食品ECの難しさ

この2週間ほど、応援の意味もこめてECで食べ物を買う機会が増えました。

そんな中で感じたのは、ほとんどのECはファミリー層を対象にしているということ。
たとえ意識していなくても、品揃えから「結果的に」ファミリー層への訴求になってしまっているものが多々あります。

なぜならば、単価の低いECで送料を無料にする、もしくは割高に感じない設定にするためには、商品価格を3000円以上に設定する必要があり、その価格帯のセットは往々にして一人暮らしや夫婦二人暮らしには多すぎる量になってしまうからです。

さらに食品の場合は、洋服や本と違ってクール便でしか送れないものもあり、送料だけで1000円近くになってしまうことも。

1人暮らし向けにちょうどいいサイズで3,000円だと「ご褒美」になってしまうし、お得に感じてもらえるように商品数を増やすとファミリーにしか訴求できなくなってしまう。

こうして考えると、食品ECは単身世帯との相性が悪く、単身者割合の高い都心部では実は訴求が難しいのではないか、と自分の体験を通してひとつの仮説を持ちました。

これまでであれば、たとえ一人暮らしでも友人の家に遊びに行ったり、みんなで持ち寄りパーティーをしたり、差し入れをしたりと「分ける相手」がいました。
しかし人と会うことが禁じられている今、単身者が誰かと分けることを想定するのは難しく、ひとりで消費できるものでなければ購入にはいたりません。

おそらくこの問題を解決するために多くの企業はチルドパックにして賞味期限を伸ばしたり、幅広い商品のアソートセットを作ったりしてきたのだと思います。

しかし実際に自分が消費者として選ぶ際、送料もいれると4,000円近くになる買い物をひとつのカテゴリだけで選ぶのはなかなかハードルが高いと思うのです。

たとえばどんなにバラエティが豊富といっても、お歳暮でもらうようなハムの詰め合わせを毎月買いたい!という人はよほどハムが好きか、そのお店に思い入れがある人に限られてしまうのではないか。

さらに今の状況は、ひとつのお店だけでなく全国、全世界で苦しむ飲食店や生産者がいて、できることならすべてのお店から買い物をしたいと誰もが考えているはずです。

しかしひとつのお店から3,000円分の商品を買ったら、お財布の観点からも冷蔵庫の観点からも2つ、3つと買い足していくことは難しい。

賞味期限が長かったとしても、毎日ハムだけを食べ続けたら飽きてしまうし、何より明日何を食べるかを考える自由を奪われるという隠れたデメリットがあります。

飲食店であれば「楽しかった時間代」として快く払える3000円も、自宅で食べる「食糧」になった瞬間、比較対象がスーパーやコンビニでの中食になるため割高に感じてしまうのです。

では現在の状況下で単身者にECで食品を買ってもらうことは不可能なのでしょうか。

唯一可能性があるとしたら、ジャンルを超えたアソートを作ることではないかと私は考えています。

先日田村さんが下記のnoteの中で「1人よりもチームで考える」という話を書かれていたのですが、異なる業種同士でコラボしたり、プラットフォーマーが作るアソートメントに入れてもらったり。

または、うつわや調理器具など食べ物以外のものとセットにしてみるのも一つの手かもしれません(その場合、同じ人が何度も買ってくれるとは考えづらいのですが…)。

それ以外にも、食品ECの難しさは「一度にたくさん届いてしまうこと」にあるので、メール便などポスト投函可能な郵送方法を使ってサブスク的な仕組みで毎週ひとつずつ商品を送るのもひとつの手かもしれません。

たとえば最近、「金曜日にカレーを食べよう」という海軍の伝統をベースにした盛り上がりもあるので、その週に食べて欲しいカレーを毎週送るといった仕組みもありだと思います。

これなら送料込みで1回5、600円くらいで価格設定できれば消費者にとっても手が届きやすく、きちんと利益がとれる仕組みになるのではないかなと。

もちろん販売効率を考えれば、ファミリー層に特化して土日の夜に食べたくなるような、家族で囲むメニューを販売するのもひとつのやり方だと思います。

ただ可処分所得を考えると単身世帯の方が購買意欲が高く、かつ外食ができないことによってお金が浮いている人も少なくないはずなので、「単身世帯にどう訴求するか」を考えるのは無駄なことではないと思います。

これまで食品ECが単身世帯の開拓にあまり熱心でなかったのは、彼らにとって外食の方が圧倒的にコスパも利便性もエンターテイメント性も高かったからです。

しかしこの状況下では毎日コンビニやスーパーのレトルトでは飽きてしまうし、ちょっとした調理ならやりたいという人も少なくないはず。

私も引き続き、このテーマについては考えていきたいと思います。

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ここから先はそもそも論すぎてすぐに実現はできないけれど、一番理想としてはこういう仕組みの構築が必要だよね、と考えたことをまとめておきます。

話が大規模すぎてあまり参考にならないと思うのと、賛否両論ありそうなので鍵をつける意味で有料にしてみましたがご興味があればどうぞ。

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