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1からCFO採用を始める方へ|スタートアップ・ベンチャーのCFO採用とは

スタートアップ/ベンチャーが成長する上で、欠かすことができないのは「ファイナンスの戦略」ではないでしょうか。創業初期はCEOやCOOが兼任して、ファイナンスを行うことが多いと思いますが、一定フェーズになるとファナンスにおける専門家が必要になるかと思います。

その時に、いざ採用しよう!となっても、CFOを採用するためには何から始めたら良いのだろう?そもそもCFOはどこにいるのか?CFOはどのようなことを考えて転職しているのだろう?というさまざまな疑問が生まれてきます。

そのような中で、CFO採用をどのように進めていけばいいのか、事前準備編、採用手法編、補足情報の3つに分けて本ブログでご紹介しますので、ぜひ最後までご覧いただけますと幸いです。

※あくまで本noteではポテンシャライトが日々採用のご支援をさせていただく中で感じた内容を元に書いておりますので、一意見として参考程度にご覧いただけますと幸いです。


1. CFO採用を進める前に把握しておいたほうが良いこと 【事前知識編】

 1-1. CFO採用の市場について

どのような職種を採用するにしても、市場にターゲットがどれくらいいて、求人数がどれくらいあるのかは大前提知る必要がありますので、まずは、CFOの市況感について説明します。

個人的にCFOが最も多く登録していると思っている採用媒体で、母集団の調査をしましたのでデータ(2023年8月調査)をご覧ください。

<共通条件>
希望勤務地  :関東圏
最終ログイン :2週間
年齢     :20代後半〜50代前半

<経験年数別>
CFO経験5年 :250名 (約)
CFO経験3年 :400名 (約)
CFO経験1年  :600名 (約)

ある採用媒体でのCFOの母集団データ (2023年8月調査)

◾️母集団データの補足説明
・どの採用媒体で調査をするかによって、該当人数や求人数は変動しますので、あくまで参考値としてご参照ください。
・最終ログイン「2週間」で検索条件を絞っていますが、上記の求職者が全員転職を考えている可能性は低いので、その点はご認識くださいませ。

母集団データの補足説明

いかがでしょうか。

個人的には、上記の数字は想像通りの印象というイメージが強かったですが、スタートアップ/ベンチャーが主に求めている30代〜40代のCFO経験者はどれくらいいるのだろうと少し幅を狭めて調査したところ、30代〜40代で3年以上のCFO経験者は100名もいませんでした。

ここで、二つのことがわかりました。

一つ目は、30代〜40代のCFO経験者を採用するのは相当なハードルがあること、二つ目は、50代以上のCFO経験者がCFO採用の市場では半数以上を占めていることです。

大前提、スタートアップ/ベンチャーにおいてCFOの存在は核になるため、他のポジションと比較しても特に妥協できないポジションですが、実力と実績を兼ね備えたCFOを採用するのは簡単なことではないと改めて認識していただけると良いかと思います。

もしくは、CFOは未経験だが、投資銀行や証券会社で資金調達やM&Aを行なってきた方々まで、広く採用を検討することが望ましいかと思います。

最後に一点補足すると、ビジネス特化型SNSである「Linkedin」でも「日本在住のCFO」の人数を調査(2023年8月)したところ、約4500名でしたので、Linkedinの活用も検討いただけると良いかと思います。(採用手法の詳細は大項目2でお話します。)

 1-2. CFOのタイプは3つに分かれる

「CFO」というワードだけ聞くと、ファイナンスについて、何でも精通しているようなスーパーな方を思い浮かべがちですが、CFOのタイプは大きく三つに分かれます。(いくつかの既出記事を見た中で、とてもわかりやすい内容がありましたので、そちらから引用させていただきます。参考記事はこちら

1. ファイナンス系CFO [攻めのCFO]
ファイナンス系のCFOは、外資の投資銀行や日本の証券会社、またはPEファンドや戦略コンサル出身で、資金調達やM&A実務を行なってきた人たちです。

所謂、資金調達の専門家で、このタイプのCFOがいると資金調達ラウンドは非常に安心できます。調達後の投資家コミュニケーション、いわゆるIR(Investor Relations)にも強みを持ち、取締役会の運営にもフロントに立って場を回してもらえます。

一方、コーポレート実務の方はあまり経験がないことが多く、総務・経理・人事・法務などのベーシックな知識はあるものの、実務オペレーションは一部、他メンバー任せになってしまうこともあります。

