マガジンのカバー画像

散文詩

10
運営しているクリエイター

#現代詩

たびだちのうた

たびだちのうた

そんなに急いでどこへ行くっていうんだい?
誰も彼も「あいつよりはマシになろう」と精一杯
嫌だねぇ、窮屈な社会
誰かが言ってた「ホワイト革命」
コンプライアンスは漂白剤
でも美のイデアはどこにもない
虚しいねぇ、憂鬱な未来
先が見えなきゃ足元を見てればいい

オレは降りるよ、こんな出来レース
やればできるなんて嘘っぱち
射幸心を捨てて旅に出よう

どこか遠く……遠くへ
いつか強く……強くなるために

もっとみる
SHABRINA NO HAVEN

SHABRINA NO HAVEN

星の隙間で踊ってるだけ
つま先立ちで
月のはしっこで泣いてるのは誰?
行くあてもなく
帰る場所もなく

生きているのに疲れたんだよ
うそぶく君に 愛のバックドロップを

愛だ恋だ天使だ運命だ
そんなものはくそったれのイデア
世界は変わらない

星の隙間で踊ってるだけ
ワルツのリズムで
月のはしっこで泣いてるのは誰?
行くあてもなく
帰る場所もなく

勇気をくれよ イマジネーション
素直な気持ちで

もっとみる
花咲く旅路

花咲く旅路

薄緑色のレーザービームの上を歩いている

周りは靄がかかっていて

どこまで続いているのかわからない

目の前に

背広姿の一つ目の男が立っていた

「よう、あんた、何者だい?」

それはこっちが訊きたいよ

男と並んで歩く

いろいろな話をしながら

「学校へ行くというのは黒を白と言うための訓練さ」

なぜそれを俺に?

さあねと男は言った

しばらく歩くと

赤い炎に包まれた女が立っていた

もっとみる
ハッピー・ライフ

ハッピー・ライフ

ブラームスの4番を聴きながら

カレーを煮込んでいる

開いている窓からは秋がやってくる

ハートランドを飲みながら

カレーを煮込んでいる

素晴らしい時間だ

インターホンが鳴る

「お宅のネット回線見直しませんか?」

「結構です」

キッチンへ行き

カレーの具合を確かめる

そして

グラスのビールを飲む

足を組んで

読みかけの短編小説を開く

インターホンが鳴る

「三ヶ月だけ新聞

もっとみる
幸福な食卓

幸福な食卓

将来はきっと温かい

ごはんがおれを待っていて

赤ワインにビーフシチューなんて

そんなことを思ったりもした

こんなんでいいんだろうか

そんなわけないじゃんか

でもどうしようもない

将来はきっと可愛い

子どもがおれを待っていて

「今日は一緒に寝ようね」なんて

そんなことを思ったりもした

こんなんでいいんだろうか

そんなわけないじゃんか

でもどうしようもない

未来はきっと

もっとみる