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イルカが離れていく!何でだ!3(経験者の失敗公開バージョン)

迷走中のトレーナーの皆様、うまくいかない時には、他人の失敗で元気になりましょう。

という事で、皆様のモチベーションアップの為に、私の失敗を紹介します。今思えば、「そりゃ失敗するでしょ」的なものばかりですが、当時は真剣に考えて良い方法だと思って行っていました。試す前にうまくいかないと言われたら「そんなはず無い」と反論し、前にやった事あるし効果も無かったと言われたら「アナタとはやり方が違う」と屁理屈を言う、最高に面倒くさいやつ、と思われていた・・・のかな?自分では様々な意見や考え方を認め、状況に合わせ変化出来る柔軟性があると思っていますが、頑固なのでしょうか。当時、私に失敗するチャンスをくれた心優しい周囲の皆様にあらためて感謝いたします。

試練を乗り越えた数だけ、己の力になる!
それでは行きましょう!

1、イルカを呼ぶ作戦
イルカが離れたら、水面をタップ(手、ターゲット、バケツ、餌)、手を振るなど目立つアクションをしてイルカを呼び、それでも戻ってこないときは、イルカの近くまで行って、元の位置まで連れ戻します。イルカが戻ってきたらトレーニング続行。
この方法では、離れの頻度は下がらず失敗。しかもやればやるほどイルカが戻ってこなくなるというおまけつきです。
「イルカに戻ってきてほしいんでしょ?」
「だったら、イルカが戻ってきたら強化だよね」
なるほど、先輩もたまには的確なアドバイスしますね、おっしゃる通りでございます。
イルカを呼ぶ⇒戻る(やってほしい事なのでOK)⇒という事は強化必要です。
あれ?
イルカを呼ぶってサイン?
しかも条件性強化子?
という事は、イルカが離れたときに呼んでしまったら、離れたことを強化することになるのかな?離れた事を強化したら、離れの頻度は下がらないですねー。しかも、イルカが戻って来た時に強化していなかったので、戻ってくる行動については消去の手続きをしていました、ガッカリ。でも理解しました、次の作戦につなげましょう。
当時の結論1、離れたイルカを呼んだらダメ(なのかも)。

2、タイムアウト作戦
イルカが離れたら強化したらダメ、なのでタイムアウトです(ペナルティとしてトレーナーがバケツを持って後ろに下がる)。イルカが戻ってきたらトレーニング再開。
4パターンを試してみました。
(離れるなら餌をあげないよー!という意地悪なオーラを出しながら)
 ①イルカが離れたらタイムアウト。
 ②イルカが離れそうになったら(ちょっとでも頭が動いたら)タイムアウト。
 ③タイムアウトの時間を長くしてみる。
 ④イルカが離れたら以降トレーニングを中止(次のトレーニングまで餌抜きだ!)。
全部失敗!
最初は少し効果があるかなー、といった感じがあったんですが、継続するとイルカの離れる頻度は元通り。④に関しては一旦離れたらなかなか戻らなくなるという副作用あり、しかもそもそもショーやプログラムの本番では使えないという致命的欠陥付きで全くダメな作戦でした。
①から④にかけて、だんだんペナルティが大きくなっていますね。
当時の結論2、イルカの離れにタイムアウト(ペナルティ)は効果ない(ような気がする)。

3、イルカを離さない作戦
イルカが離れた後では、何をやっても離れを強化する可能性がある。であれば、離れてしまった後の事は考えてもしょうがない、イルカを離さない事に全力を尽くそう!なんて前向きな作戦なのでしょう、これはきっと成功します。
とにかくイルカを離さない、イルカを離さない為に使った手段
(もちろん全身から絶対離れるなオーラをビームのように出しまくりです)
 ①簡単な種目のサインを出す(吻タッチ、両手の胸鰭タッチなど)
 ②バケツに手を入れる
 ③魚を見せる
 ④トレーナーが移動する
確かにその瞬間は離れないんですが、餌を食べた後やちょっと難しい種目のサインで離れるようになりました。結局全体的に見ると、離れの頻度は変わらず。
あれ?なんか作戦1と似ている気がする、タイミングが早くなっただけで、同じことをしていたのか?
当時の結論3、イルカの離れを無理やり止めようとしても無理。