スタートアップにおけるCFO採用より

2. アカウンティング系CFO [守りのCFO]
アカウンティング系CFOは、公認会計士であったり、大手上場企業やそのグループ子会社の経理財務部長といった、いわゆる経理畑出身の人たちです。

経理実務、リーガルやガバナンスといった領域に強い専門性を持ち、ファイナンス系CFOが「攻めのCFO」だとすると、アカウンティング系CFOは「守りのCFO」と言えるでしょう。

上場審査プロセスにおいて、経理は根幹となりますので、ミスが少なく正しく速く数字が固まることは、事業運営においても重要な要素となります。

一方、資金調達やIRにおいての専門性はそこまで高くなく、粘り強いバリュエーション交渉や、魅力的なエクイティストーリーを設計することなどは得意ではないこともあります。

また、固めの大企業出身の方も多く、変化が激しいスタートアップへのカルチャーフィットに懸念がある人も多い印象です。

スタートアップにおけるCFO採用より

3. コーポレート系CFO [コーポレートの実務まで幅広くできるCFO]
コーポレート系CFOは、事業会社の総務・人事・経理・法務などを全般経験し、コーポレート実務全般に強くなんでもこなせる管理部長といったキャリアの方です。

人事や法務など、特定の領域にグッと強い方もいますが、事業会社において少ない人数でバックオフィスを支えながら、組織成長とともに職務領域を広げていったような方が多く、圧倒的な守備範囲の広さとベンチャー適性があります。

ただ、アーリー・ミドルにおいては少人数でコーポレート実務全般を支えてもらえ高いパフォーマンスを発揮してもらえますが、広く浅くといったキャリアになりがちで、レイター以降で専門性が高くなっていくとCFOとしては厳しくなっていくかもしれません。

スタートアップにおけるCFO採用より

ここまで3つのタイプのCFOを紹介していきましたが、簡単に表で整理してみましょう。

CFOのタイプ別の特徴整理

「CFO」と言っても、何でも強みとしているわけではないため、どこの強みを持ったCFOを採用したいのか、採用活動を始める前に選定することをおすすめします。上場を視野に入れると、ファイナンス系のCFOが望ましいでしょう。

 1-3. 「攻め」の業務と「守り」の業務とは

1-2で「攻め」と「守り」について少し触れましたが、本項では具体的にどのような「攻め」の業務と「守り」の業務があるのかを見ていきましょう。

実際にCFOを募集している各企業で、どのような業務内容を求人票に記載しているかを約10社取りまとめましたので、下記をご覧ください。

CFOの「攻め」の業務内容のまとめ
CFOの「守り」の業務内容のまとめ

詳細な業務を見ると多岐に渡りますが、求人票を作成する際は社内メンバーの強みと企業フェーズを鑑みた上でお任せしたい業務内容を整理すること、CFOのタイプによって強み弱みがあることを考慮していただければと思います。

最後に「攻めの業務」と「守りの業務」について整理します。

「攻めの業務」は、会社の成長のための能動的な動きのことで、資金調達や、広報IR、M&Aなどが挙げられます。

「守りの業務」は、会社が安定して機能するための土台作りのことで、財務管理や経理、法務、人事総務などが挙げられます。

 1-4. CFOはどのような基準で転職するのか?

事前準備編の最後は、CFOの転職理由について理解することです。細かい条件を挙げればたくさんありますが、今回はその中でも転職の意思決定に至るような重要な転職理由についてお話できればと思います。

ラクスル社の永見さんがこちらの記事で、重要な転職理由について下記の回答をしています。

質問:CFOを迎え入れるためには、経営者は何を共有し、どのように巻き込んでいくべきだと考えますか。

回答:ワクワクするような大きなビジョンと、そのための絵が描けていること。そして、それらに際して、キャピタルレバレッジを利かせるドライバーがあること。細かな条件よりも、この2点が何よりも大事です。
あとは、創業者がダイリューションしても成長を望むかという方針が見えていることでしょうか。

経済合理性では満たせない価値がある──ラクスル永見×ヤプリ角田が語る、“スタートアップCFO”のキャリアと資質より

「CFO」は名前の通り、会社における財務責任者で、簡単にいうと「財務という手段を通して会社成長の全てを担うこと」が役割です。

この役割を考えると、合点がいくのではと思いますが、自分が共感できるようなビジョンがあり、そのビジョンの達成の道筋が明瞭かどうか、その上で自分の強みを活かせるような事業モデルになっているか(事業の継続率が高く、収益がストックしていく構造にあり、Jカーブによる投下資金の回収シナリオが立っているか)が気になりやすいです。

