「とくべつ」はきっと、"違い"じゃなくて"近さ"のこと
あらゆる分野で選択肢が増えてきた今、「差別化」は重要なテーマです。
しかし、たくさんの企業が一斉に差別化をはかるようになったことで、「違い」だけで特別な存在になることの限界がきているのがちょうど今の時代なのだと思います。
例えば、コンビニでずらりと並んだお茶のペットボトルの中から「これ!」と思うものを選び出せる人はどのくらいいるのでしょうか?
大半の人は、適当に目についたものを手に取っているのでは無いかと思います。
そうすると結局価格やノベルティでの勝負になり、その先には疲弊しかありません。
では、膨大な商品の中から選んでもらえる「とくべつ」な存在になるには、何が必要なのか。
私は、そのキーワードこそが「近さ」だと思っています。
これは最近コミュニティマーケティングなどの文脈で語り尽くされていることではありますが、例えば同じクッキーでもコンビニの棚に並んでいるものと、友人がファーマーズマーケットで売っているものでは、価格は一緒でも自分が感じる価値はまったく異なります。
しかも、後者にいたってはクッキーがほしいわけではなく、真のニーズは「コミュニケーション」だったりする。
この場合、友人が作ったものがクッキーだろうがピアスだろうがコーヒーだろうがなんでもよくて、「買ってくれてありがとう」「おいしかったよ、ありがとう」のコミュニケーションのために売買が起きている状態です。
よく「モノからコトへ」と言われますが、それは単に体験という無形商品が売れるという話ではなく、モノの売買にはそれを買う必然性という意味での体験の裏付けが必要だということでもあります。
以前「『レコメンド』がすべて機械に置き換わったりしない理由」で、これからの販売員の仕事はまず人として好かれること、その上で「この人におすすめしてほしい」と思われることだと書きました。
それは単にフランクに接して友人のようになるということではなく、「この人はわかってくれた」という安心感を持ってもらうこと。
心の距離が近くなることこそが、買い手にとっての「とくべつ」になっていくのだと思います。
もちろん、商品の方も自分たちらしさをもつ必要がありますが、ライバルより機能が1個多いとかカラーバリエーションが豊富なんていうのは、自分たち以外にはまったく通じない「ちがい」でしかありません。
よそを気にして「ここが違うんです!」「うちはここが強みなんです!」と誰かと比べてよさを伝えるよりも、自分たちの内側にある哲学や感性を丁寧に伝え、心の距離を縮めていく方が、特別な存在として認知してくれるお客様が増えるのではないかと思うのです。
誰かの特別になること。
それはきっと、他者を蹴落とすのではなく、飽きることなく「らしさ」を伝え続けることだと思うから。
「とくべつ」はきっと、"違い"じゃなくて"近さ"のことなのだと私は思っています。
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