読書感想:剣の輪舞&剣の名誉とマンガ版ファイナルファンタジー
ここのところずっと読んでいた、エレン・カシュナーの「剣の輪舞」(増補編)と姉妹編「剣の名誉」を、この連休中に帰省先の実家まで持ち込み読了しました。
これを読みながら、「D&Dの参考になるな」ってずっと思ってました。
王政を廃して貴族たちによる議会制を敷く国を舞台にした、デカダンなプロトコルの中で生きて利益と虚栄心を求めて蠢く貴族社会と、その「生きた剣」として虚栄と虚飾に満ちた伝説の中で生きる決闘者=剣客たち、彼らを遠巻きに眺めながら生きる巾着切りや辻強盗や娼婦たちの欲望と暴力に満ちた下町の風景。
このコントラストはソードコースト地方の都市国家、特に、同じく王政でなく貴族社会による合議制を敷き、富裕層と貧困層の落差が激しいバルダーズゲートが重なりました。
そう言えば、PCゲームのバルダーズゲート3も日本語版が出ますね。
……まあ、PS5持ってないてんぐには縁がない話ですがね。(涙)
あと王政を廃した歴史や貴族社会内部と身分制社会のプロトコルの細かさは、「ドラゴン金貨を追え」で味わったウォーターディープも浮かびました。
もちろん、剣客たちの剣術やライフスタイル、それに敵の屋敷への潜入や芸術や文学にも縁があるところは、ローグ:スワッシュバックラーやバード:剣の楽派の参考に直球でなります。
(9/19追記)
そして、アレクとリチャードの関係性についても言及しますが……あれはこう、性差を越えた真実の愛とか心の伴侶とかそういうんじゃなく、永遠の腐れ縁なんじゃないかな。少なくともアレクって人も、性的傾向とは無関係にまずもって誰かと幸せに添い遂げるって人生とは無縁そうだと来てるし。リチャードからアレクへの思いは「何だか知らないけど惚れてしまった弱み」「ダメな相手ほどかわいい」ってところだと思います。
「剣の名誉」の主人公にしてアレクの姪っ子キャサリンにしても、アレクの本当の慕情による貰い事故で人生航路がめっちゃくちゃになったってところだもんなあ。
しかも、それで自分に迷惑かけられたり、スラップ訴訟で破産しかけたり、文字通りあの世行きになった人に対しても、「私のことを『狂ってる』って承知して、近づいた君らが悪いよ」と事務的な表情で言いそうですからね。
そんなわけで、古本屋やAmazonなどでこの本を見かけたら、D&Dユーザーなら買って損はないでしょうね。
なお、D&Dユーザーとしての刺激を受ける本としては、実家の本棚からマンガ版ファイナルファンタジーを回収いたしました。
古いFFにはD&Dの影響が強いとはしばしば指摘されますが、第1作のコミカライズである本書をいま読むと、それがよくわかります。
呪文スロット制に、パーティには本作ではなぜか剣使いでしたがモンクがいて、中ボスにはリッチだけではなくあの悪の竜女王ティアマットがいて、しかもドラゴンボーンみたいなサイズ感で片手にバルカン、片手にミサイルポッドを抱えた竜王バハムートと直接対決してました。
この本は今でも本棚にあるはずだと確信してましたが、実際にあって良かったです。もう今となっては、老舗の古本屋か古本市でよほど運が良くなければ見つからないでしょうし。
この三連休は芸術の秋だけでなく読書の秋を楽しめ、実に充実したリフレッシュ休暇となりました。
まあ、気温の方はまだまだ夏真っ盛り、残暑という表現すら生ぬるいくらいですが。