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#72 人事は、シンプルな統一性と複雑な多様性を共存させる 24/2/6

みなさん、こんにちは。
人事は運用が9割、と№50で投稿しました。

このコンセプトを成り立たせるためにはどんなことができるのかを考えています。

その成立要件をこう考えます。
人事基幹制度(等級、評価、報酬)はシンプルにする。
制度の運用は、個別最適の複雑性も受容する。

まず、基幹制度のシンプルさです。
できる限り、一国一制度の選択をわたしは勧めます。
なぜなら、運用コストが高いからです。
運用コストとは、制度のチューニングに伴うメンテナンス、評価者の制度把握量の閾値、人事担当者の理解、MBOや給与データもそれぞれに合わせたデータ化などです。
昨今、グローバル企業では、等級要件、評価基準、報酬バンドを全世界共通にする人事が多いのもこれが1つの理由と考えます。

次に制度の運用です。
運用とは、解釈に「余白」を持たせておくことです。
人事部門の体制やケイパビリティにもよりますが、事業戦略やマーケット需給、競争環境と、従業員ニーズ・課題の双方の観点から、複雑性やある種バラバラも受容することがベターと考えます。
なぜなら、変化の速い環境に柔軟に対応するためです。

たとえば、M&Aによって異なる数社をできるだけ円滑にスティッキネスに融合しようとするケースです。
ボトルネックになりやすい論点の1つは、人事ごとです。とりわけ評価と報酬です。歴史や思想・哲学の異なる会社と従業員が一緒になるわけですから、そのインターフェースは人事制度です。
ですから、制度は統一的にしたとしても、実際の運用は、買収された側の感情に配慮を示す意味でも、地ならし期間を経ることがベターです。
それが結果的に全体善をもたらす状態に速く近づくと考えます。
これは筆者の人事領域のPMI経験からもかなり高い確率で言うことができます。ただし、生産性を最優先する企業では異なるでしょう。

また、新しい需要を創るサービス、たとえば最近で言えばSaaS型プロダクトは、事業価値、人材価値の市場やその相場観が形成されていません。
ですから、既存の事業を前提とした人事制度ではフィットしない部分が表れます。それはその事業に携わる責任者はじめ、ミドルマネージャーから、健全な不満として必ずと言ってよいほど挙がってきます。
その声に対応するためにも、運用に余白を持っておくと柔軟に対処可能です。なお人材価値は職種・職域に分解すれば、ほとんどは既存職種に該当しますが、そのサービスドメインに携わる営業職、などで変わります。

では、運用に余白とはたとえばどんなことなのか、わたしなりの経験から考えます。

たとえば、等級要件と給与水準にギャップがある場合です。年収600万円帯の等級に格付けされている従業員がいます。
しかしながら、当人の職務や役割遂行レベルは、その要件に当てはめると、ベン図で言えば3〜4割程度の重なり具合だったとします。
一方、その従業員の所属する事業は、新規事業でマーケットでも支持を集めているサービスでした。転職市場では、年収条件もインフレ気味の職種です。
このようなケースにおいて、解釈の余地を人事部門や事業に委ね、制度運用を判断することを、わたしは積極的に認めていくことが良いと考えています。懐深く、受け、のできる制度運用は、事業部門や従業員にとって良いだけでなく、人事部門のリーダーシップ開発にも寄与します。そして何より、新規サービスの成長を阻害する要因を1つでも解消、緩和することに貢献します。
だからと言って、何でもかんでも、許容・受容すれば良いわけではありません。
要するに程度問題、バランスと考えます。

みなさんの人事制度運用は、どのように硬軟を織り交ぜていらっしゃいますか。
それでは、また。

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