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心が軽くなる魔法のことば
何もできない時の呪文「何もしない」
*
数年前に「うつ病」になった。
社会人たるもの仕事は完璧にこなすべし。
その想いが強く経験豊富な大人に揉まれ、
僕はどんどんと調子を崩していった。
僕は社会人になる前は夢追い人だった。
周りからも「メガッパに社会人は無理」と、
散々に言われ意地になっていたのかも。
実際、僕は社会人に向いていない。
理不尽を耐えたり、ヘラヘラ笑ったり、
尊敬できない先輩に媚びへつらったり。
僕はそのどれもが苦しい。
目に見えないはずのHPなのに、
突然現れて減少する様子が窺える。
「何でもします」
ズズズズ。
「今日頑張れば大丈夫です」
ズズズズ。
「頑張ります」
ズズズズ。
何かを引きずる音がする。
帰宅は早くても24時を回り、
皆よりも2時間早い8時に出社。
頑張ります。
がんばります。
ガンバリマス。
*
妻がクリニックへ連れて行く直前の僕は、
「死なない程度の大きな事故」を狙って、
何度も何度も交通違反を犯した。
(今思えば迷惑極まりない)
それ程までに会社へ行きたくなかった。
だけれど幸運にも事故にはならず、
今は大いに良かったと思っている。
身の回りのことも億劫になった。
部屋の片付け、食事の摂取、
日々の入浴、友人との約束。
自分でも言うのも変だけど、
綺麗好きだと思うし、
遊ぶ時間も好きだった。
あの時の一人暮らしの部屋。
詳細は思い出せないけれど、
きっとあちこちが汚かっただろうな。
仮にうつ病患者のルームツアーがあるとして、
その部屋が片付いているのであれば、
それはきっとうつ病ではないと思う。
人に見せれるモノでは無いし、
そもそもビデオなんて回せない。
そして、月日は流れ僕は妻と同棲した。
*
同棲して間もなく、
仕事が猛烈に忙しくなり、
妻同伴のもとクリニックへ通院。
その当時の妻が言った何気ない一言。
「何もできない時は何もしない」
完璧を求める僕は目から鱗だった。
いつだって周りの目を気にしては、
「頑張らなきゃ」の鎖に縛られ、
吐き気をもよおしていた僕。
そんな当たり前に気が付かなかった。
そして、何より安心した。
依然として感情の波はやってくる。
数年前と比較すれば、
少しずつ良くなってきているが、
頑張れない時が3割弱はある。
だけども、僕には心の支えがある。
少しだけ前が向けそうだ。
*
妻は命の恩人。
大袈裟ではなく、本音で言える。
まだまだ日々頑張らないための訓練だ。
ついつい焦って動いちゃうし、
ジタバタ足掻こうとするし、
人と同じに憧れてしまう。
そんな時は妻の一言を胸に、
少しだけピタッと止まって、
大きな深呼吸をして、
出来るだけ前を向く。
メガッパ
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