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新橋のうまいスープを出す屋さん

シリーズ・現代川柳と短文NEO/037

 お花屋さんやお寿司屋さんにあこがれてこの業界に入った。しかし、日々の雑務に忙殺されるうち、自分がなぜここにいるかわからなくなってしまった。生きながらに死んでいたのだ。あのころの気持ちをなんとか取り戻し始めたのは、ある年の正月に引いたおみくじをきっかけに拠点を東京の新橋に移してからだった。「屋さん」を夢見たあのころの感覚がふたたびふつふつと湯気を立てはじめた。湯気。それがスープの湯気だと気づいた日のことを、わたしはいまも忘れません。

【本日の現代川柳】
新橋のうまいスープを出す屋さん
/今田健太郎

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