株のチャートは全部無駄 ~テクニカルという罠~

前回の記事はこちら

さて、前回の続きということで、今回のNOTEでは、主にチャート分析(テクニカル分析とも言います)に対する注意喚起と、インデックス投資について書いていこうと思います。

この話だけ、独立させてNOTEにしたのは、前回のNOTEが長くなりすぎたのもあるんですが、最近、私の周りでも被害者を多く見かけ、「これ、本当にまずいんじゃないのか?」と思うようになったからです。

移動平均線がどうだのモメンタムがどうだの、トレンドだのこういう単語は基本的に全部危ないと思って下さい。これらの単語の信頼性は、実は神仏の助けとか、豪運とか、そういうオカルトレベルです。実証実験をしてみてもほとんど効果がない。という結論がもう何十年も前に出ています。

これらの単語を使うということは、いわば、危険なダンジョンに周回遅れの知識で乗り込もうとしているようなもの。単語が出てきた時点で、そのブログは読まないほうが良いです。(時々自信満々に書いているブログもあります。まあ言論は自由ですけど……)

まあ、他人の金だし、いくら損をしようとも別に構わないのですけれども、フォロワーとかがそういう怪しい話に引っかかってしまうのは見ていて心苦しいわけで……俺はチャート分析を信じるぜ!って人がいても別にいいんですが、まずはそう判断する前に、一旦私の話を聞いてみてからでも遅くはないと思いませんか?それでは少しの間お付き合いください。

チャートを見るやつはバカ

前回のNOTEでも紹介しましたが、チャートとはこのようなものです。株価が上がったり下がったりしているのを表したグラフですね。皆さん、株を買うときに、こういうチャートを一度は参考にしたりするんじゃないでしょうか。

例① なんか下がり気味
例② 綺麗に右肩上がり

「うーむ、この株は下がっているからしばらく浮上することはないな……」とか「この株は伸び続けている!買った方が良い!」なーんて思いながら、銘柄を選んだりしていると思うんですが……実はそれは無意味な行為だどころか、むしろ場合によっては損失に繋がっているというのだから驚きです。

「えっ?どういうこと?」ってみなさん思うじゃないですか。安心してください。私もです。このチャートが全く役に立たないなんて、直感に反します。だって、前者は明らかに実入りがなさそうだし、後者は明らかに伸びそうに見えます。それが役に立たないなんて本当にあえりえるんでしょうか?

結論から言いましょう。役に立ちません。つまりいくら右肩上がりに見えた株でも、ある日突然下がることはあり、またどれだけダメダメに見えた株でも、上がることはあります。そして、その確率はほぼランダム(つまり予測不能!)だと言うのです。

この驚くべき事実を示したのが、前回も紹介した名著「ウォール街のランダムォーカー」という本になります。

この本で主張されている基本的な考えは、タイトルにもなっている「ランダムウォーク理論」つまり、「株価は予想できない」ということなんです。

しかし、そんなの……信じられませんよ!

ってみんな思うでしょう。なんとなくですが、下がり続けている株は、下がり続けるような気もしますし、上がり続けている株はさらに上がるような気がしてしまいます。これをモメンタムと呼ぶそうなんですけれど、論より証拠、学者たちはその法則が本当にあるかどうかを調査しました。

このテクニカル・ルールに関しては、徹底的なテストが行われてきた。いくつかの主要取引所を対象に、また二〇世紀初めにまでさかのぼる膨大なデータが、そのために用いられた。そして過去の株価を分析したところで、将来の株価を予測するのに何の役にも立たないというのが、その結論である。株式市場はほとんど記憶というものを持たない。株式市場は時として、「モメンタム」の存在を裏づけるような動きを示すことはあるが、それには全く規則性がなく、それを利用して超過リターンを得られるかどうかは、売買コスト差し引き後で見ると、断定的なことは言えないのだ。

バートン・マルキール.ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉――株式投資の不滅の真理(日本経済新聞出版)(p.190).日本経済新聞出版社.Kindle版.

