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【趣味】好きな本8選を紹介させて下さい

こんにちは。岡崎と申します。
まだまだ寒い日が続きますね。私はいろいろと忙しい日々を送っていたのですが、体調を崩してしまいました。といっても、イギリスと日本では天気の事情も多少違うでしょうが。私の住んでいるエガムという場所では、だんだん日は長くなりつつあります。

それで久しぶりにのんびり日記でも書こうか、などと考えていたのですが、ふと、本が読みたくなって、二葉亭四迷の『浮雲』を読もうと思い立ちました。

なぜイギリスに、運べる荷物の制限がある中でほとんど唯一の文庫本として『浮雲』を選んだのかはよく覚えていないのですが、読んでみると、この本の、文三という主人公がかわいく思えてきて案外面白く、忙しい中ですが早く続きを読みたいなあ、と思っています。

そんなこんなで、今日は、私の20余年の短い半生の中でとても読んで印象に残った本を紹介してみたいと思います。それぞれのおすすめポイントも添えて紹介します。そんなに本好きではないですが、純文学から大衆小説まで、色々記憶に残っている本がある気がします。

キリがいいようなので7選にしようと思ったのですが、どうしても収まりきらず、今回は8選になってしまいました。8もキリが悪いわけではないですが、8までいくと10に近づくので、7か10がいいような気がしてしまいますよね。完全に蛇足ですが。それではどうぞ。

1 青年時代

これは、トルストイの書いた文学作品です。本人の体験を記したものだったような気もしますが、よく覚えていません。ロシア文学はあまり読んだことが無いのですが、なぜかトルストイの『青年時代』をわざわざ別の区の図書館から取り寄せて借りて読んだ記憶があります。
世界の文豪が初心な恋に悩む様子や、大学の入学試験に苦心したことなどが、当時読んでいて面白おかしく感じて、印象に残っています。カラマーゾフの兄弟などはあまり記憶に残っていないのですが、面白いものでこの本は中々面白かったと思います。数百年前に数百キロ離れた場所で実際に青年トルストイが大学入試に苦しみ、恋心に悩んだんだなあ、と思うと網の目のような私と彼との繋がりを感じられました。

2 キッチン

吉本ばななの書いた小説です。私は単純にこういう世界観が好きみたいです。どことなく不思議な感じの、それでいて地に足の着いた感じの、「生き急がない」感じ会話や情景の記述がとても好きでした。キッチンの中でも冷蔵庫が特に好きで、冷蔵庫にもたれかかる場面描写とか、最高です。確かこの小説だったと思うのですが、主人公が歩いている上の夜空に三日月がかかっているシーンがあって、実際にその景色を見たことすらないのにその光景が頭から離れません。

3 赤と黒

これは、フランスの作家・スタンダールの代表作で、ジュリアンという狡猾でリアリストな少年が聖書を学び、立身出世し、高貴な身分の貴婦人との恋に身を滅ぼす話です。私の記憶が正しければ、光文社文庫ではなく新潮文庫版で読みました。訳の違いとかまでは分からないです。
なんでも、日本で大正時代に流行った本らしいです。よくは知らないのですが、ジュリアンがキリスト教とラテン語に長けていて、人生の分岐点でことごとくうまく立ち回る様子が読んでいて爽快な話でした。この主人公のように生きられたらどんなにいいか、と夢想せずにはいられないような今でいう中二病的なヒーロー像です。最後にジュリアンは夫人ともども破滅するんですが、その結末や、彼が「愚鈍」だと思っている友人が生き続ける事実等も含めて美しいです。

4 仮面の告白

三島由紀夫の代表作の一つです。私自身の個人的な告白としては、『金閣寺』は読んだことが無いんです。これが唯一読んだ三島作品なんですが、これを読んで三島由紀夫の世界観に一瞬で引き込まれました。そんな妖しい魅力を持った作品です。
この文庫本版を確か15歳の時に読んで、衝撃を受けました。彼のような作家は中々いませんね。官能的で流麗な男性の肉体描写や、切実に自己という存在とその終わりである死について言葉が紡がれているのを読むと、自分まで死ななければいけないような気がして、読みながら死について、性について、自己欺瞞について、主人公と一緒に考えた記憶があります。

5 アド・バード

個人的な話をすると、この本はなぜか文庫本ではなくハードカバー版で家にあったので、だいぶ幼い頃に読みました。
これは、ご存じの方は上の4作品に比べると少ないかもしれません。『哀愁の街に霧が降るのだ』『気分はだぼだぼソース』などで有名なエッセイスト、冒険家である椎名誠のSFです。別段SFファンでもないですが、アド・バードは読んでいて面白かったです。なんだか、読者の気分としては星新一と同じような気分になる本です。たしか最後に大どんでん返しがあったような気がします。近未来のストーリーテリングがとても克明で、長い本ですがまた読みたいと思いました。まる。

