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回復期リハ病棟が退院支援において知っておくべき社会資源

特に回復期リハ病棟向けの、退院支援において知っておくべき社会資源をちゃちゃっとまとめてみました。

◎社会資源とは
社会資源とは、社会システムを維持・存続し、発展させるために個人や集団の欲求を充足するのに必要なあらゆる資源のことです。とくに社会福祉資源という場合は「福祉のニーズの充足のために利用・動員される施設・設備、資金・物品、諸制度、技能、知識、人・集団などの有形・無形のハードウェアおよびソフトウェアの総称」とされています。

○社会資源の要素
社会資源の要素は、大きく下記の4つに分類されることを理解しておきましょう。
①人的資源:専門家、ボランティア、自治会など
②物的資源:社会保障における現物給付、日常生活用具給付などの現物給付、福祉用具、情報機器、建物(施設)など
③時間的資源: 休日、余暇時間、休業日、休館日など
④情報的資源:資源マップ、広報紙に掲載された情報、インターネットの情報など

○社会資源の分類
さらに、回復期リハビリテーション(以下、回復期リハ)を提供するうえで考える社会資源について、フォーマルサービスとインフォーマルサービスに分類します。回復期リハで勤務するさんにとっては、こちらのほうがイメージしやすいかもしれません。
フォーマルサービスとしては、介護保険での給付サービス、所得保障サービス(年金、生活保護など)、医療保険サービス、市町村が実施する保健福祉サービス、権利擁護に関するサービス(成年後見制度・権利擁護事業・自己破産など)、住宅サービス(公営住宅など)、地域・各自治体のサービスなどがそれぞれの組織形態で行われています。
インフォーマルサービスとしては、家族やボランティアなどが挙げられます。
また、中間的なものとして、地域の団体やNPOなどの組織も含まれます。
そして、内的資源として、本人自身の能力や資産なども含まれることを理解しておきましょう。

回復期リハを提供するなかで考え得る社会資源の分類
フォーマルサービス
 行政
 社会福祉法人
 医療法人
 企業
インフォーマルサービス
 家族
 親戚
 友人・同僚
 民生児童委員
 近隣住民
 ボランティア
中間的なもの
 地域の団体・組織
 民間非営利法人(NPO)


◎援助者に求められる社会資源の活用
○ソーシャルサポートとしての社会資源の活用

さまざまな社会資源を紹介することが、援助の目的ではありません。ソーシャルサポート理論に基づいて、援助者としての社会資源の活用について考えてみます。
①自己評価サポート
②地位のサポート
③情報サポート
④道具的サポート
⑤社会的コンパニオン
⑥モチベーションのサポート

この、6つのサポートのなかの「③情報サポート」にわれわれの行っている社会資源の紹介や活用援助が含まれます。患者・家族は、われわれから さまざまな社会資源があるということを適切に知らされることで、情報というサポートを受けます。それによってエンパワメントされたり、自分で解決していこうという気持ちになる、つまり、サポ ートになるということです。
紹介することが仕事なのではなく、紹介した結 果、その人がサポートされたか、 問題が解決または軽減されたかということが、ソーシャルワークなのです。
また、社会資源を解決の手立ての一方法として捉え、不安・心配を軽減させる機能、つ まり、安全弁としての機能があるとしています。
しかし、その機能を果たすには援助者側のアセ スメントに基づいた「危機予測とオリエンテーション機能」が要求されるということを強調しています。
業務の前提として「先に社会資源ありき」ではなく、「アセスメントによって抽出したニーズに対応した対処策として社会資源を活用する」ということを肝に銘じておく必要があります。

社会資源の活用上の留意点
①クライエントが必要としている社会資源がどのようなものであるかを検討する
② 社会資源を必要としている主体は誰か
③活用すればどんなメリット・デメリットがあるかを十分検討する
④既存の社会福祉制度など身近なものを検証する
⑤どの社会資源の、どのような点が活用を困難にしているかを検証する
⑥問題に応じて介入のポイントを定める
⑦ 介入のポイントに従い、必要な人、もの、機関にはたらきかける
⑧公的なもの、組織的なもの以外にも利用できるものを発見し、検討する努力をする

○社会資源の開発・創出を意識する
「身の周りに有効な社会資源がない」とあきらめずに、新たにつくり出したり、既存のものを効果的に利用したり、有効に活用できるよう社会資源に変化を求めていくことも大切な業務です。援助者自身が「歩く社会資源」でもあるということを自覚して取り組んでいきたいものです。


◎医療保険制度
長期入院や治療の場合は、医療費の自己負担額が高額となります。そのため、家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を 超えた部分が払い戻される制度が高額療養費制度です。
ただし、保険適用外の差額ベッド代や食事など の自己負担額は対象になりません(自己負担)。あらかじめ手続きによって窓口負担が自己負担限度額の支払いとなる限度額適用認定証の発行を受けることができます。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となります。相談窓口は、健康保険加入者は各健康保険組合へ、国民健康保険加入者は居住地の市区町村となります。

