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【ニーズ上昇中】一筋縄ではいかない?情報システム部門採用の教科書

「和佐田さん、情報システム部門の採用はどのように行うのでしょうか?」

と、ある企業の人事からご質問をいただきました。

採用市場では「情シス」や「コーポレートIT」と呼ばれることが多いですが、ひとえに「情シス」といっても、社内インフラ・ネットワーク・セキュリティ・ITガバナンスなど、該当する職務内容は多岐に渡ります。

また、リモートワークをはじめとする多様な働き方に対応した情報セキュリティ・ネットワーク構築を行う必要があることや、昨今の SaaS やクラウドの普及にともなうコーポレートITの最適化が求められる時代において、非常にニーズの高い職種です。

このような状況の中で、いきなり求職者様にアプローチしても良いですが、なかなか思い通りにいかないことが多いです。そのためアプローチする前にどのように求人票を設計し、どのような魅力を求職者様に伝えていくのかが非常に大事です。

そこで今回は情報システム部門における、採用に必要な前提情報や施策、手法について本noteで説明します。ゼロから採用を始める方にも、本noteを読んで全体感を理解していただければと思っております。

※あくまで本noteではポテンシャライトで日々採用のご支援をさせていただく中で感じた内容を元に書いておりますので、一意見として参考程度にご覧いただけますと幸いです。


1. 情報システム部門の採用を進める前に把握したいこと

情報システム部門の各職種を採用するための手法を公開する前に、よりスムーズに採用活動を進めるために事前に把握した方が良いことをお伝えします。

 1-1. 情報システム部門を分解して理解する

冒頭でお伝えした通り、「情シス」といっても、社内インフラ・ネットワーク・セキュリティ・ITガバナンスなど、該当する職務内容は多岐に渡ります。実際にどのような形で分かれているのかを理解するところから始めましょう。

わかりやすい図がないか調べてみたところ、下記の図が網羅的だったので、引用させていただきます。このような形で分解されているのかとご理解いただけたら幸いです。

情報システム部の主な業務や対応範囲と具体的な仕事内容をわかりやすくご紹介 より

さらに細分化することもできるかと思いますが、一例として上記の図を紹介しました。

 1-2. 情報システム部門の各職種に求められる業務内容を理解する

1-1で情報システム部門の大枠の業務についてご理解いただけたかと思います。本項はもう少し詳細に各職種に求められる業務内容を理解しましょう、という話です。

「情報システム部門の求人です!」とざっくり打ち出しても、専門性が異なる領域のため、求職者様としては自分の経験が活かせるのかどうかや、希望している仕事ができるのだろうかと思ってしまい、応募まで至らないこともありえます。(多くの事例があると聞きます。)つまり応募を増やしていくためには、どのように求人票を設計するかが一つの鍵になります。

そのため、情報システム部門の求人がさまざま存在する中で、今回はセキュリティをメインにしている求人、ITガバナンスをメインにしている求人、インフラをメインにしている求人、それぞれ10求人程度を調査して業務範囲を洗い出してみました。(各社によって情報システム部門の体制が異なるため、10求人の調査をしても業務内容がMECEになるわけではないのでその点をご理解いただいた上でご覧ください。)

セキュリティをメインにしている他社求人の業務内容まとめ(10社分)
ITガバナンスをメインにしている他社求人の業務内容まとめ(10社分)
インフラをメインにしている他社求人の業務内容まとめ(10社分)

ご覧いただきいかがでしょうか。

求人票をどこまで細分化するかは各企業によって変化しますが、上述の通り、個人的にはなるべく細分化した方が良いと思っていますので、求人票の作成の参考になりましたら幸いです。

 1-3. 情報システム部門採用の理想的な進め方

ここまで情報システム部門採用のミクロの話をしてきましたが、一筋縄にはいかない情報システム部門採用だからこそ採用に注力する「前」にやるべきことを理解しましょう。

情報システム部門に関わらず、一般的な採用活動の流れはこちら👇

採用活動の流れ

上記を踏まえ、情報システム部門の採用を行う多くの会社の進め方は下記のような手順になるのではないでしょうか?

