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第49回 第4逸話『カリュプソ』 その7

 「ただいまー」
 帰宅するブルーム。ドアの下には、手紙二通と葉書が一枚。手紙の一枚には”ミセス・モリー・ブルームへ”。

 アイルランドにおいて、普通は「ミセス・レオポルド・ブルーム」と書かれるはずなのに、レオの存在をスルーしていきなりモリー。とても失礼な手紙。主は?
「あいつだ…」
レオは弾んでいた心が一気に沈んだ。

「ポールディ(レオの愛称」、妻が呼ぶ。
「誰からきた手紙?」
 レオは寝室に入り、ブラインドあげる(いたせりつくせり)。
「ミリー(二人の娘)から手紙とハガキ、それと君宛に手紙が一通」
「ブラインドはこれくらいでいいかい?」
モリーは手紙の方をすぐさま枕の下に滑り込ませる(人は後ろめたいものは、本能がすぐに働き隠そうとする)。レオを素知らぬふり、でも横目でチェック。

「(無視して)ミリーはプレゼントを受け取ったそうよ」
 遠くで働くミリーは昨日6月15日が15歳の誕生日だった。両親は娘にプレゼントを贈ったらしい。そのお礼のハガキを送る娘。いい子だねぇ。てか、15でもう親元を離れ、遠くの地で住み込みで働いている。昔はそうだったのだ。幼年期を過ぎればその後は青年期をすっ飛ばしてすぐ大人、もう働きに出る。だってもう働ける体だから。勉強は必要で経済力がある人だけやればいい。
女子はすぐ嫁がせる家もある(この世界の片隅で)。男子にも出兵というものがある。

「お茶、早くしてね」「わかってるよ」
 レオは階段を降り、台所に向かう(ブルームん家は台所が半地下にある)。
 温めておいたティーポットにお湯と紅茶を入れ流。先ほど買ってきた肝臓を取り出す。そこへまた猫ちゃん。
”あまりやると、ネズミを取らなくなるが…”
 と言いながら生肉を一切れ猫にやる。


残りはイントゥバターフライパン・オン・ザ・コンロ。

 そうか今気づいた、ブルームの家には冷蔵庫なんてないんだな。時は1900年代初頭、まだ各家庭にって時代じゃないだろう。なので生肉を買いたければその都度いちいち店まで出向かなきゃならない。だからドルゴッシュ精肉店も、朝の8時から営業していたんだな。

ん? …てかそもそも電気は?家に電灯とかあったの?

 これについてはまた追々…(なんで今言わんねん? ままあ、ちょっと長くなるんで)。



 そうやって便利な製品は人々の仕事を奪っていく(『1900年』っていうイタリア映画では、農民たちが新しい農機具をぶっ壊していたっけ。『明日に向かって撃て』では馬の代わりになる自転車を捨ててた)。21世紀、AIがさらに人の仕事を奪い始めている。

 えぇ〜っと、何の話だったっけ?


 …続く。




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