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僕が病気になるまで

一瞬の後悔は一生残る。

✳︎

僕が病気になった話。

とある年のこと。
新規案件が3つほど重なった。

3つ重なる程度はどうってことないけれど、
とある案件の広告代理店の営業の人が
僕に対する当たりがとても強かった。

その人はこのご時世に反していて、
電話のたびに罵声を浴びせてくる人だった。

「言われた通りにしろ!」
「言われた通りにするな!」
「そもそもそんなこと言ってない!」
「考えてから発言しろ!」
「機械的に話すな!」

罵声電話は30分ほど続く。
とにかく電話が恐くなって、
人との会話もイヤになった。

無駄な電話よりも時間が惜しい。
時間が無い、時間が無い。

営業のスケジュール通りに進めたくても、
デザイナーから「無理」と言われ、
交渉をしても応じてもらえなかった。

その旨を営業に伝えると、また罵声。
板挟みになって、どんどん苦しくなった。
ミスも目立つようになった。
いつもならあり得ない誤字・脱字、
いつもなら見落とさない校正。

明日が不安になって、
とうとう僕は眠れなくなった。

✳︎

ウチの社長にも相談した。
「あの人はメガッパしか無理やから」
「あの人はメガッパに期待してるから」
そう言われ、踏ん張ろうとした。
会社に言っても何も変わらなかったから。
この案件が落ち着くまでのもう少しの辛抱。
自分に言い聞かせた。

深夜2時まで作業をして、
朝の6時に撮影に行き、
撮影の間にも先方に断りを入れ、
空いたスペースで作業をさせてもらったり、
カメラマンさんに撮影の指示をしたり、
頭をフル回転させて動いていた。
すると営業が僕にブチ切れた。
「撮影の現場で作業するな!」
撮影の現場で別の作業をすることは御法度。

だけど、僕は先方に断りを入れていた。
「時間が無いのでお願いします」と。
先方は快く快諾してくれていた。
この営業は僕の事情を知らない。

「すみません」と言いパソコンを閉じた。

その撮影が16時に終わって、
また深夜まで作業をする。

すると24時にその営業から電話が入る。
「別件で明日8時までにやって」と。
明日の8時とは今日の8時。
つまり残りの8時間で作業をする。
しかも企画書とコンセプトの作成だった。
その営業は「よろしく」と僕に言い残し、
電話をプチっと切ってしまった。

他の作業も詰まっていたが、
6時間程度で提案できるレベルの
企画書とコンセプトを作成し、
6時にその営業にメールを送った。

仮眠をしていたら、突然鳴る電話。
その営業からだった。
時間は8時前。
寝起きで電話に出ると、
「なに寝とんねん!メール送ったなら、返事来るまで起きとけ」と突然キレ始めた。
幸い提案物は簡単な修正だったが、
僕が仮眠したことに対する説教が始まる。

眠っていない。
起きれば説教。
会社は何もしてくれない。
むしろ僕の努力不足だと言う。
デザイナーとの板挟み。

僕の心が黒く蝕まれていく。

突然の嘔吐、突然の号泣、不眠、不食。
見かねた妻に言われるがまま、
ついに僕は精神科へ受診することになった。

会社にはもちろん受診を報告していない。
言ったところで何も変わらないし、
寧ろイヤな顔をされそうな気がしたから。

✳︎

相変わらずな日々を過ごしていた時のこと。
その広告代理店の営業部長が、
ウチの会社に詫びを入れてきた。

営業部長が僕と営業の電話を聞いていて、
ここ最近の発言は余りにも理不尽で、
流石に裁判で訴えられると思ったらしい。

営業部長より年上の営業だったため、
営業部長も強く言えず成す術が無かったと。

僕にとっては「知らんがな」だけど。
しかも、遅い。
もう心は以前の僕では無い。

ウチの社長・営業部長・僕で話し合い、
僕はその営業から離れることになった。
その時もウチの社長は「大丈夫ですよ」と、
僕ではなく広告代理店を庇っていた。

僕よりも会社の売上の方が大事。
社長だから会社だから仕方ないんだろうけど…

ウワサによればその営業は、
他のデザイン会社でも
同じようなことをしていて、
その営業と関わった全員が会社を辞め、
どのデザイン会社からも
お断りをされているらしい。
(ウワサと言うか仲の良い別のデザイン会社の社長に実際に聞いた)

✳︎

別の営業さんに変わってからは、
相変わらずタイトなスケジュールだが、
そこまで辛くは思えなくなった。

きっとその営業がイヤだったのだ。
またそれを容認したウチの会社もイヤだった。
ウチの会社のデザイナーもキライだ。
(後輩は好きだけど)

病気になって良かったことと言えば、
僕自身は絶対に後輩を守ろうと思った。
後輩の意見を尊重し、高圧的な言動をしない。
僕が受けてきたような不条理を感じさせない。
そう心に誓うようになった。

この営業が僕を病気にした全てでは無い。
ウチの会社の上司も、社長も、体制も、
すべてを僕は一生許さないと思う。

最後に理不尽と戦う人へ

無理だと思ったら辞めるべきです。
自分や人生を壊してまで、
会社に尽くさなくて良い。
体調に違和感を覚えたら逃げましょう。
逃げることは恥ではありません。
寧ろよく戦ったと誇りに思いましょう。
あなたの人生を会社は負担してくれません。
あなたの人生はあなたが築いていきましょう。

メガッパ

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