゃな感情を持って生きてたんだと思う。
***
そんな中、私は好きだった男の子に振られた。
というより、その男の子が別の女の子に告られて、付き合いだした。
未だに、
報告を受けたときのことも、
その後の私の言動も、
相手の言動も、
私の感情の動きもイライラするほど覚えてる。
その時に言われた、「お前ってなんか女っぽくない」「女として見れない」という言葉も。
本当にその男の子が好きだったか、今となってはわからない。
受験に疲れた中で、なんとなく顔が好みで、話してて楽しくて、「これは好きに違いない」「恋に違いない」と思いたい部分もあった。
実際、この後の立ち直りは早かった。
次の日にはすっぱり切り替えてたし、
その後、かなり頻繁にLINEが来ても、月一くらいでその男の子と会っても、心が揺れることはなかった。
(1ヶ月でその彼女と別れたとはいえ、彼女いるくせに誘ってくるのもどうなんだろうかと今なら思うけど)
けれど、
どうして選ばれたのが自分じゃなかったんだろうとは思った。
そして、
「お前ってなんか女っぽくない」「女として見れない」という言葉は、当時の自分には、そして現在の自分にも、大きすぎた。
***
そんなこんなで大学に入学した。
出身高校の名前を答えると、「お嬢様」と言われ、「女の子っぽいね」「モテそう」とも言われた。
私にとって、これは当たり前といえば当たり前だった。
大学に入ってメイクを始めて、
服装も女の子っぽくしてたのだから。
けれど、彼氏はできなかった。
次第に、「モテそうなのに」「かわいいのに」という周囲の言葉が重荷になって、凶器になった。
どうしてみんな彼氏ができているのに、自分にはいないんだろう。
どんどん、「お前ってなんか女っぽくない」「女として見れない」という言葉が現実味を帯びていった。
「女であること」がしんどくてしんどくて。
けれど、人一倍女でありたくて仕方なくて。
男女という壁を越えたくて。
自分が女だということを確かめたくて。
今となっては本当に馬鹿なことをしていたと思う。
自尊心を高めたいがために、危ない橋を渡ろうとしたり、
大人ぶって何も感じないふりして。
崩れていく自分をどうにかしたいのに、どんどん堕ちていって。
そんな自分を見たくなくて、余計に先の見えない暗闇に走る。
暗闇の方が、自分を見なくて済むから。
あんなに自分を安売りしなくても。必要なんてなかったのに。
***
今なら、少しわかる。
思い返せば、私に好意を抱いてくれていた人はいた。
全て、そんなことはないと拒絶してただけ。
相手は自分を好きなはずないと。自分が女として認識されるはずがないと。
それに、自分から何も動かず、相手からの誘いを断ってるのに、彼氏なんてできるはずもない。
それで彼氏ができないと嘆いてたなんて、ちょっと馬鹿なんじゃない?と思う。
彼氏がいることが全てじゃないってことも、わかってたのに。
でもやっぱり、
未だに、「お前ってなんか女っぽくない」「女として見れない」という言葉は私の中から消えなくて、ものすごく苦しくなる時がある。
わかってはいるのに、外見に囚われそうになる。
馬鹿にされたくない、舐められたくない、そんな焦りに似た感情で押し潰されそうになる。
女でありたくないと思う時だってたくさんあるのに。
なんで女なんだろうって、男になって自分と関わってきた男が全員女になって、自分がされてきたことを全部やってやりたいと、感情が溢れて泣きそうになることだってある。
私に悪い部分があったこともわかってるつもりだし、男になったら全て悩みがなくなるなんて全く思ってないのだけれど。
性を超越したいと思いながら、性に囚われる自分が、嫌で仕方がない。
***
別に、私がかわいそうだなんて言うつもりはない。
些細な発言でも傷つくんだから、発言には気をつけてほしいと思ってしまう時もあるけれど、これは言葉への感度の問題だから、仕方がないと言えば仕方がない。
そもそも、嫌だと騒いだところで現在を生きていくしかないのだから。
みんながやっているように、上手に、ほどほどに付き合って、向き合って、生きていくしかない。
早く先に進めるように。
現在の自分を受け入れられるように。
この感情を、いつか昇華できるように。
ゆっくり、あせらずに、自分と向き合っていきたい。
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