見出し画像

【人見知りの公式】妄想≠現実 (#2)

1年前から歯の矯正を行っている。

そのため、矯正の器具である針金を交換してもらうために月に一度必ず通院しなければならない。これが忘れっぽい僕にとってなかなかの難敵なのである。


8月の中旬、ふとしばらく歯医者に行っていないことを思い出した。前に行った日付を確認すると、もう三ヶ月も経っていた。これは良くない。慌てて診察の予約を取るためのの電話をかけた。3日後の夕方が空いていた。

当日、僕は時間通りに歯医者を訪れた。白を基調とした清潔感のある受付で軽い手続きをすると、すぐに診察室へ通された。

まず若い歯科衛生士の女性がやってきて僕の口の中にに手を入れた。そして少しもたつきながらも古い針金を外すと、ウィンウィンとモーター音が鳴る機械で僕の歯を磨き始めた。

その作業が一通り終わると、奥の方から50代半ばの少しばかり白髪の混じった先生がやってきて「しばらく時間空いたねぇ。大丈夫だった?」気さくに話しかけてきた。

僕が「いや〜、大学のテストとかが色々あって気付いたら時間空いちゃったんすよねぇ。」と軽いノリで返すと、先生は「ちゃんと来ないと早く終わらないよ〜。」と笑顔を交えながら僕に忠告した。

そして大学の現状について軽く雑談した後、治療が始まった。

新しい針金を手際良く付けてもらい、仕上げにフッ素を塗ってもらった。

いつも通り治療は流れるように終わった。

フッ素を塗るのに使用した歯ブラシを受け取ると、僕は先生に「ありがとうございました!来週はちゃんと来ます!」とにこやかに伝え、歯医者を後にした。


ここまでが僕の頭の中で行われた妄想である。

え?では実際はどうなのかって?

現実はあまりに真逆をひた走っていた。


8月の中旬、ふとしばらく歯医者に行っていないことを思い出した。前に行った日付を確認すると、もう三ヶ月も経っていた。これは良くない。そう思いながらも三ヶ月もすっぽかした事に気まずさを感じ、なんとなく電話を後回しにした。

一週間後、ようやく重い腰を上げて予約の電話をかける。

まず明後日の予約はできるか確認すると、明後日は休診日だと言われた。ちゃんと確認せずに電話をかける自分の間抜けぶりが相手にバレた気がして恥ずかしかった。少しうろたえながらも3日後の予約状況を確認すると夕方なら空いてると言われたので、その時間に予約を入れた。

当日、僕は時間通りに歯医者を訪れた。白を基調とした清潔感のある受付で軽い手続きをすると、すぐに診察室へ通された。

まず若い歯科衛生士の女性がやってきて僕の口の中に手を入れた。そして少しもたつきながらも古い針金を外すと、ウィンウィンとモーター音が鳴る機械で僕の歯を磨き始めた。

その作業が一通り終わると、奥の方から50代半ばの少しばかり白髪の混じった先生がやってきて「しばらく時間空いたねぇ。大丈夫だった?」気さくに話しかけてきた。

返事をしようとしたが、胆が絡んで喋り出しがつっかえてしまい「、、、っ大丈夫です」と変な感じになってしまった。こうなると一気に喋る気が失せてしまう。

その後無言のまま治療は始まった。

いつも通り流れるように治療が終わると僕は静かに会釈をし、早歩きで診察室を後にした。


はぁ、いつか頭と現実がリンクする日は来るのだろうか。少し涼しくなった夕方の街を歩きながら考えた。

すると、ふと大学の課題をまだ提出していないことを思い出した。

期日を見ると3日も過ぎている。

慌てて教授に連絡をする妄想が僕の頭の中で始まった。

閲覧ありがとうございましたm(_ _)m サポートはエッセイの種を生み出すための書籍代に使わせて頂きます!