五十嵐大介「はなしっぱなし 新装版 上」読書記録

五十嵐大介先生はわたしの尊敬する漫画家の一人です。その経歴については、すこしWikipediaから引用させていただきます。

「五十嵐 大介(いがらし だいすけ、1969年4月2日 - )は、日本の漫画家。埼玉県熊谷市出身。神奈川県鎌倉市在住。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。
1993年に『月刊アフタヌーン』にてデビュー。高い画力と繊細な描写で自然世界を描く。2004年、『魔女』により文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、2009年、『海獣の子供』により第38回日本漫画家協会賞優秀賞、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。」

今はアフタヌーンに「デザインズ」というすごい漫画を掲載していらっしゃいます。

「はなしっぱなし」は五十嵐先生のデビュー作、「お囃子が聞こえる日」を含む短編で構成されています。
 多分、漫画の雑誌掲載順で編集されているのだと思いますが、次第に今の五十嵐先生の絵柄に変わっていくのがわかって面白いです。最初は、すこし不思議な絵柄だったのが、確かなデッサン力に支えられた登場人物と、緻密な背景に支えられた芸術作品になっていきます。(現在描かれているデザインズはさらに洗練されていますが、描き込みはだいぶ省略されています)

五十嵐先生は、「絵」の漫画家なのだと思います。
一方で、商業作品として出回っているほとんどの漫画は、キャラクターとストーリーの面白さに支えられています。五十嵐先生と比較されることもある諸星大二郎先生も、ストーリーと登場人物の面白さ、また登場人物の間でなされるコミュニケーションの奇妙さこそが、真骨頂でしょう。
五十嵐先生も最近の作品では、ストーリーやキャラクターに力を入れているように見えます。
しかし、1990年代前半の五十嵐先生は、卓越した画力、特に圧倒的な背景描写の力で、作品を作り上げています。そこでは登場人物は影となり、むしろ背景が立ち上がっているようにも見えます。

五十嵐先生の背景の魅力。それは、人間には認識できない何か超越的な存在を垣間見せてくれることにあるのだと思います。脳味噌が、繋がってはならないとことに繋がってしまったような、そんな感覚。
それは、デザインズまでずっと継承されている、五十嵐先生独自の魅力なのでしょう。

わたしも漫画を描きます。五十嵐先生は大好きな先生ですが、やはりわたしとは漫画の構成の仕方が違う、ということを痛感させられました。わたしは、登場人物の魅力で見せる。その上で、背景も努力する。いわば、記号としての漫画です。

ですが、五十嵐先生の漫画は、記号であることを超えています。まだ、上巻しか読んでいませんが、下巻でどのように画風が変化するのか、楽しみです。
皆様も、是非ご一読ください。魔術的な世界に魅了されることでしょう。

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