【トランジスタ・ラジオ】 #558

今はもう
何処にいってしまったのか
分からない

兄がくれた真っ赤なトランジスタ・ラジオ

夢中にはならなかったけど

雨の日なんかは
外には遊びに行けない

そんな時
ラジオのスイッチを入れる

ただ決まった放送局の
決まった番組を
聞いている訳では無いので
喋っている人が誰なのか
分からない

ラジオで先ず覚えたのは
『ペンネーム』と
『リクエスト』という言葉

『ペンネーム』は皆工夫していて
感心するモノや
笑ってしまうモノや色々

熱心なファンがどの番組にもいる

テレビはそういう事しない

ラジオは『リスナー』と一体感がある

あっ『リスナー』も覚えた

だいたいの下りは

「いつも楽しく拝聴させて頂いております」

とか
自分の聴いている状態を絡めながら

「いつも仕事中車の中で聴かせてもらっています」

だいたい
状況説明系の人の場合は
そこに先ず絡めた話が入る

どの局のどの番組でもだいたいそう

あとビックリしたのは
2人以上でやってる番組だったら
会話しながら進めりゃ良いけど
1人でやっている番組って
凄いなぁって思うよ
よくあれだけ1人なのに
しゃべれるなって



トランジスタ・ラジオは
良いおもちゃだった



それから数十年を経て
ヤスはラジオ番組で話していた


「皆さんこんにちは
日曜の午後のひと時
お付き合いよろしくお願いします

さぁ今日もまずは一曲行ってみましょう
マノ・ネグラ
キング・コング・ファイブ」


僕の番組は
マニアックなモノから
どっぷり歌謡曲まで
何でもこいな番組
チャートは関係ない
流行りも関係ない

僕がかけたい曲と
リスナーからのリクエスト
それだけで持っている
シンプルイズベストさ

地方FM局だけど
結構アッパーな番組だと思うよ



僕がなぜ
ラジオ番組なんてな仕事してるかって

それは
元ミュージシャンだったからなんだ

バンドで1曲だけだったけど
1位にはならなかったけど
まぁまぁヒットした

ボーカルとドラマーはまだ東京だ

ベースとキーボードと僕は地元へ逆戻り

僕は地元の音楽専門学校の非常勤講師と
月1回テレビの情報番組のコメンテーター
それ以外は父ちゃんが経営するスーパーの手伝い

売れなくて残念なのか

売れなくて良かったのか

ボチボチ楽しい

嫁もでき
子供もでき
家も建て
空気もうまい


そういえば
最近ラジオ付けてないなぁ

自分は番組持ってるクセに

そんなコト考えてたら

久しぶりにラジオを聴きたくなった

カーステレオじゃなくて
家の中で聴きたくなった
もちろんラジオで

この家には無いので
実家の倉庫をあさった
ラジオらしきモノは出てこなかった

商店街の古道具屋に行った

あったあった
ラジオがあった
こんなもん誰も買わないだろうな

値段は800円を500円に負けてもらった

あの真っ赤のトランジスタ・ラジオとよく似た
黒いなんて事ない
トランジスタ・ラジオ

店でちゃんと電池入れて鳴るか確認してもらったからバッチリさ



家に帰って
ラジオのスイッチを入れ
チューニングを合わせた

軽快に喋る男性

どこの局のどこの番組だろう

調べてみた

リクエストもできるみたいだ

しかも便利なコトに
ネットからリクエストできる

まぁ僕の番組もそうなんだけどね

リクエストしてみた


数分後

「続いてはペンネーム
イマナオ・キヨシローズさんからの
リクエスト
『トランジスタ・ラジオ』」


古くさい
トランジスタ・ラジオから
キヨシローの声が聞こえる

トランジスタ・ラジオから
トランジスタ・ラジオが聴こえる


屋上じゃ無いけど
ソファに寝転んで聴いた


最高だぜっ！


愛し合ってるかぁーい‼︎




ほな！


トランジスタラジオ
RCサクセション