一般的な企業の情報システム部門の採用手順

「スカウトの返信が来ないんです・・・」「応募が全くで・・・」というご相談は情報システム部門の採用においては多いです。しかし、情報システム部門の採用を実際に開始する「前」にやるべきことはいくつかあります。ここまでできたらベストというような理想的な採用の進め方はこちら👇

情報システム部門採用の理想の進め方

採用活動の開始前に、ターゲットの設計や情報システム部門として働く魅力、より詳細の情報を知りたいと求職者様が思った時のコンテンツをなるべく整理しておくことをおすすめします。

2. 情報システム部門の採用全施策をまとめてみる

ここからが本題です。一体、情報システム部門の採用において取り組むべき施策・取り組んだほうが良い施策はいくつあるのか。まずは情報システム部門の採用において出来ることを項目別で洗い出してみました。

それがこちら👇

情報システム部門採用における全施策①
情報システム部門採用における全施策②

これをレベル別にまとめてみると・・・

情報システム部門採用におけるレベル別全施策①
情報システム部門採用におけるレベル別全施策②

レベル5に近づけば近づくほど情報システム部門の採用において「強者(レベル高)」になるイメージです。(個人的な所感ですが、レベル5まで到達している企業はほとんどないかと思います。)

情報システム部門の採用(他の求人倍率の高い職種も同様)は自然応募を待っているだけでは、応募は見込めません。そのため、各社エージェントと定期的にコミュニケーションを取り、ダイレクトリクルーティングを実施していることが多いです。また、企業によりますが求めている人物像がとても多い職種ではないため、面談/面接やオペレーション等のCX設計にどこまでこだわれるかも、採用成功のためには非常に重要だと考えています。

3. 情報システム部門採用における魅力設計

ここまで情報システム部門採用の大枠に触れてきました。大枠を理解しても具体的な採用戦術や魅力設計を理解しなければ、採用成功は難しいです。ということで、採用成功の鍵を握る魅力設計についてお伝えします。

魅力設計をする際に重要なことは、「ターゲットから逆算したインサイト/メッセージング設計」です。まず、インサイトとメッセージングとは何かを簡単に紹介します。

インサイトとは:
「人を動かす隠れた心理」のこと。 

メッセージングとは:
「魅力」のこと。 ※今回は「自社の情報システム部門として働く魅力」になります。

インサイトとメッセージングについて、詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。全職種の採用活動に活かせるノウハウのため、ぜひご参考ください。

それでは本題の魅力設計の話について移っていきましょう。
※情報システム部門を細分化すると内容も細かくなってしまうため、本項では汎用的に使えるような魅力設計の例をお伝えします。

 3-1. 魅力設計①

まずは一つ目の魅力設計例です。

【インサイト例】
現職の情シス部門の存在感/必要感がやや薄く、社内受託開発部門のような立ち位置になっており、やりがいを感じられていない

【メッセージング例】
「●●」というビジョンを実現するために、「●●」という戦略・コンセプトを立てており、生産性と競争力の向上に直結するITに会社として積極投資を決めています。特に、セキュリティやITガバナンス領域はその中核(経営チーム直下)に位置しており、会社として優先度・注目度が高い領域で自らがやるべきと思った内容を提案/実行しやすい環境です。例えば、CIOや本部長に直接意見を出すことができ、経営陣とのコミュニケーションの場も多く、スピード感を持ってグループ全体への貢献感を肌で感じることができます。

魅力設計例①

情報システム部門だけではなく、エンジニアでも社内受託のようになっていて、やりがいを感じられないことがあると採用支援をする中でよくお伺いします。社内受託を簡単に説明すると、「ビジネスサイド等のメンバーがプロダクトの改善案を考え、その内容をエンジニア(情報システム部門)に伝え言われた通りに実行する」という意味合いですが、言われたことをただ実行するだけではやりがいを感じることは難しいです。

なぜこのような状況になってしまうのかというと、さまざまな理由がありますが、一つは会社の情報システム部門における必要性の理解が浅いことが挙げられます。そのような懸念を払拭するために、自社では情報システム部門に対してなぜ必要性を感じており、具体的にどのような位置付けでどのような特徴があるのかを明瞭に伝える必要があります。

そこでメッセージングの話につながります。メッセージングにビジョンやコンセプトという最上流から記載するか否かという話はあるのですが、なるべく上流から具体的な役割まで一気通貫でお伝えできると「WHY」の部分が伝わり納得感が醸成されやすいため、求人票のどこかに記載するのがおすすめです。(参考ブログ

また、「経営チーム直下」という点でも、会社として重要度の高い領域であることを間接的に伝えることができますし、経営チーム直下であることのメリット(経営陣とコミュニケーションが取りやすく、スピード感を持った意思決定をされやすい、自らがやるべきと思った内容を提案/実行しやすい等)までお伝えできるとさらに良いかと思います。参考になりましたら幸いです。

 3-2. 魅力設計②

次に二つ目の魅力設計例です。

【インサイト例】
会社の規模感に変動がなく、その規模でできる情シス施策(業務)に留まっており、成長している企業で新しい業務に取り組みたい

【メッセージング例】
弊社は年間100名〜200名規模の採用をしている急成長企業で、社内IT戦略の立案・推進スキル、情報セキュリティやITガバナンスの構想・推進スキルなど、これまでのご経験/ご希望に応じて幅広いスキルを身につけることができます。

