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Jリーグの背番号フォント統一の合理性と、サポーターとしての複雑な感情

Jリーグがユニフォームに使用する背番号と選手名のフォントを統一すると発表しました。スマートフォンやタブレット端末での視聴が増えてきているのを背景に、視認性を高めるのが狙いだそうです。これによってJリーグ全体の視聴環境の改善を目指すのだそうです。

私が最初にこの話題を目にしたときの感情は「怒り」でした。それは私が応援している東京ヴェルディはクラブ統一のフォントを導入したばかりだからです。リブランディングの一環として、タイポグラフィ・デザイン界の巨匠と言われるネヴィル・ブロディ氏に依頼して作成したものでした。おそらく結構な投資がなされていると思います。

その効果は例えば2年間でユニフォームの売上が3倍に増えたという数字にも現れています。サポーターの視点としては、トップダウンのお達しによって順調なプロジェクトの出鼻を挫かれた印象を受けました。

一方で視認性という観点ではJリーグの主張を認めざるをえません。ヴェルディのユニフォームの場合は下地が深めの緑でありながら、文字色は明るい金色です。光の加減によっては見にくくなりますし、濃淡差も少ないのでおそらく色弱者には視認できないと思います。フォントに関しては一見して読めない文字もあります。例えば「R」は小文字の「r」を模した一本線です。初めて読む単語にこの文字が出てきたら読めるかどうか分かりません。

他のクラブでも、凝った見た目にした結果として視認性が悪くなっている例はあります。重箱の隅をつつくような話にもなるので省略します。

背番号や選手名表記はあくまでも競技のための記号です。審判や観客が選手を判別するためにあります。その機能性を高めたいJリーグの狙いは十分に理解できます。ユニフォームの売上や格好良さを軸に話すべき話題ではありません。

視認性が問題なのであれば、シーズン前にそれを判定すればよいではないかという気もします。しかし、これもまた結構な手間です。Jリーグに所属する全クラブのユニフォームのフォントを厳密に確認して差し戻してデザインし直すような余裕は、短いシーズンオフには無いでしょう。それであれば統一したフォントにしてしまうのが効率的です。

東京ヴェルディや清水エスパルスなど、独自ブランドに紐付いたフォントを採用しているクラブもあります。そのフォントを作り直せというのも無茶な話です。Jリーグ側で完成されたフォントを用意してもらった方が諦めやすくて楽ではありそうです。

Jリーグは合理的で生産性の高い判断をしたと思います。一方で個人的な感情としては納得できない気持ちが残っています。

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