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私の見ている景色は最低で最高で、それでいてきっと美しい。


世の中は不条理で理不尽で不平等で汚い。

そんな世の中で生きている自分も、また、汚い。

どうしても関東に住みたくて一か月前就職を機に上京した。

関東の街は思ったよりも都会じゃなくて、思ったよりも小さくて窮屈な町だった。

高校生の時、憧れだった先輩がいた。その人はカッコ良くて、何でもできて、それでいて少し天然で、舞台の上に立つ先輩が大好きだった。憧れだった。私も先輩みたいになりたいと思った。でも、舞台に立たない先輩は思ったよりカッコよくなくて、性格はクズみたいだった。

憧れの人を知りたいと思うことは大切だけれど、期待しないほうがいい。そう思っていたが、それは人だけではなかった。

私の住む関東の町は、想像以上に田舎で、それでも人は多くて、一人になれる時間は家にいるときだけ。一歩外に出れば人・人・人・車・人

何に憧れて都会に来たのか分からなくなってきた上京して1か月。

旅行で関東に来ていた時のほうが楽しかった気がする。もしかしたらこの環境が当たり前になってしまっているのかもしれない。

実家に住んでいたころは、駅まで一時間に一本しかない、片道410円の人の少ないバスに乗って駅に向かっていた。不便だったけど、でもその時間が好きだった。

というか、今思えば関東に来たのなんて人生で状況を合わせて3回しかない。何に憧れたのかも忘れた。

一人で泣きながら歩くこともできない。一人で電車に乗ることもない。電車に乗れば必ず全ての座席に人が座っている。満員電車。

人生で一度は経験したい一人暮らしと、家族から少しでも遠くに、離れるために上京したが、憧れていた分、現実とのギャップのせいで嫌な部分がハッキリとしてきて、今となっては別にする必要なかったんじゃないかなと思ってしまう。都会に憧れたが、嫌いになりそうだな、と思った。

夜になると都会の街はネオンで溢れている。酔いつぶれている人、仕事帰りのサラリーマン、幸せそうなカップル、泣き出しそうな新入社員、自分の住んでいたところでは夜は暗く、人も少なかった。これが都会の夜かぁ、なんてことを思いながら友人と夜道を歩いていた時、『夜が来ない街、それが都会だよ』と、言われた。私が家族から逃げて上京したように、ここにいる人たちも様々な思いを持ってここにいるのだろう。そう思うと少し、ほんの少し、都会を好きになれた気がした。

理不尽なことで怒られる毎日も、落ち込む毎日も、この、夜の景色をみたら自分の悩んでることなんてちっぽけな気がして、明日も強く生きよう。そう思えた。

最低だと思ったこの町も、最高だと思ったこの街もどちらもきっと、美しい。



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