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リベラジ「技術とは何か?」

最近のリベラジでは技術とは何か?についての話題提供を行っております。
まずは、技術とは何をイメージしますか?という問いに皆さんでブレストしてみました。

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その後技術の概念整理をしました。技術という言葉の元は古代ギリシャ語テクネー( τεχνη )とラテン語に翻訳されたアルス(ars)に当たります。アルスはその後英語でartになり日本語では芸術のイメージが強いのですが、元々は技術の意味です。そこでリベラジではリベラルアーツのartを「知を織り成す」という技術として捉えています。

その後ドイツ語では
Technik(テクニーク)とTechinologie(テクノロジー)という言葉に分かれます。
両者の違いは
テクニークは料理スキルや職人芸など個々人が持っている技術のことを指します。つまりknow how? 技能とも呼べるでしょう。
対してテクノロジーはロボットや飛行機を作る技術のような学問的な知を指す。それはつもりknow what?ともいえます。
テクニークからテクノロジーになるにつれ、より言語化され(本になったり数式になったり)段々、個々人の人間の手からどんどん離れていくと言えます。そんな特徴を踏まえながら今回は運営の2名より話題提供を行い参加者の皆さんと対話をしたのでその内容をお伝えします。

話題提供①「技術の功罪について考える」

技術というのは今までに人や社会や世界を変えてきたと言えます。例えばこのnoteの記事を書いているのもItの技術のおかげです。そこで今回は技術と社会の関係を捉え、その功罪について対話してみましょう。
Q 水道を引いて良かったであろうか?
⼩さな村に上⽔道が引かれた。すると村の井⼾から⽔を運んだり洗濯場にいく必要がなくなった。
村の共同の井⼾と洗濯場は、かつては活発な社交の場であったが、今やほと んど⼈が集まらなくなってしまった。
⼦どもたちは水を運ぶためのロバとの付き合い⽅をしだいに忘 れていった。
人々は村の⽣活についてあれこれ意見を語ることをやめてしまった。かつては政治的な⼒をもっていたのだが、後になって みると、⽔道を引くということは、お互いの間 で、あるいは動物たちの間で、そして⼟地との間で築いていた強⼒な結びつきの破壊を助けるこ とになった。

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この問いを考えるためのヒントとして二つ話題を出します。
まずは社会と技術がどちらが優位(支配的?)なのかという2つの立場があるります。
・技術決定論
社会の在り方は技術が決定するという立場のことです。例としてグーテンベルクの活版印刷が知識を容易に本にして大衆に広げたこと、日本における鉄砲が戦いの在り方を変えてしまったこと、スマホなどの通信技術などがあると思います。
・社会決定論
技術のあり方は社会が決定するという立場のことです。例として黄金への欲望に駆られて錬金術が発展したことや、戦争によって兵器や関連技術が発展したこと、地球環境の悪化に伴ってクリーンエネルギー技術が発展したことなどがあげられます。

これらの主義は必ずしもどちらかが正しいと
いうものではなく鶏が先か卵が先かのようなどちらが説明しやすいか?というものだと思います。

また別には技術中立説というものがあり、読んで字のごとくですが技術の価値自体には善悪はなく、価値中立であるという考え方になります。
技術を製品や物ととらえた際には重要なのは物の利用目的と利用方法でありそれによって技術の善悪が決まるとする立場のことです。技術は完全なものではなく、大なり小なり必ず欠陥と弊害があり利用者の利用法を重視する考え方ともいえます。例としてアメリカにおける銃の使用法の主張(銃が人を殺すのではなく人が人を殺すのだ)や原子力関連技術(人を殺す原爆or平和利用としての原子力発電)などがあげられます。

こうした整理をしたうえでこの水道導入の例を皆さんで話し合いました。出た論点、意見については以下の通りです

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・技術を世の中に生かす際に、何かしらの不利益も生じてしまっていることを気にする必要があると感じた。
・例えば途上国支援などにおいても、一方的に技術を押し付けるのは良くないことだなと感じました。その先まで考えて、現地の人が持続させられるような技術支援の在り方を考えるべきだなと思います。上水道が引かれたことによって生まれた利点はもちろんあるはずなので、コミュニケーションが失われてしまったという問題を解決するために新たな技術を導入していく必要があるなと考えました。新しいことをしようとすると問題が発生するのは致し方ないことなので、それを解決しようとして問題解決の連鎖が生まれれば必然と状況は良くなっていくのではないでしょうか。また、技術自体には何の責任もないので、それをどう使っていくのか、何に生かすのかというところが人間にのしかかる責任なんだろうなと感じます。
・水を簡単に使えるのは確かに便利。ただそれ以外に良い面は思いつかない
・そもそも上水道が通っただけで、人とのつながりがそう簡単に崩れるものなのか?集会場など他に交流の場があるはず。リモート社会でも同じように
・「もの食う人々」っていう本を最近読んだ。魚を丸ごと食べるという文化が無くなって、頭は食べないという文化が新たに入ってきた。これによって、その文化に馴染めない人が出てきた、という話を思い出した。
・慣れって怖い。水道もそうだが、電気などのライフラインが一回通って、災害時などに供給がストップしたときは、どう対処していいのかわからなくなる


