服と後輩と僕と。
今の強烈な思い出も、
年老いたら全部忘れる。
✳︎
ラフシモンズがブランドを終了する。
高校時代に憧れていたブランド。
当時はお金があれば購入したいと思っていた。
大学生になってアルバイトを始めて、
ようやく手が届くようになった。
初めて購入したのは3万円くらいのTシャツ。
周りからは不評だったけれど、
僕個人としては気分が高揚する、
戦闘服のようなTシャツだった。
10年以上経った今でも、
やっぱり僕の戦闘服だ。
そんな憧れが強いブランドが、
一時代を築き終わろうとしている。
僕はファッションに詳しくない。
服も決して多いとは言えない。
だからどうこう言うつもりはなくて、
ただシンプルに寂しいなと思う。
そして後輩が「デザイナーを辞める」と、
言ったことと少しだけ重ねてしまった。
✳︎
僕はその後輩が好きだ。
恋愛対象の話ではなく、
人として気が合うと言うこと。
バンドマンで、絵描きで、デザイナーで。
性格も優柔不断なのに意志が固くて、
几帳面なのに適当で、全員に可愛がられる。
僕はどう努力しても彼にはなれない。
ミスをしても笑って見逃される人。
そんな彼とラフシモンズを重ねるのは、
失礼に当たるかも知れないけれど、
やはり2人に言えるのは憧れるということ。
周りを気にせずに、自分を出せる人。
自分の道を切り拓ける人。
闇の住人のような見た目のくせに、
僕には眩しくて輝いて見える。
闇の住人のような奴のくせに。
✳︎
それでも後輩は辞めるらしい。
理由は「面倒臭くなった」とのこと。
理由とキッカケはなんだって良かった。
ただ彼にとっての転換期だったのだろう。
人生を長い尺で見た時に、
自分がしたいことを優先しただけ。
彼は何も間違っていない。
勝手に僕が寂しくなっているだけ。
僕のエゴ。
そして、ふと思う。
「今の僕は何がしたいのだろうか」
今の職種はかつて憧れた仕事。
なりたくて勉強して、
なってからも勉強して、
常にアイデアをストックして。
でも、今はどうだろうか。
休みの日は寝ちゃうし、
ダラダラ仕事をしてるし、
企画書を流用することもある。
よく言えば慣れた、悪く言えばこなす。
考え無しにこなすような日常だ。
これは本当になりたかった自分?
まぁ、良いか。
それこそ人生長いし、
誰でもなく僕の人生だもん。
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ラフシモンズと後輩が辞める。
世界的に見たら雲泥の差だ。
ただ僕にとっては、
どちらも同じく寂しい。
ラフシモンズとは縁もゆかりも無い。
ただ青春時代の僕の戦闘服なだけ。
思い出が寂しくさせるだけ。
後輩も同様だ。
一緒に考えた時間が長いだけに、
後輩との思い出が強いだけに、
悲しい感情が作用する。
また時間が経てば忘れる。
良くも悪くも。
どんどんと強い思い出が、
グラデーションで褪せていく。
僕は止まったままの人生で、
新たな後輩が来ることを待つ。
辞める後輩は「お先に失礼します」と、
次のステージへズンズンと歩んだだけ。
まぁ、良いか。
80歳にでもなったら、
どうせ全部忘れてるだろう。
現に小学生の記憶は褪せてきている。
さぁ切り替えて、
妻に怒られることは承知で、
ラフシモンズの服を買おうかな。
2人ともお疲れ様でした。
メガッパ
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