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君の隣11撮影3日目

朝から順調に進んで最後のシーンの撮影になった。
何でもないキッチンで会話をしながら夕飯を作るシーンだ。
撮影の前の空き時間にマネージャーの春翔さんからとんでもない話を聞かされた。
このドラマが始まってからすごく人気な事。
そして、何故か僕だけが他のドラマのオファーがきたという事。
「どういう事?」
「今回の脚本家が水樹を気に入ったみたいなんだ。他の人との画も見てみたいって言い出して。監督も賛成して決まったらしい。」
「なんで僕なんだよ。」
「なんとか頑張ってくれないかな。」
うるうるした目でお願いされる。
この目に弱いんだよな、僕。

「もうドラマはやめませんか?今回も色々あったし。俺は水樹を休ませてあげたい。」
静かに聴いていた彰人くんが突然話始めた。
「それはわかっているんだけれど…」
明らかに困っている。
「春翔さん、いいですよ、僕頑張ります。」
「水樹ありがとう。助かるよ。」
「水樹…」
彰人くんの悲しそうな顔に少し心が痛んだが、気づかないふりをした。
「それで、相手は誰ですか?僕の知ってる人?」
それは…と春翔さんが話し始めた時、
「俺だよ。」
扉の方で声がした。
振り返るとそこには流風が立っていた。
「はぁ?冗談だよね。」
「それが冗談じゃないんだよ。」
春翔さんは困った様に答えた。
「絶対許さんっ」
彰人が叫び、
「あははっ、父親かよっ」
と流風が爆笑。
春翔さんと僕はそれを見てため息をついた。
彰人くんが怒っている横をすり抜けて、流風は僕のところにやってきて、耳元で囁いた。
「俺に全て任せて、うまくいくから。お前達焦ったいぞ。」
「え?何の事?」
「何話してんだよ。」
「彰人くんには内緒〜。」
「流風お前〜。」

そんな楽屋での出来事の後、流風が見守る中僕達は最後の撮影に入った。

「春〜。おはよう。」
「紅、おはよう。またはねてるぞ。」
不意に彰人に頭を撫でられた。
あれこんなの台本にあったっけ?
「いい匂い、今日は何?」
「紅の好きなパンケーキ。」
「やったぁ、ありがとう。」
お互い見つめあって微笑んで…そんな平和なシーンだったはず。なのに…
「その笑顔反則。」
突然抱き寄せられキスされた…
頭はプチパニック中。
しばらくして彰人を押し退ける事に成功したものの、
再度、顔が近づきキスされた。
何が起こっている?
僕はどうするのが正解なんだ?
そこでカットが入り、監督から
「君達最高だよ。」
と褒められた。
全然台本と違うのに…
「彰人くん台本と違うじゃん!」
「こっちの方が物語上いいかと思ったんだよ。」
「でもさー、いきなりとかひどいじゃん。」
「結果良かったんだからいいじゃん。」
「まあ、お2人さん、イチャイチャはほどほどに。」
「流風、見てただろー。彰人くん、台本と違うことしたんだよー。」
「俺もするかもよ。」
「それはダメだっ。」
「父親かよっ」
また始まってしまった…
僕は呆れて1人楽屋へ戻った。

言い合いの途中、流風は彰人に近寄り、
「彰人くん、水樹取られるの怖い?」
「は、はぁ?別に。」
「さっきの撮影嫉妬でしょ。俺だと水樹と仲いいから取られる可能性高いしね。水樹優しいし、付き合ってって何度も言ったら折れてくれそうだしなー。」
「お、お前、水樹の事好きなのか?」
「え、好きに決まってるじゃん。うちのメンバーだってみんなそうでしょ、休みの日にそれぞれと出かけてるの知らないの?」
「し、知らなかった…」
「俺じゃなくても誰かは行くかもよ。今回の事でみんなすごく心配したし。いつも一緒にいて守ってやりたいって思ったんじゃないかな。」
「マジか…」

近場にもこんなに敵がいたとは…完全に油断していた。

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