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第23回 『オデュッセイア』から第二逸話『ネストル』へ

『オデュッセイア』第3歌


  女神アテネに導かれ、父探しの航海に出たテレマコス。一人じゃありません。
世話人メントル、たまにそいつの中に女神アテネが入り込み、テレマコスに助言を与えます。
 で、まず向かった先はピロス島。そこにはネストルがいる。ネストルは、先のトロイア戦争での、父オデュッセウスの戦友。でも彼の方はとっくに帰国している。
 
 城につくと、二人はいきなり歓迎され豪華な食事を提供される。そして腹一杯になったところで家主ネストルが訪ねる。

「旅のお方、ところであなたは誰ですか?」
 えぇー! あんた知らなかったの⁉︎ 

「僕はオデュッセウスの息子、名をテレマコスと言います。あなたと共に先の大戦で戦った、戦友オデュッセウスの」
「そうでしたか! いやぁ、確かにあなたのお姿から、絶対高貴な家柄の方とは察しておりましたが。あのオデュッセウスののご子息とは〜」
 ちなみに物語の中で、「〜の息子アガメムノンやら、〜の息子アキレウスやら、〜の息子テレマコスやら」、やたら息子息子言う。これは家系の重要性を指します。要するにネストルは、このどこの誰かもわからない青年の容姿に、直ちに「この子はきっと由緒ある家柄の出に違いない」と判断したらしい。封建社会ドンピシャのこの時代には、たかが見た目で即信用なんて、当たり前のことだったのかな。
なんと都合がいいと言うか、現代なら思いっきり差別的…。



 さて、 
でテレマコス、早速聞いてみる「父の消息、知りませんか?」。
「え? あいつまだ帰ってない? …いやぁ〜、どうしたのかなあ?」
 ネストルが言うには、戦は勝利に終わったが、帰国時なんかゴタゴタしてオデュとはそれっきりだそう。

「はぁ〜、そうですかぁ」がっかりするテレ。



 で、話の流れで、アカイヤ軍の総大将アガメムノンの最後が、メストルの口から語られる。何やら戦争から帰ってみたら、アガメムノンの奥さんのクリュタイムネストラ(なんやねんそのけったいな名前)が、家臣のアイギストスとデキてて、しかもそのアイギストスに風呂場で暗殺されたんだと。
めっちゃ可哀想な最後!
 でもしばらくして、時期を伺っていたアガメムノンの息子オレステスに仇を撃たれたそうな。ついでに夫を裏切った母クリュタイムネストラも同罪ということで、死刑。ひぇぇ〜!
 これは『イリアス』『オデュッセイア』のスピンオフ的(?)戯曲、その名も『アガメムノン』にて、壮大に語られているそうな。
 でもこの話どっかで聞いたなあ。

あ『ハムレット』やん。



 物語ってどれも同じですねぇ。

 
 さて、
「いやぁ、わざわざ来ていただいて、何も申し上げられませんで…」
「…い、いえ」
「そうだ。メネラウオスなら何か知ってるかも?」
 ネストルは、故アガメムノンの実弟メネラウオスを紹介。
メネラウオスに会いにスパルタへ行くことを勧める。道案内にネストルの子ペイシストラトスが、動向してくれるそう。
 二人は馬車(メントルは行かないの?)で向かった。


で2歌、終わり。

『ユリシーズ』第2逸話、サブタイトルはその名もズバリ「ネストル」


まず、次頁に簡単な設定が記されている。
時刻=午前10時 場所=ドーキーという町の私立学校



 個人的に、何より『オデュッセイア』との対応がこの作品の一番の興味ポイントなので。まず、学校が『オデュッセイア』におけるピロス島なんだなと気になってしまうところ。別に対応とか、そんなことどうでもいい方には、どうでもいいのでしょうが。そして次は、ネストルの対応キャラは誰?

 スティーブンは、この学校で臨時教師の職についている。この私立学校は、1904年当時実際にあった学校で、付録のジェイムス・ジョイス年表によると「この頃ドーキーの私立学校で臨時教師を務める」とあるので、やはりこれもジョイスの過去が元のようです。ここの校長、ディージー校長にもモデルがいたと思われます(あまりいいキャラとして描いてないけど、大丈夫なのでしょうか?)。
 その学校は、マーテロ塔から1.5キロのところにあるらしい。第一逸話は午前8時から4、50分後程度の話だったから、スティーブンはそこからトボトボ徒歩で30分ぐらいかけて、学校には9時半ぐらいに着いて、すぐ授業、って感じですね。
 今彼は古代ローマ史を生徒に教えている。
 ここ、実際にジョイスはローマ史を教えていたから、なんでしょうが、どうせだったら古代ギリシャ(西暦全146年に古代ローマに滅亡されたらしい)にアレンジしたほうが、元ネタ『オデュッセイア』との関係を見出せて、気持ちいいのに、ってそればっか。

 …続く。






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