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『給食アンサンブル2』収録作品紹介④

『給食アンサンブル』第4話のメニューはクリームシチューです。やさしくあたたかな味の定番メニューですが、物語の主役の高城はその味の印象とは正反対にとげとげしています。
「七夕ゼリー」の美貴も結構とげとげしていましたが、あのときの彼女よりさらにとげとげです。『給食アンサンブル』の物語の主役としてはめずらしいタイプかもしれません。

どうしてこうなるんだ。
どうしてあいつらはわからないんだ。
おれは吹奏楽部のためを思って懸命に努力してるっていうのに。

「クリームシチュー」より

真面目で堅物の高城は、3年生の引退後、吹奏楽部の部長になりました。
小学校時代に聴いた吹奏楽のコンサートで感動したのをきっかけに、自分も仲間たちとあんな演奏がしたいと思うようになった高城。しかし彼が所属する吹奏楽部は、優れた演奏をすることより、たのしいふんいきを重視していて練習も生ぬるいため、コンサートや演奏会でも満足な演奏をすることができず、高城はずっと歯がゆい思いを抱えていました。
 
部長となった高城は練習量の大幅な増加など吹奏楽部の改革を行おうとしますが、副部長の三熊をはじめ、現在のたのしい部活を守りたい部員たちにはばまれ、思うように部を変えることができません。
それでも頑なに改革を進めようとする高城は、徐々に部内で孤立していきます。高城に反発する部員がボイコットを始め、ついには部長の信任投票をしようという話にまでなってしまい…。
 
『給食アンサンブル』という題名は、給食をきっかけに幾人もの少年少女の心が響きあい、物語を奏でていくことからつけました。
もともとは少人数での合奏や合唱を意味する音楽用語なのですが、そのわりに前作では音楽の絡んだエピソードがなかったので、『2』では吹奏楽部員が主役の物語も書きたいな、と思っていました。
そんなわけで第4話の主役の高城と第5話の三熊、第6話の千秋はみんな吹奏楽部のメンバーです。高城の担当楽器はトランペット、三熊はクラリネット、千秋は打楽器パートのリーダーで、作中では主にグロッケンシュピール(鉄琴の一種)を弾いています。
給食といっしょに、彼らが奏でる楽器の音色もおたのしみください。

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