見出し画像

『給食アンサンブル2』収録作品紹介③

前回のハヤシライスに続き、題名になっている料理をまたつくってみました。
 
第3話のメニューはミートボール。そういえばミートボールってつくったことないかも、とつくりはじめてから気づきましたが、そんなに難しい料理じゃないでしょ、とあまく見ていました。
ところは鍋のサイズを間違えて、ミートボールが鍋のなかにぎゅうぎゅう詰めになり、その状態で無理に転がしているうちに、形が崩れてしまいました。レシピになかった玉ねぎのみじんぎりを勝手に追加したのもまずかったのかも…。
 
形が比較的いいものを選んで、写真の補正も頑張ってみたのですが、どうにも見目の残念なミートボールになってしまいました。
しかしまあ、物語のなかの彼女も、こんなふうに初挑戦のミートボールに四苦八苦して、うまくできたものを懸命に選んでお弁当箱に詰めていたのでしょうから、そう考えるとこれはこれで原作再現度が高いといえるかな?
 
ということで『給食アンサンブル2』の第3話は、忘れられない特別な味のミートボールの物語です。

そのとき仲がいい友達とわいわいやって、
いまがそこそこたのしければそれで満足だったはずなのに、
どうしてこんなことが気になってしまうんだろう。
ほんとうにめんどくさい。

「ミートボール」より

物語の主役の楓乃(カノ)は、派手めでおしゃれで社交的なグループに属しています。そうしたグループにありがちな仲間内のいさかいに小学校時代からたびたびうんざりしてきた楓乃でしたが、中2になってからできた新たなグループはいまのところ平和な関係が続いていて、楓乃はその快適な友達関係と学校生活に満足していました。
 
ところがあるできごとをきっかけに、楓乃は自分の冷めた性格を気にするようになります。
楓乃には夢中になれる趣味も特になく、だれかを本気で好きになったこともありません。グループの仲間に彼氏ができたり、趣味に夢中な姿を見るなかで、楓乃は漠然としたあせりやつまらなさを感じています。
果たして楓乃は熱くなれるなにかを見つけることができるのでしょうか。
 
児童書でいわゆるスクールカースト上位の女子グループが登場した場合、主人公と対立する悪役的な存在であったり、グループ内の苛烈な人間関係ばかりが強調されたりと、彼女たちのありかたが肯定的に描かれることはほとんどないように感じます。
そういった物語を読むたびに、「いくらなんでも描きかたが画一的すぎるんじゃないの?」「なかには良好な友達関係を保って、キラキラした青春を送っているグループもあるんじゃないの?」と首を傾げていました。
 
楓乃とミートボールの物語は、そうした思いを形にしたものです。こんな平和なグループがあるわけないでしょ、といわれてしまえばそれまでですが、共感してくれる10代の読者もきっといるんじゃないかな、と思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?