6 異邦人

これは、私の人生観を形作ってくれた本の一つです。アルベール・カミュというとサルトルとの論争や、コロナ禍での『異邦人』のブームがあったことが思い起こされますが、私の中ではカミュと言えば『異邦人』が一番です。
フランス占領を経験したアルジェリアでの、主人公の凶行の経緯。主人公がやらかしてしまう系の文学と言えば、カラマーゾフの兄弟とか、少し違うけれどもカフカの『変身』とかが思い浮かびますが、私はこの作品の中の、主人公による殺害動機である、「太陽がきらっとして」気がどうかしてしまったというような説明がとても好きです。
あと、母の葬式のシーンと、自分の犬に厳しい老人も好きな人物です。カミュと言えば、というのもおかしいですが、関連して、サン=テグジュペリの『星の王子さま』も好きですね。

7 国境の南、太陽の西

村上春樹は、最初はあまり好きではありませんでした。しかし、高校を卒業してから読んだら案外面白くて、好きになりました。この本を読んで、「ああ、村上春樹が世界で人気な理由が分かった」と思いました。
日本で書かれた色々な本、日本の外で書かれた日本についての色々な本が「東京という街」らしさや日本の「らしさ」を表現しているのですが、抜群に村上春樹は「日本」を描写するのがとてもうまいと思います。
音楽やお酒も嗜む方らしいので、当然と言えばそれも当然のことなのかもしれませんが。それにしても、アフリカの話、メキシコの話、ロシアの話など、世界中の文学や音楽についての知識があるんですね、村上さんは。すごい。
ただ、ひとつ言っておくと、自分自身はこの本を英語で読んだんですね。日本語では読んだことが無いので、機会があれば読んでみたいと思います。たしか大学に入って2年生に上がってから読んだ気がします。

8 パンク侍、斬られて候

ご本人が映った表紙が印象的ですね。
なぜ、この小説を読もうと思ったのか。なぜ、この小説が記憶に残っているのか。
一切それらのことは分からないのですが、中学校の図書館で手に取った町田康によるこの本は、3年間の中学生活の中でも一番印象に残っています。
とにかくすべての展開が予想できなくて、エンタメとしても面白かったが、文学という表現の自由さを思い知った作品です。当時、あまり色々な本を読んだことが無かった自分にとっては前衛的な構成だと思ったのを覚えています。
自分の中での物語という概念がこの本を読んで広く拡張された思い出がある。まったくもって意味不明だったが、それでもいいんだ、と新鮮に感じました。今読み返してももしかしたら面白くないかもしれないですね。あの時読んだのが良かったのかもしれないので今となっては分からないが、変な小説だったなあ。

読んでみたい小説、断念した小説

一度読んでみたいと思った小説、他人から勧められたもの、読み始めたはいいものの結局途中で挫折してしまった積読本などもたくさんあるにはあります。それらを少しだけ紹介してみよう。
・大岡昇平『野火』
・平野敬一郎『日蝕』
・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
他にもいろいろあるにはあるが、「もう絶対に手に取ることはないだろうな」と確証が持てるのは今はこの3冊だけです。『野火』は、戦争の体験として、それから「既視」という心理的現象が取り扱われていると他で読んで、興味が湧いていた時期がありました。しかし、それは政治学の勉強にそれほど直接は役に立たないし、なんならもう大学も終わってしまうのでもう興味を失いました。
『日蝕』は、平野敬一郎さんの新書をなぜか読んで、そこから派生して平野さんの書いた文学作品を読んでみたいな、と思っていただけで、今ではそれほど興味がなくなってしまったものです。
『カラマーゾフの兄弟』は、途中まで読んで、面白いには面白いのだがそれ以上読む気が失せてしまいました。たしか文庫本が上下巻か何かに分かれていて、一冊目は読んだが、二冊目以降が入手できず、それ以上読む意味も無いんじゃないかと思って辞めたのだったと思います。

おわりに

ところで、私が思うに、「読んでみたい」のにそれが実現していない本というのは、あまり自分にとって価値が高くない本なのではないかという仮説があります。というのも、全く偶然手に取ったのに、本当に面白かったというような本と、これらの、読みたいのになぜか食指が動かない本は対極だからです。

私たちは、自分が一貫した自我を持っていると思っているからこそ、一貫性のある行動をとります。だがしかし、時にはノリで行動し、気分で本を買い、名作に出会ったり感動したりして人生が変わっていきますよね。そしてそれと共に本来の性格・人格すらも変わっていくものなのかもしれません。

ということは、読んでみたいのに読まない、読み終わらない本というのは、自分で設定した既定路線に直感的に反発しているケースで、それらの本は自分には不要だったということなのかもしれません。それならば、あまりくよくよせず次の本と出合うべきなのかもしれません。

ああ、本が読みたくなってきたなあ。『浮雲』を少し読み進めようかなあ。是非皆さんも、おすすめの本があればコメントで教えてください。では。

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