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#192 人材育成のスイッチは研修テキストに落としにくい 24/6/5

みなさん、こんにちは。
今日は、人材育成の方法論について考えます。

人材育成、従業員教育と聞けば、まず頭に浮かぶのは研修です。わたしの所属する会社でも、ひとたび教育、育成のワードが出ると、まず真っ先に選択肢にあがるのは研修です。

わたし個人は、あまり研修ソリューションが好みではありません。選択肢として用いる場合は、相当に目的=得たい効果と、実施内容までをパートナー企業や講師と密に設計します。

特に、人材観の思想や歴史的経緯にまで理解をしてもらい、それに共感を持ってもらえるか、を重要視しています。つまり、ロジスティクスとサブスタンシャルをかなり細かく設計することですね。

明日から使える、実用的なTHEスキルであれば、研修転移がしやすいのでそこまで煮詰めなくとも活用します。
たとえばローコード・ノーコードのプログラミングやマクロ、Excel関数、提案書などドキュメントの書き方、労務管理知識、財務三表の見方、営業ロープレなどです。

一方で、表面上の形式的な知識をインストールする、××シンキング、コーチング、〇〇力、ダイバーシティ推進、越境学習、マインドフルネス、リーダーシップ・マネジメントとは?などの類は歩留まりが悪く、積極的には活用しません。なぜ歩留まりが悪いかといえば、現実、現場の仕事で日常的に使わないからです。

もちろん、デリバリーの仕方次第で有用な研修はあると想像します。外資やコンサル企業が海外に派遣して受講させる、有識者による研修であればまったく話は異なります。しかし、そのレベルの研修は、わたしども始め、一般的な多くの企業には採用しづらいものと考えます。

後者の知識インストールに留まる研修はどうすれば良いか、考えてみます。知識と言っても、仕事で使えれば有効な武器になるものが多いことは違いありません。

さて、歩留まりが悪いもう一つの、根本的な理由は、研修テキストに落とし込むことが難しいから、と考えます。

たとえば、ロジカルシンキングです。結論を出すために使う目的や、体系的にどのような考え方をするのか、思考ツールとしてどんなワークを使うのか、これらについては研修や書籍を通して、文字情報として頭では理解できます。

結論と根拠、その例示を結び付けるために、MECEになっているか、ツリーに分解する、WHY ?とSo what ?で具体と抽象を往還する、根拠となる事実は事実と解釈が混じっていないか分ける、言葉では概念を理解できます。ですが、使えない、使わない人が続出します。

一通りの知識は研修と研修テキストにして展開できます。しかし、研修を受けた従業員が日常に使えるように実装、運用する、そのための使いこなし支援は圧倒的に実現ハードルが上がってしまいます。

それは、研修のテキストには起こしにくいからです。

たとえば、何かの問題解決をするための情報整理をするためにロジックツリーを用いようとします。
そこにどんな情報を、どんな解像度で、プロットするのか。
何階層に分解してそれぞれのレイヤーはどの粒度で揃えるのか。
それらはMECEになっているのか、レイヤーの前後でどちらが前後の因果か、どちらも成立してしまうがどうすれば良いのか。

このように現実に実装、運用しようと思うと、判断と選択を何度も求められます。すると、ほとんどの人はロジカルシンキングは難しいと離脱してしまいます。

そして、表層的な現象を「問題」と定義して短兵急に結論の解決策を思考してしまいます。もっと悪い場合は、結論の解決策ありきで問題を定義してしまうこともあり得ます。ヒューリスティックを用いて片付けてしまおうと、インセンティブが働いてしまうからです。

この研修テキストには書き起こせない、使いこなし支援こそが人材育成のスイッチと考えます。使いこなす=実装と運用ができる、ここが研修に落とし込めることが理想です。

しかし、繰り返しですが、テキストにはできないことが多いです。そうすると、背中を見て学べ、と聞こえます。その意図は正統的周辺参加をして学ぶ、の意味で少しだけあります。ですが本筋は、リアルに問題解決をする際に、ロジカルシンキングを用いてインプリメントしてあげることです。

そうであるから、表面上の形式的な知識や「〇〇とは?」研修をするのであれば、後工程のインプリメントする協働ワークまでを設計することが人事担当の最低限の仕事です。

概念的には、研修転移の設計に近いと考えます。研修テキストには起こせないことを、日常の仕事で転移するまでを作ることが人材育成の捉え方と考えます。

さて、みなさんは、研修を受けた後、どのような課題に遭遇していらっしゃいますか。
それでは、また。

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