ということでした。実際に過去のパターンを持ってきたのだから確かです。

これはなかなか意地が悪い。いわば占い師に対して「じゃあ、やってみてよ」とチャートを渡して予想させたら外れてしまったということなのですから、これ以上強力な反証はないですよね。「チャートから未来の株価を予想する」という行為はほとんど意味がない。と考えても良いでしょう。

まあ、マルキール自身が認めている通り、実際の株式市場は完全ランダム……ではなく、少しは過去の値との相関があるそうなのですが(そういう意味で、モメンタムは存在する。と言ってもいいのかもしれません)、それでも、それを利用して利益をあげようとするのは手数料の問題があり難しいとのこと。

チャート分析の中には「移動平均線がクロスした時は買いサイン」とか「トレンドを形成しているから高値が続く」みたいなチャートを細かく分析して、未来の姿を予想する……というバリエーションがあるそうですけれども、それらの主張に対して過去のデータを持ってきて見ると、どれもこれも大ハズレ。

このチャート分析には、よく皆さんがやっている「フィルター法」も含まれます。例えば、株価が5%下がったら「損切りする」みたいな方法を決めておく手法なんですが、実はこれも効果がない(というより、他の手法と比べて大差ない)。とのことです。もっとも、ヤバい株を持ち続けることがなくなるのでそれは有利に働くんじゃないの?とは思いますし、実際損切りが機械的にできる。というポイントは有利に働くそうなんですが、その効果を持ってしても、バイ・アンド・ホールド戦略(同じ株を持ち続ける)という単純な手法のパフォーマンスを継続的に上回ることが出来なかった。ということも明らかになっています。

でもさぁ、優良企業の株は右肩上がりなんじゃない?

実はそう考える立場もあります。ファンダメンタル分析と呼ばれる立場の人々です。つまり、「企業の本質的な価値」を見抜き、そこに投資するという考え方ですね。

この手法でいちばん有名なのが、かの「ウォーレン・バフェット」です。彼はまず投資する企業をきっちり研究し、この企業だったら絶対に大丈夫だ。と思った企業に投資するそうです。それも、株価が下がってバフェットの考える本質的な価値を下回った基準で買えるタイミングでです。バフェット、マジモンの化け物で、「ウォール街のランダムウォーカー」の中でも「この本は40年近く版を重ねているが、その間生き残っていた投資家はバフェットぐらいだ」と言及されるぐらい。

まあ、最近のバフェットはもう神格化されていまして、むしろ彼が「この株いいね」と言っただけで相場が動くような所があるんじゃないの。なんて私は思うわけですが。それはともかく彼が今まで勝ち続けてきたのも事実。

じゃあ、ファンダメンタル分析すれば簡単じゃん!と思うかも……ですが、マルキールによると、実際はかなり難しいということです。

まず、「企業の本質的な価値」を見抜くのは超大変だってことです。プロがやっても間違える……ってか、企業の本当の価値ってなんだよ!って部分がからして定義が難しいですし。色々な指標で「正しい株価」を計算してみるのも非常に厳しい。あとで詳細を書きますが、実際にマルキールたちが、本職のファンドマネージャーを呼んできて予想させた所、その結果は惨憺たるものだったそうです。プロですらそうなのだから本当に難しい。

そして何よりも、企業が嘘をついていたらどうしようもありません。東芝やオリンパスの粉飾決算を思い出してください。

さらに、企業が嘘をついておらず、全ての情報を把握することができ、「正しい株価」が分かったとしても、今度は別の問題が発生します。つまり、「正しい株価」が解るんだったら、みんなそれで取引するってことです。

A社の株は計算によると、1000円が適切である。しかし現在600円で取引されている。つまりこれは『買い』だ!

ってことがもし仮に分かれば、みんなその値段を目指して買います。その逆もあり、つまり、株価は速やかに適切な値に移動するわけで、そもそも儲けられそうなタイミングが生まれることが非常に僅かなのです。特に、何万台というマシンが唸りを上げて、少しでも儲けようと株を取引している現代のような環境では素人が株価と価値の乖離を発見して儲けるのは非常に難しいことでしょう。

チャート分析に比べて、ファンダメンタル分析はまだ信用のできるやり方に思えます。ただし、その方法で絶対に勝てる!かというと難しい所。あとでも説明しますが、別の手法を使ったほうが概ねパフォーマンスが良い。ということが知られています。じゃあ意味なくね?というのがマルキールの主張なんですね。

