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妻と僕のPMDD生活4日目

しょせん達成感なんて、
自分が定めた妥協に過ぎない。

✳︎

同棲して間もない頃、
妻の情緒はキングオブ不安定だった。

僕は誰かと一緒に
暮らしたことがなかったから、
「こんなもんなんかなー」と
深く考えなかったし、
一つひとつの行動に気も留めていなかった。

ただ、その中でも焦る出来事はある。

それが家出だ。

(サブタイトル)
〜IEDE〜

✳︎

妻は怒りがピークになった時、
感情をどこにどうやって、
ぶつけて良いのか分からなくなる。

怒りのキッカケは覚えてないけれど、
目玉焼きはソースか醤油かくらいの、
本当に些細なことが発展してだと思う。

そんな怒りのピークの時は決まって、
玄関の扉を勢いよくバーンっと開け、
家をサササと飛び出してしまう。
くのいちか!

僕はいつも後を追いかけるが、
妻は元レディース総長だ。
そうそう捕まえることは出来ない。

マンションの10階に住んでいたので、
僕はエレベーターから下に降りるのだが、
まどろこしくて階段で降る時もある。
もちろん下に降りた段階で、
すでに息切れ状態だ。
マイナス状態から妻を追いかけても、
決して捕らえることはできない筈なのに。

✳︎

今年一の寒波とされた日の夜。
妻は家出をした。
僕は内心「マジかよ!」と思いつつ、
上下スウェット・ビーチサンダルで、
妻を探しに行った。
近くの公園・コンビニ・路地など、
隈なく妻の詮索をするが姿が見えない。
やはり元レディース総長、
身を隠すのはお手のものだ。

そんなクソ寒い中、
僕は妻を探しながら、
「犬のおまわりさん」を口ずさんでいた。
なぜ童謡を口ずさむのか?
皆さんもクソ寒い中、
薄手スウェット・足元ビーチサンダルで、
一時間ほどウロウロしてみて下さい。
感情のすべてを奪われ、
きっと童謡を口ずさんでいる筈です。

「もうえぇわ、充分探した」と、
勝手な達成感に酔いしれ、家へと踵を返す。

すると妻は何事も無かったかのように、
家の中でテレビを観ていた。

「あんたが好きなテレビやってんのに、どこ行ってたん?」とあっけからんな様子で、僕に話しかけてくる。

僕は「外の空気が吸いたくて」と言う。
妻は「こんな寒いのにアホやなー」と言う。

しょせん達成感なんて、
自分が定めた幻想だということが、
妻の家出を通じて分かる。

現に妻は僕の必死の詮索をつゆ知らず、
何事もないようにテレビを観ている。

そして僕も何事もなかったように、
妻の横に座りテレビを観る。

まぁ、そんな日もあって良いか。
貴重な体験もできたし。
と、僕は家出を楽しい方向へ昇華していく。

なぜ、犬のおまわりさん?

メガッパ

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