話題提供②「クローン人間について」

生命は普通、両親から何万種もの遺伝子を引き継いで生まれてきます。父と母、どちらの遺伝子を引き継ぐかは偶然によって決まるため、例えば同じ両親から生まれた子が二人いる場合、その二人は異なる遺伝子を持っていることになります(一卵性双生児を除く)。

一方、クローン技術を用いた場合、生まれてくる子は親のコピーであり、子は親とほとんど同じ遺伝子を持っています。ただし、環境などの違いにより、まったく同じように成長するわけではない、という点に注意が必要です。

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現在のクローン技術は大きく二つあります。

一つは受精卵を用いた方法で、1986年にイギリスで初めてクローン羊の誕生が確認されました。しかし、この方法は「生命を殺しているのではないか」という解釈による生命倫理の問題や、受精卵の数に限りがあるので大量に作製できないなど、いくつかの課題が残されていました。

これに代わる方法として近年考案されたのが、体細胞を用いた方法です。体細胞は、皮膚や筋肉などから取れる細胞であるため、先ほどの生命倫理の問題や大量作製にかかわる課題が解決されることとなりました。1996年には、この方法によってイギリスでクローン羊「ドリー」の誕生が確認され、また「ドリー」が妊娠機能を保有し、1998年にはその子「ボニー」の出産が確認されました。さらに2018年には、中国で初めてクローン猿「チョンチョン」「フアフア」の誕生が確認され、クローン技術がより高度なものになっていることが分かりました。そして近い将来、人間のクローン技術が確立される日が来ることはほぼ間違いないと言えます。

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クローン技術の利用には、主に食料の安定供給の実現や医療品の製造、移植用臓器の作製、希少動物の保護、実験用動物の革新などがあります。また、クローン技術を人間に適用した場合、不妊夫婦の子供の出産や科学的研究への活用、移植用臓器の作成、亡くなった人の複製などが考えられています。

しかし、現代の社会において、クローン人間の作製は世界中で厳しく禁止されています。その理由は大きく倫理面と安全面の二つに分かれます。倫理面については、人間の意図的な生産に繋がる(人を道具として扱っている)という解釈や、生まれてきた人が人種的差別を受ける可能性、「誰が親になるのか?」という家族秩序の問題、遺伝子操作による人間の品種改良に繋がるという解釈があります。安全面については、生まれてくる人の健康を技術的にまだ保証できないことや、さらにその人が妊娠・出産した場合、子孫に与える影響がまだ分からない点が多いことなどが挙げられます。

また、クローン人間をテーマに扱った作品も多く存在し、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロにより書かれた「わたしを離さないで」はその代表的な事例です。本作品では、登場人物の多くがクローン人間であり、彼らの心の葛藤を通してクローン人間の作製に警鐘を鳴らしているとも言えます。

しかし、こうした世界中から持ち上がる問題意識に反して、近年、生命倫理を大きく侵すような事件が発生しました。2018年、中国の南方科技大学の准教授が遺伝子情報を書き換えた双子「ルル」と「ナナ」の誕生を主張しました。当然、この発表は世界中から多くの非難を浴び、結果として博士は行方不明、双子の安否も確認されていないという状況が現在も続いています。

このように、クローン人間に関しても、たとえその作製を禁止するような法律や非難があったとしても、抜け駆けする人は出てくるということが言えるでしょう。つまり、技術さえ確立されてしまえば、クローン人間は現実にあり得ることと言えるのです。

こうした背景を踏まえて、今回は皆さんに「もし今、自分がクローン人間だったと知らされたら…」という形で問いを提示させていただきました。

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以下、これに対する参加者の方々からの反応もご覧ください!

・考えただけでゾッとする
・どんな目的で自分が作られたのか、どんな環境で育ったのかが大事
・「自尊心」や「自己肯定感」がキーワードになった。(育ての)両親のために生まれてきたと考えたら、それほど嫌悪感を抱かないかも
・自分がどんなルーツで生まれてきたのか、本当の親が誰なのか、はやはり知りたくなると思う
・全て遺伝子で決まるのはとても酷なので、むしろデザイナーベイビーに賛成。だからクローン人間もよいのでは?
・自分とそっくりな人がいたら単純に驚き。でも双子ってそういう感覚なのかな
・自分と同じ遺伝子でもまったく別の育ち方をしたなら、どんな人になっているのか会ってみたい

【参考文献】


全体の感想

今回の参加者の感想です。

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・リベラルアーツの学びとはこういうものなんだなぁと思いました。楽しかったですし、この学びの重要性も感じました!
・面白かった、参加してよかった
・初めてリベラジの活動に参加させていただきましたが、普段考えないようなことがテーマとなっていることもあり、楽しめました。
・楽しかったです。
・普段考えることのないテーマについて話し合うことによって、刺激を得ることができた。
・身近だった!!
・はじめに想像していたよりも面白い対話になりました。

ぜひ次回もご参加くださいね✨

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