◎傷病手当金
傷病手当金とは、健康保険(自治体が保険者で ある国民健康保険にはこの制度はない)の被保険者が病気やけがの治療で仕事を休んだ場合、 給料の支払いがなかったり、支払われていても少額であったときに一定の生活を保障するため(所得保障)に決められた期間支給されます。

○支給されるための条件
病気やけがのため療養中であること、そのため 仕事に就けないでいること(医師の意見書や事業主の証明などによって判断される)、4日以上仕事を休んでいること(3日間続けて休み、4日以上休んだ場合にその4日目から支給される)給料の支払いがない、または給料が支払われていて も傷病手当金の額より少ない場合に、その差額が支給されます。支給される金額は標準報酬日額の3分の2に相当する額で、支給される期間は1年6カ月の範囲内(支給の実日数でなく、歴上の1年6ヵ月)です。

○退職との関係
退職後も傷病手当金の支給は継続して受けることができます(退職までに3日間続けて休む待機期間が必要)。

○付加給付
健康保険組合が独自に定めた傷病手当金および延長傷病手当金付加金などの付加給付を実施しているところもあります。

○手続き方法
傷病手当金請求書に労務不能に関する医師などの意見書、労務に服さなかった期間およびその間における給料支払いの有無に関する事業主の証明書を添付し、事業所を管轄する社会保険事務所または加入する健康保険組合に申請する必要があります(申請書は1カ月ごとに提出が必要)。

◎障害年金
○障害年金を受け取るための3つの条件
①障害の原因となった傷病の初診日(または発病日)に国民年金または厚生年金に加入中であること
②初診日の前日までに一定の保険料納付要件を満たしていること
③障害認定日(初診日から1年6カ月後、 または、1年6ヵ月以内に症状が固定し、 治療の効果が期待できない状態に至ったと医師が判断した日)において、一定の障害の程度にあること

○対象となる障害
そしゃく機能の障害(嚥下障害など)、音声言語機能の障害(失語症など)、体幹・脊柱の障害(失調症状や麻痺など)、上肢・下肢の障害(麻痺や骨折、切断など)、精神の障害(場合によっては高次脳機能障害を含む)です。


◎障害者総合支援法
障害者総合支援法は、2003年度に措置制度から支援費制度が導入されました。今までの身体・知的・精神という障害種別ごとのサービス提供により、わかりにくくて使いづらい、地方公共団体間でサービスの提供格差が大きい、費用負担の財源確保が難しいなどの問題点を改善するために設けられました。
2006年度に障害者自立支援法が施行され、地域社会における共生の実現、つまり、日常生活および社会生活を総合的に支援するため、障害者自立支援法を改正する形で創設されました。
2013年4月に、障害者総合支援法が施行されました(基本的な構造は障害者自立支援法と同じ)。

障害者総合支援法に基づくサービスの内容としては、介護給付9項目、訓練等給付4項目があり、その他補装具の提供、 自立支援医療への対応、さらには地域生活支援事業を行っています。地域生活支援事業については相談支援をはじめ、移動支援など自治体によって異なる状況があるため、詳細については各自治体のものを確認する必要があります。

障害者総合支援法に基づくサービス
介護給付
 居宅介護(ホームヘルプ)
 重度訪問介護
 同行援護
 行動援護
 重度障害者等包括支援
 短期入所
 生活介護
 療養介護
 施設入所支援
訓練等給付
 自立訓練
 就労移行支援
 就労継続支援(A型=雇用型、B型=非雇用型)
 グループホーム
補助具
自立支援医療
 更生医療
 育成医療
 精神通院医療
地域生活支援事業
 相談支援
 移動支援
 地域活動支援センター
 日常生活用具の給付又は貸与
 専門性の高い相談支援(高次脳機能障害や発達障害など)
 広域的な対応が必要な事業など


◎手帳申請
○身体障害者手帳

対象
障害程度に該当すると認定され、永続する障害が残存する者。 各種の福祉サービスを受けるために必要です。
手帳の交付対象となる障害名
視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語機能障害、 そしゃく機能障害、肢体不自由、 心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱直腸機能障害、小腸機能障害、 免疫機能障害、肝
臓機能障害。

