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東出を観る4『ヒーローマニア 生活』

1.でかいという事実

 東出昌大を考える際に避けて通れないのが「でかいんじゃないのか」問題だ。というか、はっきりでかい。これだけでかいとさすがに演じる役も限られてくるだろうな~。

 それは東出素人の考えだ。

 たとえば『寝ても覚めても』ではそのでかさが超然とした存在感につながっていたし、今回紹介する主演作『ヒーローマニア 生活』も、機動力重視のコンパクトなアクションコメディの中に東出を収めるという「驚異の収納術を楽しむ」的な味わいがある。つまり、でかさは東出の魅力だ。この作品に南海キャンディーズのしずちゃんが出ているのも、東出に対して「あのしずちゃんよりでかい」という箔付けを与えるためだ。つまり、「そういえば、うっすら違和感あったけど、そうか、でかいのか」という、見る側の漠然とした感覚をはっきり画にするたくらみである。この作品で自分のことを「どこにでもいる30歳の冴えないコンビニ店員」と語る東出だが、どこにでもいるにしてはちょっとでかい。無視できないほどにシンプルに。で、つまるところでかいからなんなんだ?

2.でかいは魅力

 しずちゃんのキャスティングからもあきらかなように、この作品の作り手は(その他の多くの東出映画の作り手と同様)東出のでかさに意識的だ。東出はでかい。だから通りの看板に頭を打ちつけるのだし、部屋の電灯にも頭を打ちつけるだろう。さらにはぶちのめした悪人たちを物理的に「吊るす」行為にも、でかさ=高さへの目配せがあるとかないとかそれはもはやこじつけだとか、意見は激しく飛び交う。わたしの中で。

 決して超大作ではないが、妙に出演者たちがノリノリで、しかもそのテンションがうわすべりせずに作品化されているという不思議な印象の作品。まさしく収納の達人の手際。どことなくエドガー・ライトみたいな。いまさらですが、豊島圭介さん、『怪談新耳袋』シリーズのころから好きでした!

 改めて、小松菜奈が168、窪田正孝が175、しずちゃんが182という中で、東出の189は文字通り突出してでかい。ただしこれは、でかいから良いとか悪いとかいう話ではない。まず、おもしろい俳優である東出がいる。その彼「が、でかい」のがおもしろいのだ。東出のすべての要素は東出の魅力である。なんなら小さくてもいいと思う。ひとまずスーパーの刺身をトレイをしょうゆ皿にしておいしそうに食べる芝居を見てほしい。185センチ以上でその芝居をしたのは東出が初めてである。いや、より正しく言うなら「その芝居をした東出は、東出が初めて」である。

ヒーローマニア 生活(2016年、豊島圭介)

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