ちなみにですが、これは、多くある誤解であり、本の中でもしっかりと書かれている部分になるんですが、「ランダムウォーク理論」とは、株価が外部から影響を受けず、完全ランダムで決まる。……という理論ではありません。

むしろ、株価が様々な要因、例えば業績だったり群集心理だったりそういうものの影響を受けて変化することは認めています。ただそれが予想できないというだけなのですね。

オカルトにハマる投資家たち

「ウォール街のランダムウォーカー」では、チャート分析(テクニカル分析)にハマってしまった投資家の様子がユーモラスに描かれています。

テクニカル分析は、学者の世界では異端の教義であり、それを非難するのはわれわれにとって喜びでさえある。われわれを、このような弱い者いじめに走らせる動機は、第一に、彼らの手法が明らかに間違っていること、第二に、いじめやすいこと、である。これほど哀れな対象をいじめるのは、多少アンフェアな気もするが、忘れないでいただきたい。私が守ろうとしているのは、ほかならぬあなたがたの財布なのだ。

バートン・マルキール.ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉――株式投資の不滅の真理(日本経済新聞出版)(pp.188-189).日本経済新聞出版社.Kindle版.

ところで不思議なことに、文無しになったテクニカル信者は、この道を選んだことを決して後悔したりはしないのだ。それどころか、以前にも増して熱心な信者になるのである。無礼を承知で、そういう連中が文無しになった理由を尋ねてみるがいい。おそらく彼は何のためらいもなく、「私はチャートに疑いを差し挟むという、全く人間的な、お恥ずかしい失敗を犯したのだ」と答えることだろう。みっともない話だが、私はかつて、ディナーの席で友人のチャーティストがそう答えるのを聞いて、食事を喉に詰まらせてしまったことがある。それ以来、消化に悪いからチャーティストとは食事を共にしないことにしている。

バートン・マルキール.ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉――株式投資の不滅の真理(日本経済新聞出版)(p.187).日本経済新聞出版社.Kindle版.版社.Kindle版.

わざわざ、NOTEを分けてまでこのことを書こうと思ったのは、私が観測している範囲でも、仮想通貨でこういう行動に出ている人をちらほら見かけているからです。

「このチャートの形状は〇〇年のこの時期と同じ!」「揺り戻しがきます!」「平均線がクロスしたのでこれからは上昇トレンド!」「モメンタム!」などの言葉とともに、チャートをベタベタと貼り、そこに自作の指標を書き込んだりする……。そういう人々を見る度に「あ~あ」という気分になります。40年も前に「意味がない」と結論づけられたものを未だに使っているわけですからね。周回遅れどころかただのカモです。

上記の単語が聞こえてきたら、まず警戒しましょう。

じゃあ、なんでチャート分析は流行るの?

効果がない。というチャート分析ですが、ちょっと検索してみると「テクニカル分析には意味がないと思っていませんか? 実はあるんです!」みたいなページや株取引を教えるページがバンバンヒットするので、ちょっと混乱すると思います。(そして彼らは情報商材を売りつけてきます)

なんと証券会社自体も、移動平均がどうだの、テクニカル分析のためのツールを提供している始末。

楽天証券のテクニカルチャート 小学生に人気の筆箱のようにいろんな機能がついているが役立つかどうかはよくわからない

なんで、効果がないと分かっているのに、ここまで人気なの? 実は効果があるんじゃないの? そう思われた方もいるかもしれません。意味がないなら、なぜ証券会社はこんなツールを提供するのか……

マルキールはズバリ「証券会社の都合」と切って捨てています。具体的には以下のような理由があると考えられています。

①株を売買させた方が儲かるから

証券会社は手数料で稼いでいます。バイ・アンド・ホールド戦略みたいに一度買った株をずーっと持ち続ける。みたいな方法を取る客より、頻繁に売買してくれるお客のほうが都合がいいんです。

だから、お客に「〇〇%以下になったら売ったほうが良いですよ」「今が、『買い』ですよ」って伝えるインセンティブが働くんですね。そっちのほうが儲かるから。あと、表示しておくとなんかすごそうだし、お客も喜ぶから。WIN-WINの関係ってやつですね。(まあ客は損するんですけど……)

