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NOAH〜君の想いの欠片を集めて〜⑦(終)欠片を繋ぎ合わせたら

「ごめん、涼夏、ごめんね。」
「…」
全くこちらを見てくれない…
学校内では俺が振られても涼夏に付き纏っているように見えるのかな…
涼夏を誘って中庭のベンチに腰掛けたものの、何を言っても全く反応無し。

「ほんと、ごめん、何でもするから許して…」
「…」
「そのままでいいから聴いてくれる?俺が涼夏に一目惚れしたのは入学式の後だよ。涙を流している姿を綺麗だと思ったんだ。それからずっと涼夏が気になってて、涼夏が久しぶりにカフェの部屋に来てびっくりしたよ。好きな人の話する涼夏の声を聴くのは辛かったけど、あくまでNOAHとして話聴いてた。好きな人が俺だってわかった時飛び出して逢いに行きたかった。こんな嬉しかったのは初めてだよ。」
乃亜はずっと下を向きながらぽつりぽつりと自分の気持ちを話しはじめた。
「小学校の時は叔父さんに頼まれたから初めは慣れなくて大変だったけど、楽しそうに話す涼夏と話すと、俺も元気になってた。毎日涼夏と話をして、友達ができたみたいだったんだ。高校になって、その子が一目惚れした子だとわかった時は、不思議な気分だったよ。」

「君さ、いい加減諦めたら?」
「え?」「え?」
いつの間に来たのか、後ろに立ってたのは涼夏を誘った部活の先輩だった。
「君振られたんだろ?校内で有名になってるぞ。しつこく追いかけ回してるって。」

そんな有名になってたんだ。
もう俺諦めないとダメなのかな…
乃亜は俯いたまま、先輩に席を譲ろうと腰を上げた僕の服の端を引っ張った。そして真っ赤な顔で、先輩の目を見てはっきりと
「先輩、彼は僕の彼氏です。ちょっと話をしているだけなので大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます。」
と答えた。
隣から涼夏の話が聞こえる。
落ち込んでいた俺は内容が頭に入ってこない…
あれ?先輩が帰って行った?
そしていつの間にか涼夏が俺の手を握っていた。

突然の事に頭が追いつかない。
なんで手を握っているの?
ポカーンと涼夏を見つめていると、
「ぷっ」
涼夏は笑い出した。
あ、久しぶりに見る涼夏の笑顔。
可愛いなぁ…
ぼーっと見惚れていると、不意に肩を叩かれて我に返った。
「見つめ過ぎ。」

「すごく恥ずかしかったんだよ。ずーっと僕の気持ち聴かれてたんだと思ったら消えたくなったよ。別の人にならともかく、好きな人にずっと気持ち言い続けてだなんて恥ずかしくて生きていけない…」
「ほんと、ごめん。」

「ねえ、凉夏、入学式に泣いていた理由聴いていい?」
「僕、両親が外国で仕事してるから、小さい時から乳母の花乃さんと一緒に過ごしてきたんだ。高校の入学式の前日に倒れてしまって…」
苦しそうに話す涼夏。
「入学式は一緒に桜の木の下で写真を撮ろうねって約束していたのに出来なかったから、桜の木の下で1人で写真を撮って花乃さんに送ったんだ。その後桜を見ていただけなんだ。泣いていたと気づいたのはしばらくしてから。本当に悲しい時って勝手に涙が出てくるんだね。」
「ごめん、辛い事思い出させて…」
涼夏の頬に手をあてると涙が流れはじめた。
俺は涼夏を抱きしめた。

「あー、並木くんが小坂くん泣かしたー。」
気がつくと周りにみんなが集まってきていた。

な、何?この悪者扱い…
唖然としていると、
「乃亜を虐めちゃダメ。」
目をうるうるさせながら、腕を広げて庇ってくれる涼夏。ほんと可愛いから隠れてて。

「可愛いー。」
女子からの黄色い声。と笑い声。
どうやら俺の初恋は成功したらしい。

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