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翻訳蒟蒻

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【演説訳】 大ドイツ芸術展開催の辞 (1937)

ナチス総統アドルフ・ヒトラーによる、かつて画家を夢見ていた感性が謳う芸術と人間。 芸術に国境はない、と言われてきた。それは国家や民族のものではなく、ただ「時代」のものだと。そうして印象派が、未来派が、キュビスムが、ダダイスムが、昨日から今日へと移り変わってきた。 そこにあるのは「流行」だ。どこの誰の手による制作なのかは関係ない。ただ時代とともに、服装のように、芸術は明日へと向かっている。 「毎年新しいものを!」 そんな号令のもと、奇怪なもの、空虚なもの、盗作、無知が、

【随筆訳】 大衆、詩人、学者 (1911)

20世紀前半イギリスの辛口ふとっちょ名文家ギルバート・キース・チェスタトンによる、詩心とユーモアあふれる人間観察エッセイ。現代にあふれる「教養俗物」をけちょんけちょんにやっつける。  おおざっぱに言えば、人間は3つのタイプ*にわけられる。  それぞれ重複しがちで、よき大衆が詩人っぽいこともあるし、クソみたいな詩人が学者を気取っている場合もある。およそ分類などあてにならぬものだが、これらは現代の心理学*を補う視点ではあるだろう。その正当性について論じる準備はないものの、少な

【随筆訳】 神秘と創造 (1913)

20世紀イタリアのシュルレアリスト、ジョルジョ・デ・キリコによる、描くこと/書くことへの激励。  ある作品を真に不滅のものとするためには、「人間」から逃れねばならない。論理と常識こそが邪魔なのだ。これらを乗り越えた先には、子供時代の夢と幻の世界がある。  芸術家は、その心の最奥の深淵から出発しなければならない。鳥の声にも葉のかすれ音にも邪魔されないところ、耳にするのは無価値なものだけだ。目を閉じれば幻が鮮やかに現れる。  親しみのある事物、誰かの考え、一般的なもの、よく