②人間の直感に反するから

チャートを見ても未来予測ができない。という事実は人間の直感に反します。上がっている株は上がり続けるように見えますし、下がっている株も下がり続けるように見えるし、ある程度落ち着いたら、底値って言ってそこでしばらく推移しそうな気がします。でも、それって全部「そんな気がする」だけの話であって、実際にやってみると違うんですよね。

さらに、ややこしいのが、過去の様子を見るためにはチャートは役立つということ。「なるほど、この時期にこう株価が変わったんだな。やっぱりあたりにでた新製品のインパクトってすごかったんだな」ってことを知るためには役立つんですよ。

ただ、それまでのチャートを見た所で、その次にどう推移するのかはわからない。つまり未来予測はできない。とマルキールは主張しているんですね。

不思議なもんで、そこそこ学位のある人でも簡単に引っかかるから奇妙なものです。物理現象とかなら、グラフの背後にあるメカニズムを予想することは意味のあることでしょうけれども、コイン投げの結果によって描かれたチャートを見てそこから法則を導き出そうとしても、意味がないですよね。そしてランダムウォーク理論によると、株式のチャートというものは本質的に、コイン投げで作成されたチャートと同じものです。

③チャート分析でも、ある程度は儲かるから

個人的には、この問題が大きいと思います。逆説的ですが、チャート分析でもある程度は儲かるんです。もちろんこれは理論が正しいからというより、上がり調子だと適当に買っても儲かるんですよね。

全体の7割の株が上がっていく前提なら、適当に10銘柄ぐらい買っておけば、7銘柄ぐらいは儲かります。

この問題をマルキールは以下のように表現しています。

科学者が新薬の効能をテストする際には、通常、次のような試験が行われる。被験者を二つのグループに分け、一方には試験対象となる薬分を含んだ錠剤を与え、もう一方には何の効能もない気休めの丸薬(例えば、砂糖の錠剤でもよい)を与えておくのである。そして、両者の結果を比較し、薬を処方されたグループのほうが、気休めの丸薬を与えられたグループの経過よりもよかった場合、初めてその薬効が認められる。もし、両方のグループが同一期間で同じようによくなった場合には、その薬効は認められない。それは、たとえ気休めの丸薬で患者が回復した場合でも同じことである。

バートン・マルキール.ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉――株式投資の不滅の真理(日本経済新聞出版)(p.196).日本経済新聞出版社.Kindle版.

つまり、本当に、その手法が儲かるのかどうかってのは比較しないと言い切れませんよね?ということでして、実際にマルキールはバイ・アンド・ホールド戦略(株式をただ持ち続ける)戦略との比較を提案しています。

実際にやってみると、なんと、チャート分析をして売買を繰り返した方がスコアが悪かったんですね。つまり、チャート分析という行為は、余計なことをして足を引っ張っているだけだったのです!

もちろん、期間を区切ればチャート分析の方が儲かる局面はあります。「どんな理論でも、過去の株式のチャートを全て探せば、それが成り立つ瞬間を見つけることができるだろう」とマルキールが指摘する通り、恣意的に探せば、自分の提唱する手法がピタリとハマるケースが見つかるはず。ただ、大事なのは再現性なんですよね。長期間に渡って単純な戦略を超えるパフォーマンスを出せるチャート分析の手法は、残念ながら見つかっていません。

証券マンの仕事は、足を引っ張ること

ランダムウォーク理論」はすなわち、株価の予想は不可能という理論です。チャート分析が成り立たないのはなんとなく解っていただけたとして、ファンダメンタル分析に関しても、マルキールは否定的です。

