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三十路ブルーとは何か

三十路ブルーという言葉を最近使っている。30歳を迎えようとしている私たちのための言葉だ。「そんなブルーよくわからない」という方は、とても幸せなことなので、特にこの文章を読む必要は無いと思う。

僕自身は、三十路ブルーを感じてはいるが、全く致命的ではなく、うまく付き合っていけるレベルだ。ただ、このブルーの実体は掴むことが出来るし、同じようなことを感じている同胞が少なからずいるということも想像はできる。今夜は、それについて書いていきたい。(連休最後の23時半のため程よい長さで切り上げたい)

三十路ブルーをもう少し具体的に表現するのであれば、「人生が閉じていく感覚」だと思う。

大卒でいうと6~7年が経ち、社会的にも若手とは徐々に呼べなくなってくる。出来る仕事も増えてくるし、同時に身の程も分かってくる。現実的なキャリアプランの解像度は上がってくるが、同時にぶっ飛んだ考えにも至らなくなってくる。パートナーとの同棲/結婚ラッシュがいよいよ本格化する。人によっては子どもが産まれて、優先順位の第一位が自分ではなくなってくる。

これらは決して悪いことでは無く、むしろ社会的には"大人になる"や"成熟する"とも言える事柄だ。ただ、そこに幾分かの「人生が閉じていく感覚」をどうしても持ってしまう。

スキルや実績もなく、守るべきものもなく、何者でもない。先の道など見えないから、無理矢理こしらえてとにかく走る。常に付き纏う不安や焦燥感。未熟な恋愛と傷つけ合い。

これらは、20代前半~中盤に特に通過する事柄だと思う。これら以外にも、無数に挙げられる。直面しているときは辛いが、どことなく「人生が開いていく感覚」がある。常に自分や周囲が劇的に変わり続けている状況下で、良くも悪くも人生は開いていく。一方で、記憶は多少なりとも美化されることを前提にしても尚、この期間は美しいばかりではない。自らの才能や実力の無さに嘆き、凡人であることを認め、周囲との比較を止められない。もちろん人によって程度の差はあるが、少なくとも僕にとってはそういう時期でもあった。開いていくことを良いとは思わずに、むしろ閉じたかった。明確な指針や拠り所が欲しかった。

そこから数年が経ち、三十路に差し掛かっている。本当に生きやすくなった。今、目の前のことに集中して、楽しめるようになった。何とかこれから先も生き抜いていける自信もついた。プライベートでも仕事でも、良い友人に恵まれ、恋愛やパートナーシップも幾分かは成長した。ただ、「閉じてきている」、その1点のみが三十路ブルーを引き起こすのだ。

20代で起業すると豪語していた人が、高い給料に満足して大企業に残る。常に新しいことにチャレンジしていた人が、良い役職につき、現実的な発言をする。孤独を強さに変えて仕事に打ち込んでいた人が、素敵なパートナーを作り、同棲や将来設計の話ばかりをするようになる。何よりもお酒と友人が大好きだった人が、妻や子どもとの時間を大事にするために家に直帰するようになる。連続的なキャリアと、お金と、同棲や結婚や子どもと、不動産や資産形成といった話ばかりになる。

全くもって素晴らしいことだ。皮肉や嫌味ではなく、心からそう思う。当の自分自身も、明らかに以前よりもこれらに向ける意識の割合は大きくなっている。しかしながら、これらにより「人生が閉じていく感覚」は引き起こされ、三十路ブルーを生み出してもいる。とても素晴らしいことなのに、何故だろう。モラトリアムを引きずっているのかもしれないし、単にひねくれているだけかもしれない。ただ、三十路ブルーを多少なりとも感じている全ての同年代のために、あえて言語化をしてみたいと思う。

結局は、過去への憧憬が残っているだけ。良いところだけを切り取っており、あれだけ未熟だったはずのエピソードの数々は忘れている。選ばれなかった多くの選択肢は、つまるところ"選ぶことが出来なかった"、もしくは"選ぶに値しなかった"のだ。懐古主義で非常にくだらない。

こうして切り捨ててしまうことは簡単だ。もう少し建設的に、どうしようもなく付き纏う三十路ブルーへの対処法は何だろうか。考えてみた。

意思決定や行動に関して、年齢やライフステージを理由に言い訳せず、なるべく我慢もしないこと。贅沢に、諦めずに、自分も他人も幸せにしようとすること。誰かや何かのせいにして、自分を無理矢理納得させないこと。そして、青臭い夢や理想を忘れずに、考え続け、言葉にし続けること。これらがとにかく大事だと思う。今これを書きながら、ここ数年の自分自身における実践がまだまだであることを思い知った。改善させよう。

「人生が開いていく感覚」を持ちながら、自分の感情に正直に、非連続な未知の世界へも不安と共に飛び込んでいく。今まで築いてきた道筋や下手なプライドに囚われない。目の前のことに集中して楽しみながらも、常に10代~20代前半のような何者でもない感覚を忘れない。一方で、成長した部分に関しては存分に活かして、安定した生活やパートナーシップや子育てといった領域にも十分な時間と金銭を費やす。

まだ独り身の夢物語かもしれないが、このように三十路ブルーを乗り越えていきたい。一生、新鮮に楽しんで、「人生が開いていく感覚」を味わい続けたい。物語を描くことは勝手だし、叶う叶わないは別として、生きる上での指針になる。

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