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中殿筋のトレーニングでパフォーマンスアップへつなげる方法

【中殿筋のトレーニングでパフォーマンスアップへつなげる方法】

中殿筋ってめちゃくちゃ大事な筋肉ですよね。

股関節が痛くて、、、中殿筋
膝が痛くて、、、中殿筋
足関節の捻挫で、、、中殿筋

もちろん、疾患によって鍛えるところは変えなければいけないと思いますが、膝や股関節、腰の参考書を読んでも必ずと言っていいほど、中殿筋は出てきます。

これだけ重要だと考えられている中殿筋ですが、実際の現場では弱化している選手が非常に多く見られます。中殿筋の弱化は、股関節・体幹の安定性低下、膝の傷害リスク増加、パフォーマンスの低下、などアスリートにとって致命的なことばかりです。

また、感覚的にはレベルの高い選手であっても中殿筋がしっかりと働いているかというとそうではありません。私が担当させていただいている中学3年生のサッカー選手。一人は内転筋の痛み、一人は腰椎分離症を引き起こしました。筋のタイトネスはそこまで問題ありませんでしたが、中殿筋の筋力低下が著明に出ていました。因みにこの二人は全国大会に出場するチームのレギュラーとして活躍している選手です。そんな選手でさえ中殿筋が働いていないことが多いです。

このように、中殿筋が弱化しているとマイナス面がかなり多いですが、逆を言えば鍛えればケガ予防、パフォーマンス向上へつなげることができます。

そんな中殿筋の解剖や役割などを紐解いていきたいと思います。


まずは、中殿筋の解剖について見ていきましょう。

起始:腸骨の殿筋面
停止:大腿骨の大転子の外側面
機能:股関節の外転(筋全体)、前部繊維:屈曲・内旋、後部線維:伸展・外旋
神経支配:上殿神経(L4~S1)

中殿筋は小殿筋の浅層、大殿筋の深層に位置する股関節外転をメインで行う筋肉です。
そして、股関節外転筋群(大殿筋上部、小殿筋、大腿筋膜張筋)の中でも最大の股関節外転モーメントアームを持っています

中殿筋の主な役割としては関節を求心位に保つことが代表的だと思います。安定性ですね。その走行を見れば骨頭と臼蓋の安定性を向上させることがよくわかると思います。

中殿筋の弱化は腰や膝、股関節の痛みに繋がることが言われており、ある研究では中殿筋の弱化を認める症例は、中殿筋の筋活動が高いグループと比べるとケガのリスクが高くなることが言われています。

ケガのリスクが高くなるだけでなく、パフォーマンスの低下も起こると言われています。その為、ケガを繰り返すアスリートは中殿筋の強化をすることで障害予防、パフォーマンスアップ、股関節の安定化など競技力を向上するうえで様々なメリットが得られることになります。

では、ここで一つの疑問が生まれると思います。
それは、

「なんで中殿筋が弱くなるんですか?」

この答えはアライメント不良によるものが大きいと考えています。

吉岡らの骨盤前傾、中間位、後傾位の肢位の違いによる股関節外転筋の筋活動を調べた報告によると、骨盤後傾は前傾と中間に比べて股関節外転筋の筋活動が有意に低下すると報告しています。

吉田らは5分間の座位姿勢から立位姿勢と後傾座位姿勢からの立位姿勢骨盤傾斜角の変化の違いを研究した報告によると、後傾座位姿勢後の立位姿勢骨盤傾斜角は後傾したと報告しました。つまり、5分間後傾で座った後に立つと後傾が強くなることを説明しています。

Sway back postureのような場合も骨盤後傾又は前傾、骨盤前方シフトしていることが多く、この場合も殿筋の筋出力低下が見られることがあります。

これらすべてに共通することは骨盤が後傾していることです。

骨盤が後傾することで大殿筋や中殿筋は短縮を起こし股関節外転時の筋出力低下へと繋がってしまいます。それだけでなく、骨盤が後傾した場合は上半身質量中心が後方へ変位しやすくなります。そうすると、上半身質量中心と股関節の距離が長くなります。(モーメントアームが長くなる)これを保つために股関節屈曲筋群が働くのでさらに殿筋は機能しづらい状態となってしまいます。

その為、中殿筋を強化して骨盤後傾を改善することが必要です。


中殿筋の筋活動が高くなるエクササイズについて調べたシステマティックレビューによるとヒップアブダクション、立位チューブアブダクション、ラテラルキープは高い筋活動を示しました。これらについて説明していきます。

・ヒップアブダクション
側臥位になり、下の膝は屈曲し、上の膝は伸展します。股関節の外転と内転を繰り返し行い中殿筋の収縮を確認します。ここで注意するポイントは股関節の屈曲が入らないことです。先ほど、骨盤が後傾すると外転筋の筋活動が低下するとお伝えしました。股関節の屈曲が入ることで骨盤は後傾し中殿筋の筋出力が低下してしまいます。股関節は0度~やや伸展で内外転を繰り返し行いましょう。

・立位チューブアブダクション
このエクササイズが一番高い筋活動を示しました。足首にチューブを巻き股関節の内外転を行います。ここでの注意点は骨盤が過剰に挙上しないことです。あくまでも、股関節の運動なので骨盤の挙上が入ってしまうと腰方形筋にも刺激が入ってしまうのでここは注意して行いましょう。

・ラテラルキープ
側臥位で前腕を着き、肩~足まで一直線にして状態を持ち上げます。このままキープを行います。

これらは文献上で比較的高い筋活動があったエクササイズになります。
是非一度挑戦してみてください。


ここからは私見も入ってきますが、普段指導しているエクササイズをご紹介していきます。

・ヒップヒッチ
聞いたことがない方も多いかもしれません。ステップ代を使って行うエクササイズになります。片足をステップ代の上に置き、もう片方の足は浮かしておきます。そのまま、浮かしている方の骨盤を挙上、下制を繰り返していきます。そうすると支持脚側の中殿筋に刺激が入ってくるのが確認できると思います。このエクササイズはリハビリ段階からでも導入できるので現場ではかなり活用しています。

・シングルレッグスクワット
片足で行うスクワットです。このエクササイズも高い筋活動が生じることが分かっています。片足で行うので、中殿筋の弱化があると股関節が内転、内旋方向へ変位します。それをとめるために中殿筋(特に後部線維)が活性化されます。実際にやってみるとかなりきついことが分かると思います。

・サイドジャンプ
横へのジャンプを行います。着地の際がとても重要で股関節屈曲をしっかりと取ります。股関節が伸展した状態での着地は中殿筋のエキセントリックが働きません。その為、股関節を屈曲し、中殿筋のエキセントリックを確認したうえで繰り返し行っていきましょう。


<まとめ>
・中殿筋を強化することでケガ予防・パフォーマンスアップへつなげることができる
・骨盤の後傾は中殿筋弱化の原因になりえる
・エクササイズは中殿筋の収縮を確認しながら行いましょう


参考文献

・土田 柴田:中殿筋線維束の肉眼解剖

・吉岡 南角 他:骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響

・吉田 工藤 他:短時間骨盤後傾座位が立位姿勢及び片脚立位時骨盤側方傾斜に及ぼす影響

・AN EXAMINATION OF THE GLUTEAL MUSCLE ACTIVITY ASSOCIATED WITH DYNAMIC HIP ABDUCTION AND HIP EXTERNAL ROTATION EXERCISE: A SYSTEMATIC REVIEW

・Strengthening the Gluteus Medius Using Various Bodyweight and Resistance Exercises

・プロメテウス解剖学

・嶋田 有馬:筋骨格系のキネシオロジー

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