すでに、記述しましたが、マルキールは証券会社所属の証券マンに、業績の未来予測をさせ、それがどれくらい当たっているか調べました。その結果は、惨憺たるものでした。

クラッグと私の発見は、他の研究者たちによっても確認されている。例えば、ハーバード大学のマイケル・サンドレットとMITのスディール・ミルクリシュムルティは、一年後の利益予想に関する膨大な研究を行っている。この研究では、アナリストによるカバレッジが最も高い約一〇〇〇社にのぼる企業が取り上げられた。 この研究の結果は衝撃的であった。予想と実績との間における過去五年間の年平均誤差は三一・三%にも達したのである。しかも、その誤差は毎年驚くほど一貫した数値を示したのだ。このような結果を見せられると、占星術でさえ科学的に見えてくるではないか。 これらの議論の中には致命的なほど深刻なメッセージが含まれている。すなわち、証券アナリストは、業績予想という基本的機能でさえ満足に果たすことができていないということである。このような予想を盲目的に信じて銘柄選択を行うような投資家は、思いがけない失望に見舞われることになりかねない。

バートン・マルキール.ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉――株式投資の不滅の真理(日本経済新聞出版)(pp.230-231).日本経済新聞出版社.Kindle版.

マルキールの「ランダムウォーク理論」は最初ウォール街から猛反発をくらいました。何しろ、「証券マンは無能どころか、状況を悪化させているだけ」って結論になるわけですからね。何もしないで株を持ち続けていた方が儲かったのに、証券マンが売り買いすることで、余計に資産が減っている。そんなのありえないだろ!とみんなが思ったわけです。

ところが、残念なことに、数字はそれを示唆しています。証券マンがいくら頑張っても、市場平均を超えることは難しい。中には数年、素晴らしいパフォーマンスを見せるファンドもありますが、長年に渡ってそれを維持できるかというとそれも難しい。

マルキールは有名な「ダーツを投げて当たった株と、アナリストが選んだ株で勝負」をやっていますが、この時も、ほとんど対した違いはでなかった。とのことです。つまり、人間がいくら知恵を絞っても、それはランダムに株を選ぶのと対して変わらなかったってことなんです。

最強、インデックス投資

さて、ここで、何度か名前が出てきたインデックス投資について解説させてください。前の段落で「人間が知恵を絞って選んだ銘柄と、ランダムで選んだ株式に本質的な違いはない」ということを書きましたが、インデックス投資はその考えに沿った、とても単純でかつ効果的な投資方法です。具体的に何をするのかというと

全部買う」これだけです。市場に出ている株を全部買います。良さそうな株から、クソみたいな株までとにかく機械的に全部買います。人間の判断は入れません。

するとどうなるか。株価というものは平均を取ると増加傾向にあります。なぜなら、市場は拡大していくから。株式会社は収益を成長に投資し、その規模を拡大させていきます。日本はもう人口減少局面に入りましたが、地球全体の人口は増え続けています。つまり、これからしばらく、消費者も生産者もどんどん増えていくということです。つまり経済は拡大し続ける。

企業は収益を上げ、それを配当の形で株主に還元します。仮に、市場全部の株を所有していると、大体数%の配当が帰ってきます。そして、そのお金でさらに株を買い増すのです。つまり、複利でどんどん資産が増えるのです!

インデックス投資の良いところは、市場をまるごとポケットに入れることが出来ることです。いわば、拡大していく経済というもののミニセットをそっくり手に入れることが出来る。どの株が上がるのかを考える必要はありません。どれかは上がります。また全く新しい会社が上場した場合でも、それに対応できます。次のiPhoneを発売する会社を見抜く必要はありません。株式市場に上場していれば、その会社の株を買っているのですから。

もちろん、下がる企業もあります。しかし、上がる企業もあるので、その動きは相殺され、最終的には平均の値になります。そして、市場平均は今のところプラスになる傾向があるわけですから、かなりの確率で利益を得ることが出来ます。

もちろんですが、市場に出ている株を全部買うのはかなりの金額が必要です。ですので、普通の場合は、ファンドといってお金を出し合うことになります。(理論上は、個人で全株を買っても達成可能です。でもそんな人いるんでしょうかね?)

