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『給食アンサンブル2』収録作品紹介⑥

『給食アンサンブル』の最終話を飾るメニューは、給食には欠かすことのできない牛乳です。
給食の牛乳が苦手な方、苦手だった方、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。この物語の主役の千秋も、牛乳が嫌いでずっと飲んでいません。そして彼女の片想いの相手もまた、牛乳が苦手だったのですが…。

四月のあのとき、勇気を振りしぼって彼に話しかけられた自分に、わたしは心の中で拍手を送っていた。
その勇気を後悔することになるなんて、四月のわたしは想像もしていなかった。

「牛乳」より

千秋は中1のときから、クラスメイトの男子に片思いをしていました。2年生でも彼とおなじクラスになれて喜んでいましたが、3学期の終わりが近づいても、気弱な千秋は彼との距離を縮められずにいました。
千秋が思いきって彼に告白したりすることができないのは、彼がべつの女子を好きなことがわかっているからです。相手は千秋も尊敬する吹奏楽部の先輩。平凡な千秋ではとてもかなわない、素敵な先輩です。
千秋がそのことに気づいたのは、彼がそれまで飲んでいなかった牛乳を飲みはじめたのがきっかけでした。千秋は彼が再び牛乳を飲まなくなる日をずっと待ち続けていましたが…。

前作『給食アンサンブル』は雑誌『飛ぶ教室』に連載した作品をまとめたものですが、『給食アンサンブル2』は書きおろしです。
連載ではすべての読者さんが前の号の物語を読んでいるとはかぎらないので、前の話とあまり結びつきが強い物語は書くことができませんでした。今回の『2』に収録されている朋華と楓乃の物語も、高城と三熊の物語も、そしてこの千秋の1年越しの恋の物語も、連載形式だったら書くのが難しかったでしょう。
書きおろしだからこそできる物語の味もたのしんでいただけたらと思っています。

といった具合に6編の紹介をしてまいりましたが、興味を惹かれるメニューはありましたでしょうか。前作同様、たくさんの読者の皆様に、この新たな給食の物語を読んでいただけることを祈っています。

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