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2021年は、めっちゃ転がりたいのです

新年のごあいさつ

2021年、あけましておめでとうございます。コロナ禍のつづく中で皆様お変わりないでしょうか。ご挨拶が遅くなり恐縮です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

ちょっと別記事(「はたらく、ということ」)をフライング投稿してしまったのですが、この記事をもってnote書き初めとさせていただきます。

今年の目標はずばり!「めっちゃ転がりたい」をテーマに1年元気に過ごしたいと思っています。いきなりぶっとんだテーマですみません。いえ、酔ってはいません。どういうことか?は以下でご説明しますね。

年末に、時間をかなり費やして外山滋比古『俳句的』(1998年、みすず書房)を読みました。ちょっとした家事の空き時間(例えば、子どもの宿題を見ながら、とかお風呂のお湯をためている時間)に読んだもので、読み終わるのにふた月くらいもかかりました。内容はそれほど難しいということもないですし、集中的に読めばわりとすぐ読み切ってしまうと思います。ボリュームも176ページ程度です(ハードカバー単行本)。

『俳句的』から得たもの


句作の参考になることも多々書かれていましたが、執筆者自身説明しているように「俳句とはいかなる性格の文芸であるか」についての考察がメインとなっています。ただ、読んでいる時期が時期(年末)だけに、私個人の欲求としては「新年にめざすべき道」が書かれていないか、あるいはその示唆でもいいんだが……という思いで読んでいたわけです。

で、ありました。その答えは161ページ、「旅をする石」と題した加藤楸邨について触れられた文章がそうです。加藤楸邨を「転がる石」だという外山滋比古。一部分を抜粋しますと、こうです。

”転がる石”楸邨は、自分にとってもっともやさしいところへだけ転がって行くのではない。あえて異質なものを求める。それは転がるというよりも、やはり、旅をすると言った方が当っている。”旅をする石”であろう。(外山滋比古『俳句的』より)

……これだ!2021年は、「転がる」をテーマにしよう。そうして異質なものにも出会い、さまざまな事物を知り、見聞を広めよう。その大風呂敷いっぱいに広がったものを集めて調和させてみよう!物理的な旅をするには金も時間も足りませんが、精神的な旅であれば俳人の得意とするところです。今年はめっちゃ転がるぞー!!

というように、外山滋比古の『俳句的』によって、あたらしい年を迎えるにまさにぴったりの言質を得た気になり意気揚々となったのでした。

この本から学んだことは、他にも「詩歌というのは、声でうたい、耳できくのが基本である。」「切れ字はやはり句読法ではなくて修辞法として考えられるべきである」など示唆に富んでいます。おかげで俳句を詠んだときに音韻に配意する癖がつきました(単純にそれで俳句が上達するわけではありませんが)し、これまで切れ字を入れずに逃げていたところも敢えて切る!という選択を意識するようになりました。


もう一つ、本をご紹介します。こちらは年明けの元旦から2日にかけて読んだ本でして、西智弘『だから、もう眠らせてほしい』(2020年、晶文社)です。

『だから、もう眠らせてほしい』から感じたこと

この本を購入したきっかけは、2020年7月のこの報道から。8月に購入したけれどすでに「2刷」でした。やはり2020年注目のテーマの1つだったのでしょうね。

それ以前にも、安楽死については若干の関心があり過去ツイートを遡ったところいくつか当時ツイートしたものがありました。

私は医療従事者ではないし、死とすぐ隣り合わせという実感はすくなくとも日常的にはないのだけれど、安楽死を全否定する考えはもともとなくて、1つの終末期の選択肢としてあったら(自分は選ぶかもしれないという意味で)良いのでは……という考え方でした(身内に医療従事者がいるので、その影響を受けている、ということは多分にあり得ます)。

しかし、この本を読むとその思いを現在の医療で実現することがいかに困難かという現実にぶち当たることになります。様々な議論を読むにつれ、まずいぞ、やばいぞという戦慄に包まれてゆきました。なにがまずい、やばいってそれまでの自分の考えていたイメージの何と浅はかなことか。もっといえば、世間で、とりわけネットの中で交わされるやりとりときたら。

それでなくても偏見、同調圧力、忖度のまん延している社会の中で、いかに適切(と思しき)法制度を構築したところで、果たして適切に運用されていくのかという点。法学部卒としても非常に難しいと考えざるを得ないなと思った次第です。死刑制度にしてもそう。死という、不可逆的なものが厳然としてあるがゆえに「やり直そう」ができない世界。そこに人が関わるのは、はやり神の領域に踏み込むようでだれしもが怯むに違いないと思えてきます。

この本を読んでよかった、と思える点は、巻末に「社会的処方研究所オンラインコミュニティ」の紹介が載っていたこと。社会的処方については文中でも何度か登場したと思いますが、読後、もっと知りたいという興味が沸いてきています。また、緩和ケアやホスピスといった場面ではさまざまなセラピストが活躍をしていると思うのだけど、そういう面で俳句や短歌の活かせる余地がないのか、といった点は今後研究してみたいと思いました。

むすびに

というわけで、いつもの年頭所感とちがい具体目標は挙げていないのですが、今年1年の計について思いを巡らせたお正月となりました。最後になりましたが、皆様の令和3年もどうかよきめぐり合わせがありますよう、ご健勝・ご活躍をお祈り申し上げます。寒さ厳しき折、またコロナ禍が続いておりますのでご自愛ください。

#note書き初め

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