また、創業者のダイリューション(新株発行により既存株主の持ち株比率が低下すること)しても事業成長を望むかどうかで、創業者の事業に対する本気度やCFOとしてどこまでの介在価値を出すことができるかが一定わかるため、この点も非常に気になる部分だと思います。

整理すると、CFOを採用する際に特に伝えた方が良いことは、細かい条件というよりも上記の要素であることを理解し、目の前の候補者様のタイプによってどのようにお伝えするかを考えていただけると良いかと思います。

2. CFOの採用手法 【採用手法編】

ここからは具体的な採用手法についてです。今回は大きく3つの採用手法をお伝えします。

 2-1. 在籍メンバーのリファラル

1つ目は在籍メンバーからのリファラルです。CFOクラスは言わずもがな希少性が高く、紹介や引き抜きが常時起こっている状態です。そのため、転職媒体やエージェントを使わずに転職が決まるケースも多々あります。

在籍メンバーのリファラルは母数に限りがありますが、在籍メンバーの友達の友達などにも力を貸していただきながら、リファラルを進めていくことはまずやるべきことと考えています。

リファラル採用はコストもかからないですし、在籍メンバーの知り合いということもあって一定信頼できる方になるので、まずはリファラルを死に物狂いで行うことが重要です。

 2-2. SNS

2つ目はSNSです。1つ目の採用手法でリファラル(知り合いへのアプローチ)について話しているので、2つ目のSNSは知り合いではなく、 SNSなどで繋がりがある方とご理解いただければと思います。

具体的にはTwitter、LinkedIn、Facebook、LINE、YOUTRUSTなどのSNSを活用していく形になりますが、重要なのはCFO候補になりうる方に多くのメッセージを送ることです。(上述の通り優秀な方には多くのスカウトメールが来ているため、いかに文面を工夫し読んでいただけるかも重要ですが)

スタートアップ/ベンチャーの経営者の創業期は、「SNSで繋がりがあり、エンジニアとして活躍いただけそうな方には、ほぼ全員にメッセージを送る」
という話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、とても大事な行動だと思っています。なぜなら、「転職を考えている」というのはメッセージを送ってみないとわからないためです。

私自身も採用支援をする中で企業と連携して、CFOとして可能性がありそうな方にはほぼ全員にメッセージを送る経験をしました。そのメッセージへのリアクションは「今は本業で忙しく関われませんが、応援しています!」や「直近で関わるのは難しいのですが、興味を持ちましたのでお話を聞くだけでしたら大丈夫です。」など、さまざまでしたが、可能性は間違いなくあると感じています。(意外にもリアクション率は他の職種よりも高かったです。ちなみに、SNSでメッセージを送付する際の文字数は500文字前後を推奨しており、SNSの中ではLinkedinを個人的に最も活用していました。)

少し話が変わりますが、業界でも著名な方が退職の旨を発信した場合のアプローチ方法はよく考えた方が良いでしょう。間違いなく多くの企業から声が掛かっていますので、普通にメッセージをしても返ってこないことがほとんどだからです。例えば、退職された方と親しい友人を探し、熱量のあるメッセージを伝えるなど、別の方法でアプローチすることをおすすめします。

 2-3. エグゼクティブ/ヘッドハンティング系エージェント

3つ目はエージェントを活用したアプローチです。 このアプローチは所謂、一本釣りと言えます。ただ、ハイクラスに強みを持っているエージェントでも、CFO候補をご紹介することは、転職市場に人材が少なく難しいことをまずはご理解ください。

その上で企業側は、数少ないCFO候補を優先的にエージェントにご紹介いただくために、会社の魅力や特徴・事業戦略・ビジョン・CFOの求める人物像などを明瞭にお伝えする必要があります。

「あまり紹介が来ないから」といって何もしないと、全くご紹介が来なくなってしまいますので、限られたリソースの中で採用を行っている企業が多いかと思いますが、エージェントへの説明は丁寧に行った方が良いです。

また、説明を丁寧に行うことはもちろん、フィーアップも視野に入れておく必要があります。一般的な職種は大体35%、高くて40%が市場平均だと思いますが、上述の通り、CFOクラスは転職市場に少ないため、他の職種と同様のフィーでは紹介をいただくことは難しいという認識を持っておいた方が良いでしょう。

