第22回 『オデュッセイア』&『ハムレット』から『ユリシーズ』へ。『テレマコス』総括
オデュッセイア』第1、2歌
紀元前1700年ぐらい前のギリシャ。
イタケー島にあるオデュッセウス王の宮殿。トロイア戦争後、主人が消息不明のまま早二十年。今でも王の帰還を信じる妻ペネロペイアと一人息子のテレマコスがいた。宮殿には、王が留守なこといいことに、近所のチンピラ軍師アンティノオスやヤクザの豪族連中が、ペネロペイアの求婚を理由に訪問、ついでに蔵のご馳走や酒を食い荒らし日夜やりたい放題、えらいことになっていた。
王の息子テレマコスもそれゃあ我慢の限界もとうに過ぎているが、何にせよ、そのチンピラどもも皆揃いも揃って名のある豪族であるから、迂闊なことはできない。…
でも悔しい。
そんなある日、見知らぬ客人が訪問。どう見ても例のチンピラ豪族とは違い、真っ当の人。自分はタボスってとこの王メントスだと言う。
「びっくりするでしょうが、あなたの父上オデュッセウスは生きています」「嘘っ!? やった、これであのクソどもを追い出せる!」
で、居ても立っても居られないテレ君は、世話人メントルをお供につけ、父親探しの旅に出る…。
『ハムレット』第一幕
デンマーク、エルシノア城。
最近国王の急死を受け、絶望の淵にいるハムレット王子。ある日彼の前に、王の幽霊が現れる。「わしは殺されたのじゃ。犯人は我が弟クローディアス、わしに代わって今国王となっている。しかも我妻ガートルード姫もその腕に…」
「なんだって!? グォー、狂おしい我が運命!」
”お、俺は生きるべきか、死ぬべきか”
『ユリシーズ』第一逸話
1904年6月16日、ダブリン湾沿いに佇むマーテロ塔。
時刻は午前8時、屋上に出て、ダブリン湾に浮かぶ朝日を見てるスティーブン・ディダラス(前作『若い芸術家の肖像』のラストにて、パリへ向け意気揚々と旅立ったのが1903年4月。それあら1年も経たぬ間に故郷の地にとんぼ返り。手製の翼で、羽ばたいたダイダロスというより墜落した息子イカロスのように)、と友人マラカイ・マリガン。スティーブンは、夢である作家への道は頓挫中、最近は母親の臨終の場で何もしてあげられず、失意と罪の意識に苦しめられている。友人のはずのマリガンは、スティーブンの気持ちを汲み取りもせず、時々中傷したり、顎で使ったり。しばらくしておばさんがミルクを売りにやって来て、スティーブンは彼女に、アイルランドに古くから伝わる伝承「貧しき老婆」の面影を見る。相変わらずマリガンは腹立たしいだけ。
スティーブンは仕事に向かう。
”ここへは帰らない”、そう呟く。
…続く。
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