たとえば上記のような投資信託があるんですが、米国のS&P500という優良企業を集めた銘柄を購入します。こちら、一口をいくらか出して購入する。という仕組みになっていまして、ファンド自体がどんどん大きくなっていくので、一口あたりの値段が上がっていきます。10000円分購入すれば、それが時間とともに10100円とかになるので、それを売却して儲けにする。そんな仕組みになっているんですね。

もっとも、S&P500の時点で銘柄を恣意的に選んでいるじゃん!って批判もできるわけで、米国の市場に出ている全株式とか、さらに全世界(オールカントリー)なんて商品を選ぶのもありです。これは各人の判断が分かれる所。というのも米国企業はイケイケなので、米国だけに絞ったほうがリターンが良い……ようにも思えますし、だからといって、米国経済がポシャった時でも、全世界の株式に投資しておけば安心じゃね?みたいな考え方もあります。ここは各自が考えなければなりません。

インデックス投資には他にも利点があります。まず、あまりにも単純な方法のため、管理の手間が殆どいらないということです。なので、大抵のインデックスファンドの投資信託はかなり安い手数料しか取りません。何しろ、やっていることはみんな同じなので。そうなると、手数料が少しでも安い方に行きますよね。(市場原理が働くってことです!)

人間が判断するファンド(アクティブファンド)なんかに比べて、数分の一の手数料であることはざらです。これが長期になると馬鹿にならない。

また、インデックスファンドは無配当型だと税金面でも有利です。どういうことかと言いますと、所有している株から配当をもらって、それをそのまま再投資しますので、お金が振り込まれることがないんですね。配当をもらうと、それに税金がかかってしまう。

個人的に買っている株から得た配当で株を買うことは、ファンドを使わなくてもできますけど、配当が手元に来た時点で20%の税金が取られるので、これは結構でかい。インデックスファンドなら、その税金を未来に先延ばしすることが出来ます。

といっても、最終的に売却してお金に変える時はやっぱり20%取られるので、税金がかからない。というのはちょっと違いますが……。

このインデックス投資は、単純に見えて、大抵のファンドマネージャー(報酬をもらって顧客の資産を運用する人)に勝つことが知られています。つまりほとんどのファンドマネージャーは、平均以下のパフォーマンスしか出せない。つまり、人間が介入することで、足を引っ張っているのです。

もちろん、中には、インデックスファンドのパフォーマンスを出せるファンドマネージャーもます。ところが、数年かけて追跡してみると、次の年ではそれほどパフォーマンスを出していなかったり……つまり、運の要素が強いんですね。長期間に渡ってインデックスファンドを超えるリターンを出している投資家となるとかなり絞られるそう。

実際、銀行なんかでもらうアクティブファンドの説明を見ると、明らかに手数料が高かったりしますからね。この手数料で勝つのはちょっと難しい。パフォーマンスの数字も良かった数年間だけ抜き出していたり……。銀行はこういうのを紹介するとマージンが貰えたりするのでしょうか?あまり良い商売とは思えませんが……。

インデックスファンドに弱点はないのか?

株式のインデックスファンドは、米国に限っては今のところ上手く推移しています。コロナショックやリーマンショックなどで一時的に下がることはありますが、数年で回復、米国企業の株価は伸び続けています。

ですが、気になるのがやはり我らが日本。私達の日経平均株価に連動するインデックスファンドがあったとしたら、1990~2009年までの失われた20年間の間、どのタイミングで買っても儲かることはなかったそう。

今は大分状況が変わっていますけど、状況によってはそんなしんどいことも起こり得るということは念頭に置いておくと良いでしょう。

さらに、「経済が成長を続ける」という前提もどうなるかわかりません。例えば、人類の数は100億ほどでピークを迎えると予想されており、現在人口が増え続けている国も新生児の数を減らしています。

資源がなくなって経済が停滞する可能性も、戦争で一気に人口が減る可能性もあります。核戦争とかになって「こんなもんケツを拭く紙にもなりゃしねーのによぉ~~!」って展開になる可能性もありますしね。

あと、広く分散するという仕組み上、「負ける確率は少ないが、激しく儲かることもない」というローリスク・ローリターンなのも、渋い顔をする人が出る部分かもしれません。まあ、ここはマルキールに言わせると「今すぐ大儲けしたいなら別の方法を探して欲しい。私はゆっくりと、だがほぼ確実に儲かる方法を教える」割り切っています。

そう考えると弱点はない!……わけではありませんが、少なくとも今までのデータを見る限り、人間があれこれ考えて株を買うよりはこっちのほうがリターンが高いわけで、これを選ぶのが合理的でしょう。