こちらも参考までに私の実体験をお伝えすると、担当していた企業では資金調達が迫っており、今すぐにでもCFOの採用を行いたいという背景もあり、フィーを80%まで引き上げ、最終的には100%まで引き上げることもありました。(当たり前ですが、フィーを上げたからといって採用がうまくいくとは限りませんので、参考事例として参照ください。)

3. CFO採用の落とし穴 【補足情報】

最後に、CFO採用における落とし穴をご紹介しますので、ご参考いただけたらと思います。

 3-1. 企業フェーズと得意フェーズの相性

前提として企業フェーズによって、CFOに求められる役割は変わります。こちらの記事を参考に、企業フェーズごとに「攻め」と「守り」の割合がどのように変化するのかをまとめましたので、下記をご覧ください。

フェーズごとにおける攻めと守りの割合イメージ

本項でお伝えしたいのは、フェーズごとに必要となる業務を理解した上で、その領域に強みを持つCFOを採用する必要があるということです。

まず、シード・シリーズA(アーリーフェーズ)では事業を軌道に乗せることを最優先に考える必要があり、そのための資金調達やその他事業成長のためのアクションがメインになってくるため、「攻め」の業務の割合が高くなっています。

また、どのフェーズで入社するか、既存メンバーの属性によって、若干業務内容が変化しますが、場合によっては「攻め」や「守り」以外の事業成長に関連するビジネスサイド的な業務を行うこともあるというのはよく聞きます。

次に、シリーズB・シリーズC(ミドルフェーズ)になると、さらに事業を成長させるための資金調達(IR活動)を視野に入れつつ、ファイナンス組織の体制構築やガバナンス体制の構築を同時並行で行なっていく必要があります。ゆえに、企業の状況によりますが、攻めの割合の方が若干高くなる傾向にあるかと思います。

そして、シリーズD・シリーズEになると、IPO準備をする企業とM&Aを狙う企業に分かれます。IPO準備をする企業であれば、今回詳細は割愛しますが、直前々期以前(N-3期以前)、直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(N期)の各フェーズごとに行うべきことが多数あるため、守りの比率を高くしました。

一方、M&Aを狙う企業であれば、買収される側はステークホルダーのためにも企業価値を上げる必要があるため、売上・利益を向上させる動きをする必要があります。また、買収する側はデューデリジェンスを行う際に、社内体制が整っているかなどを確認するため、攻めと守りが両方必要な時期になります。IPO準備の企業と比較すると、攻めの割合が多いため、攻めの比率を高くしました。

最後に、上場後です。上場後も他のフェーズと同じく、企業の目指している方向性によってやるべきことが変わりますが、上場企業の前提として、コンプライアンスやガバナンス、継続的な事業成長が求められるため、攻めと守りの要素はバランス良く必要になると考えています。

話を整理すると、フェーズごとに必要となる業務が大きく変化することを理解し、その領域に強みを持つCFOを採用する必要があることを認識いただければと思います。

 3-2. 代表との相性

続いて代表との相性です。こちらはどのCxOの職にもあてはまる重要な要素ですが、会社の根幹となるファイナンス領域を担うCFOは特に代表との相性が重要だと考えています。(日々、スタートアップ企業の採用支援をする中でもよく聞きます。)

資金調達をする際は数十〜数百の投資家をCEOとCFOで回ることもあるため、物理的に一緒にいる時間が長いです。そのため、CFOとしての業務知識があることは前提として、一緒にいる時間が長くても一緒にいれる存在なのかは入社前に何度か接点を持って確認できると良いでしょう。

最後に、入社前にどのように接点を持つ企業が多いのかについてお伝えします。前提として、入社前は業務面とカルチャー面でのミスマッチがないかを判断することが多いです。そのための手段は、業務面では一般的な面接や既存投資家との会話、取締役会への参加を推奨しているケースが多く、カルチャー面では他経営陣との面談や会食を行き、会社の成長を一緒に歩んでいける方なのかを見ている場合が多い印象があります。

最後に

ここまで、CFO採用に関する情報を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

経験されたことのある方はご理解いただけるかと思いますが、CxOの採用は一筋縄ではいかず、前提知識を理解し、アプローチの量を担保しつつ、戦略的に行えるかが重要です。

私自身、CxO採用について勉強中ですし、これからさらに重要度が増してくる領域だと思いますので、引き続きスタートアップ/ベンチャー企業の採用活動を行いつつ、情報をアップデートしていきたい思いが強いです。
※今回も上記で参照している通り、さまざま記事を拝見してインプットしました。

長文でしたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました!


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