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RPAについて会計士協会に意見を送った(1:幻滅期のRPA)

幻滅期のRPAと公開草案

ガートナーによると、新しいテクノロジは黎明期→「過度な期待」のピーク期→幻滅期→その後安定へ、というサイクルを辿るようです。
これをRPAに当てはめてみると、
~2016年:黎明期
2017年:「過度な期待」を駆け上る
2018年前半~:幻滅期
と言うのが個人的な感覚です。

https://www.gartner.co.jp/press/pdf/pr20181011-01.pdf

2013~16年の一部金融機関を中心に導入していた黎明期から、RPAというワードが働き方改革の流れに乗って一気に広まったのが2017年。2017年後半には夕方のワイドショーニュースでも取り上げられていました。まさにこの辺りが「過度な期待」が盛り上がってきた時期です。

一方で2018年中盤あたりから「RPAプロジェクト炎上の理由」や「RPA導入での落とし穴」のようなニュース記事が増えてきました。ぜひ期間を区切って(2017年、2018年前半、後半)RPAでググってみてください。ちょっと手綱を引くような記事が目立つようになっています。つまり、2017年までに導入した会社で上手くいかないケースが見えてきて2018年前半から幻滅期に入り、2018年中盤からそういう話が出回ってきたということでしょう。

このような新しいテクノロジへの期待→幻滅のサイクルで何が起きているかと考えれば、
(1)思っていたほどベネフィットが取れない
(2)思っていたよりコストがかかる
の2点に集約できるでしょう。上記に挙げた例は(1)に関する話が増えてきたということ。

これに対し、直近では(2)の話も出てきています。例えば11月にアップされたこの記事。
「RPA導入でコンプライアンス違反になる恐れ、必要な対策」
(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01267/)
中身は「RPAでもITGC/ITACに注意する必要がありますよ」という話です。まさに(2)。

そしてRPAユーザーの目線から考えると、会計士協会の研究報告も(2)の1つとして位置付けられるでしょう。すると、研究報告がRPAに対して統制厳しめ・コスト高の方向性に重点を置くと、少なくとも短期的にはRPAへの幻滅を強める結果になります。
*後々書きますが、上記記事は協会草案の内容面でもダイレクトにリンクしていると思います。(根拠レスの勘ですが)

 「でも公認会計士協会がしっかりリスク面・統制面を考慮した報告を出すのは当然だし、RPAの定着にも中長期的に寄与するのでは?」
まさにその通り。そして「草案で書かれていること」は良く出来ています。異論なし。

ただし、「書くべきことを網羅しているか」については疑問。私としては、現状のRPAの利用状況について半分くらいしか射程に入れていない、と考えています。
具体的には、RPAロボの内側に統制(ITGC/ITAC)を組み込むことが前提となっており、RPAロボの外側から統制をかける手法への考察が抜け落ちている。

次回以降で説明するように、RPAソフトウェアは機能面でもバラバラ、更にそれを使うユーザー側でも使い方はバラバラというのが現状です。機能と使い方がバラバラであれば、当然統制手法も、統制のレベル感も変わってくる。

このように、多様な会社における、多様な使い方をされる、多様なRPAソフトウェアという日本での現状に対して包括的な考察をしていなければ、「問答無用でRPAは統制ガッチガチにかけます。じゃなきゃJ-SOXとか怖いじゃん。」と多くの会社が受け取りかねない。

その結果、幻滅が行き過ぎて安定期までたどり着かないかも知れない。ちょっと極論という自覚はありますが、そんな危機感を持っています。



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