○精神障害者保健福祉手帳
対象
精神障害のため、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある者。
障害等級
1級~3級。
申請方法
区市町村の担当窓口に医師の診断書を含めた書類を提出します。更新は2年ごとで、有効期限の 3カ月前から申請可能です。
サービス
税制の優遇措置、交通運賃の割引、生活保護の障害者加算、公営住宅優先入居、 各種料金割引な どがあります。
高次脳機能障害者のサービス利用
身体障害がなく高次脳機能障害のある患者が障害者総合支援法を利用する場合、 精神障害者保健 福祉手帳の取得、もしくは医師の診断書があれば 可能です。 手帳は初診日から半年経過してからの 申請となります。
障害者総合支援法の申請からサービス支給決定までの流れについては、全国一律の流れであり、障害支援区分の認定後、利用者の意向を踏まえたサービスなど利用計画案に基づいて支給内容が決定される形となります。

○障害者支援施設
障害者総合支援法によるサービス体系には施設入所支援があり、旧身体障害者更生施設などが該 当します。
たとえば、旧更生施設では一定期間、以下のような支援を行います。
①就労に必要な知識や能力の向上を目的とした就労移行支援
②身体機能または生活能力の向上のために必要な訓練を行う機能訓練や生活訓練などを入所支援とともに行う。

◎就労支援
○地域障害者職業センター

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が設置・運営する障害者職業センターで、全国47都道府県に設置され、公共職業安定所と連携しながら、職業相談、就職支援、職場適応 (ジョブコーチ派遣など)の職業リハビリテーションを行います。

○障害者就業・生活支援センター(通称: ナカポツ)
就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある方に対し、センター窓口での相談や職場・家庭訪問などを実施します (2014年 10月現在、全国で324センター)。

○ハローワーク
ハローワークには障害者窓口があり、 必要に応じて地域障害者職業センターなどとの連携や各種助成金の案内、事業主に対しての助言を行いつつ、就職を希望する障害者の求職登録を行い、専門の職員・職業相談員が職業相談、職業紹介、職場適応指導を実施しています。また、求人者・求職者による「就職面接会」も定期的に開催されています。


◎介護保険

自宅での生活に介護の支援や住宅改修、 福祉用具が必要になるかもしれないときに利用します。各市区町村が保険者となって運営します。要介護度によって1ヵ月の利用限度額が決められています。介護が必要と認められた際には、費用の一部を支払って介護サービスを利用する しくみです。

○対象者
40歳以上の国民が加入を義務付けられています。
第1号被保険者:65歳以上
第2号被保険者:40歳〜64歳

○申請〜要介護認定まで
介護保険サービス利用の流れ
①要介護認定の申請
●申請先:介護保険課または地域包括支援センター
●利用できる者:第1号被保険者、介護保険が認めた病名 (特定疾病) によって介護が必要となった第2号被保険者(第2号被保険者でギランバレー症候群や交通事故による頭部外傷、転倒による頚髄損傷などは申請不可)
②介護認定調査と主治医意見書の作成
③介護認定審査会による審査
④要介護認定
●要支援1〜2、要介護1〜5までの7段階の認定
●申請から1カ月で要介護認定の結果が通知される
⑤ケアマネジャー(介護支援専門員)の選任
⑥ケアプラン作成
サービス利用は 「申請日」 に遡って利用可能

以下、よく利用する施設として、介護保険の施設サービスについて解説します。

○介護老人保健施設
状態が安定している人が在宅復帰できるよう、リハビリテーションを中心としたケアを行います。入所早期は個別リハビリを複数回受けられることが多いですが、長期になると頻度が減ります。費用は4人床の場合、12万円〜15万円/月です。胃瘻の方の受け入れには人数制限があります。夜間は医師がおらず、ケアスタッフも少ないため、食事介助が必要な方、転倒リスクが高い方への対応に苦慮している現状があります。

○介護老人福祉施設
常時介護が必要な高齢者が生活の場として入所する施設です。自治体によっては申し込み順ではなく、在宅介護の困難性などに基づく優先順位で 決定している所もあります ( 待機者が多いため、入院患者が直接入所することは困難)。2015年から、新規入所者は原則要介護3以上であることが入所要件となっています。

○療養病棟(療養病型医療施設
)
患者の状態を医療処置の必要性から医療区分Ⅰ 〜Ⅲに分け、重度(区分Ⅱ、Ⅲ) の人を積極的に受け入れます。費用は、20万円/月〜です。

◎地域包括支援センター
地域に根ざした中核的な相談窓口です。 地域のこと(とくに、介護保険などの社会資源など)は、まずここに聞くとよいでしょう。各中学校区に1カ所程度設置されており、地域住民の保健医療の向上、福祉の増進の包括的支援を目的に「総合的 な相談窓口機能」「介護予防マネジメント」「包括的・継続的なマネジメント」の業務を行います。そのなかには権利擁護業務も含まれ、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用、さらには高齢者虐待の問題についても相談でき、介護サービス以外のさまざまな生活支援も行います。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などが配置されています。



手元にある資料を参考にしたり、自分の思っていること、感じたことを書いています。
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