インデックスファンドに勝てるという幻想

お恥ずかしい話ですが、告白させてください。私はインデックスファンドの存在を知った時、「じゃあ全部これでいいじゃん!」となって早速積み立てを始めたわけですが……実は、それ以外にも個別株を買っていました。

勉強になるからやってみたかった。というのもあるんですが、もう一つ、もしかしたら、自分の運用でインデックスファンドを超えられるんじゃないか?という下心もあったんですね。

何しろ、インデックスファンドは、仕組み上、あんまりよろしくない株まで買わなければいけないことになります。厳密にやろうとすると市場のすべての株つまり、ここから逆転する姿が一切見えない東京電力とか、東芝とか、そういう会社の株まで買わないと行けない。もちろん、S&P500なんかは、優良企業を絞っているわけですが、それでも分散させるより、私が見抜いた会社に投資した方が利益は上がりやすいんじゃないか?そう思ったんですね。

そして、ここ5年ばかり、試してみたわけですが……結論から言わせてください。インデックス投資の方が遥かに良いスコアを出していました。

途中コロナ騒動を挟んだじゃないですか。あの時に「コロナはいつかは集結するから、今下がっている航空業界や鉄道といった運輸業の株を買っておけば上がるはず!」と考えて行動し、実際に上がってはいるんですが、元の水準まで上がったかというとかなり微妙なんですね。つまり、あまりにもダメージがデカくて、まだ戻り切っていません。完全に元に戻るのは何年後か?って話でしばらくダメージが続きそうです。

んで、その一方インデックス投資の方は驚くほど上がっています。私がやっているのは米国株(S&P500)のインデックス投資なので、円安になると相対的に価値が上がるという特性も合って単純な比較は難しいんですが、どうも、米国株はAppleやらnvidiaやらイケイケの企業が沢山あるのが牽引力になっているようです。

最もこの話は、検証をしていないので(実際どうしてインデックス投資が上がったのかを調べるためには、ものすごい手間がかかります。ぶっちゃけ私には無理です!)話半分に聞いてほしいんですが

「コロナで下がった運輸株を買う!」より、「AIの発達を見越して、IT企業の株を買う!」の方が遥かに効率が良かったってことなのかな……と漠然と思っています。

人間って怖いもので、後になってから振り返ると、「なーんだ。こんなの簡単じゃん」って思うものです。でも事前にそれが予想できるかというと、難しい。だったら、最初から全部買っておけば、外さない。そんなことがよくわかりました。むしろ、私なんかが予想できる程度の内容はみんなもう予想しているんですよね。

今回の件で幸運だったのは、私がたまたま両方やっていて、比較できたことです。個別株しかやっていなければ「よっしゃ!ちょっと時間かかってるけど、読みが当たったぜ!!俺って天才!!」って思い込んで、そのまま増長していたかもしれません。何しろ、それでも利益はまあまあ出ているわけですから。

でも、それって単純なルールに従ったインデックス投資に負けていたんですよね。

科学は検証の学問だ。という考え方があります。理論があっても、それは本当に正しいのか、本当に成果は出ているのか。ちゃんと検証するプロセスを踏まなければ、本当のところはわからないわけですよね。そして人間は往々にしてここの部分をすっ飛ばす。「利益が出ているから良いじゃん」みたいに考えて、ちゃんと比較検討しない。今回の私のケースだと、倍ぐらいの凄い差が出ていました。

本当に勝っているのか、それとも、もっと別の効率の良い方法があって、自分はそれに負けているのか。ちゃんと調べないと痛い目をみると思うんです。

そして、その結果がどれほど自分にとって認めるのがつらくても、ちゃんと認めること。負けたことを認めずに「今回は状況が特殊だったから……」みたいなことで自分を納得させていると、負けることが出来ない人になってしまいます。これは本当にエグい。自分の負けを認められないままジワジワとダメージを喰らい続けてしまう。俺は勝ってる!と主張しながらパチンコにお金をつぎ込む哀れな人になってしまいます。

なので、これから個別株に手を出そうとするあなたも、ベンチマークの意味も込めてインデックス投資を少し買っておくといいかもしれません。

さて、長くなってきましたので、ここから先は本当に最後、「これから株をやるべきか?」でお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?