イルカが離れなくなるような、とっておきの方法なんかありませーん。
イルカと人、どちらが力が強いですか?もちろんイルカです。
イルカを思い通りに動かそうなんて、もともと無理な話なんです。
イルカの皆さん、自分達のやりたいように好きな事をしてください。

あれ?そもそも、イルカ達は何がしたいんだ?
離れるということから、「やりたくない」という意思は感じられる。
逆にやりたいことを聞く方法は無いだろうか。

例えば
 新しい道具をイルカに見せる⇒トレーナーからイルカへの質問
  「この物体、どう感じますか」
 イルカが全速力で逃げた⇒イルカからの回答
  「怖いんですけど」

イルカに聞くってこういう事か?イルカと会話するってこういう事なのか?
この考え方広げると、トレーナーがやること全てがイルカに対する質問で、イルカの反応や行動全てがイルカからの回答という事なのか。
という事は、今までもイルカからの回答や意思表示が沢山あったけど、自分が見落としていただけなのか?今まで見落としていたのであれば、察知能力の精度をあげる必要がありそうだ。イルカの行動をもっと細かく分割して、時間のスケールも0.1秒単位くらいまで拡大して、イルカの意思を見落とさないように。
イルカから、楽しいとか面白いという回答(離れない、何度もチャレンジ出来る、サイン反応が良いなど)が欲しいので、何がお好みなのか、いろいろ試しながら探してみよう。
それと強制するのはやめてみよう、離れたければどうぞご自由に!

*実は気持ちを変えただけで、結構効果があったように感じます(当社比)。多分気持ちが強すぎて全身に力が入り前傾姿勢、これではイルカを警戒させますね。筋肉の緊張は、無防備のちょっと手前まで抜くのが一番良さそうです、無防備だと咄嗟の時に動けないですね。

これらを踏まえたうえで、イルカの出来る範囲の中でイルカの良いところや、やってほしい事に近い事を沢山見つけて褒める。いや違う、褒めるってなんか上から目線ですね。正確にはイルカにとってのメリットを提供する、個人的には「ありがとう」とか「感謝」の方がしっくり来ます。

どうしてもやってほしい事とイルカがやりたくないことがぶつかったときには、交渉しながら妥協点を見つけるしかないですね。ハズバンダリーは特に妥協点探しです。ちなみに、今までどうしても採血出来ない個体はいませんでしたけど。

こんな事を考えながら、試行錯誤を繰り返し、今もイルカが離れていく、すでに52歳。
ガッカリです。

イルカの離れを防ぐ方法(当たり前の事しか書けませんでした)
①イルカが毎日、満足で充実した生活を過ごすことが出来る環境を整える
 地味にすごい大切、これが離れの根本的原因の事が多い。個体関係、広さ、水温、水質、
 健康状態、給餌量、体重、餌料など見直してみましょう。
②イルカにとって魅力的なトレーニング、ショー、プログラムを準備する
③イルカの意思を尊重しイルカの好きな事を探す(イルカと会話)
④イルカの出来る範囲で良い所を探し強化する
⑤どうしてもイヤと言われたら、妥協点を探す
⑥強制しない
⑦罰は効果無し
⑧自分の心と体の健康維持に務める
 不安定だとイルカの良いところを見落とします、イルカの意思を見誤ります。

イルカの離れは、トレーニング方法が原因の場合、考え方を変えるだけでも劇的に改善されることがあります。一方で、様々な要因が複雑に絡んで離れが発生している場合、特に問題が長期間に及んでいる場合は解決にも時間がかかります。答えは個体や状況ごとに違います、自分で考え探す必要があります。劇的な改善は難しくても、様々な試みを行うことは、何一つ無駄にはならないと思います。苦労する価値はあります。ちょっと大変ですが、是非チャレンジしてください。

あ、タイムアウトについては、また別の機会で。

続く・・・。

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