魅力設計例②

今回、インサイト例に挙げたものは情報システム部門の職種だけではなく、他の職種でも該当する内容です。他職種と同様に、情報システム部門でも会社の規模感/事業が成長していかないとやることは大きく変わりません。

このようなインサイトを持っている場合に、意識したいメッセージングは大きく2点です。

1つ目は会社がどの程度のスピード感/規模感で成長しているかです。「急成長企業」という単語を求人票で一度は見たことのある方もいらっしゃるかと思いますが、この表現では抽象度が高く求職者様ごとに解釈が異なってしまい、具体的なイメージが湧きません。そのため、上記に記載したような「年間100名〜200名規模という表現や、一年で●倍の事業成長」など、より具体的な数値を出して記載することがおすすめです。

2つ目は業務の幅と深さです。上記のメッセージング例では「社内IT戦略の立案・推進、情報セキュリティやITガバナンスの構想・推進」を記載していますが、これは業務内容の幅(情報セキュリティやITガバナンス等)、深さ(立案/構想・推進)の両方を記載しています。

表で表すと下記のイメージです。

情報セキュリティ部門の業務の幅と深さ

では、「業務の幅と深さをできるだけ多く記載できれば、魅力的に感じていただきやすいのですね!」と解釈された方もいらっしゃるかもしれませんが、答えは「No」です。

できるだけ多く記載しすぎてしまうと、逆に「ここまでは自分の業務経験ではできなそうだからやめておこう」や、「今の自分にはハードルが高そうだな」と思われてしまい応募につながらない可能性がありますので、この点はご理解頂けますと幸いです。

メッセージングを考える上で重要なのは「ターゲットとインサイト」であることを念頭に置いて設計できると、より適切な魅力項目ができますので、ご参考くださいませ。

4. 情報システム部門採用の落とし穴

最後に、よく採用活動がうまくいかない要因となりやすい、情報システム部門採用における「落とし穴」をご紹介しますので、ご参考いただけたらと思います。

 4-1. 求める人物像がとても高くなってしまい、求職者様が集まらない

上述の通り、「情報システム部門」といっても、社内インフラ・ネットワーク・セキュリティ・ITガバナンスなど、該当する職務内容は多岐に渡ります。つまり、近い領域ではあるもののそれぞれ専門性は異なります。そのため、個人的に求人票や求める人物像はなるべく細分化した方が求職者様にもわかりやすいですし応募が集まりやすいと思っています。

ただ、Web上で公開されている求人を見ると、「セキュリティ・ITガバナンス・ネットワークを全て行っていただきます!」という求人も一定数存在するため、個人的な所感ですが母集団形成に難航している企業も多いのではと感じています。

なぜこのようになってしまうのかを考えてみると、いくつか仮説が出てきました。「現場が求めている業務を人事側がそのまま全て受け入れて、求人票に反映してしまう」ことや、「現場/人事問わず、採用に関わる人が採用市場の把握ができていない」など、そのほかにもあると思います。

情報システム部門採用にお困りの方は現在の採用市場を鑑みた上で、どのような人物像を求め、どのような魅力を設計するのかを一度考えてみてはいかがでしょうか。

 4-2. 社内における情報システム部門の立ち位置が低く、多くの予算を使うことができない

3-1の魅力設計の際にも、「情報システム部門の存在感/必要感がやや薄く、社内受託開発部門のような立ち位置になっている」というインサイトを紹介しましたが、そちらと近しい内容の話です。

日本経済新聞によると、日本の全上場企業および従業員100人以上の非上場企業の「売上高に対するIT予算」の平均は1.34%(2021年度)というデータが出ていました。(参考ブログ)アメリカやヨーロッパでは売上の3%前後を投資しているというデータも存在するため、日本とやや開きはありますが日本も徐々に増えてきているようです。さまざまな状況があるかと思いますが、日本企業はまずは売上の1%程度をIT予算に投資する戦略を考えてもよいかもしれません。

ある日本の上場企業では「売上の3%をIT予算に投資する」と決めている会社もあるとお伺いしたことがあり、やはりその会社は採用活動がうまくいっていました。一定の予算があるということはそれだけ自由度が高く考えることができますし、インパクトの大きい仕事ができることを考えると魅力的な環境だろうと思います。

応募を増やすためのアプローチを続けていてもうまくいかない場合は、求人票の設計や魅力設計を変化させることも重要ですが、自社を根本から見直すことも考えてもよいかもしれません。

5. 最後に

いかがでしたでしょうか。

ここまで情報システム部門の採用に必要な前提情報や魅力設計、採用手法に触れてきました。情報システム部門の採用をこれから始めようとしている方や、悩んでいる方に読んでいただけましたら幸いです。

長文でしたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました!


🔽 その他職種の採用の教科書 (参考までにご覧ください。)


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