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生き様のすべてが「プロ」を作る

「本を読む冊数でいうと…年間200冊くらいですかね」。

年100冊が一般的な「読書家」のラインだと個人的には思っているのだけど、その2倍の数字を出されたとき思わず我が耳を疑った。これまで読書家を自負するビジネスパーソンと公私関わらずいろんな場所で読書トークをしてきたが、ぶっちぎりでトップに立つ読書量である。

さらに驚くべきは、この回答の主が経営者でも学者でもなく、本のイメージとは対極にありそうなスポーツ選手であったことだ。

ビジネスパーソンも舌を巻くほどの読書量を誇るのは、メジャーリーガーの菊池雄星選手。昨晩配信したイベントでは、そんな菊池選手の読書遍歴やおすすめの書籍について語ってもらった。

菊池選手はその読書量もさることながら、読んでいる本も骨太なものばかりで、この類の本を年間200冊のペースで読んでいる、だと…!?と二重で衝撃を受けた。

ちなみに配信の中で紹介したおすすめ本4冊がこちら。(ライブ配信より抜粋)

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野球やスポーツにまつわる本は一冊もなく、本のラインナップだけ見たら大企業の経営者や自治体のトップのおすすめかと見紛う選書である。

本の選び方も向き合い方も、話を伺えば伺うほどいち読書家として尊敬することばかりで、「野球選手」の肩書きを忘れてただひたすらにその読書論を深掘りした時間だった。

どんな質問に対しても自分の言葉で誠実に語る方だったので学ぶことばかりだったけれど、特に印象的だったのは「悩んでいることはみんな同じだと思う」という話だった。

私たちはプロスポーツ選手を自分にはまったく理解できないような特別な存在だと思いがちだ。実際、ほとんどの人は何万人もの前に立つことなど人生で一度も経験しないだろうし、毎年年俸がどうなるか、来季も契約があるかを不安に思いながら過ごす日々は想像もつかない。

けれど、菊池選手が本から学んだことを伺っていると、たしかに本質的な悩みやぶつかる壁はどんな職業でも変わらないのかもしれない、と考えさせられた。

チームの中でいかにして信頼を勝ち得ていくか。キャリアの選択に迷ったとき、何をもとに決断するか。

世界レベルのアスリートと比べるのはおこがましいとは思いつつも、規模が違うだけで悩みの根底はたしかに共通するものがある。

たとえば、菊池選手の発言に「マウンドでの振る舞いと同じくらい、練習中や普段の振る舞いに気をつけている」という話があった。

これは経営者もまったく同じことが言えるように思う。経営者として人前に立つときの心構えを誰もが聞きたがるけれど、経営者としての真骨頂は普段からまわりにどんな態度で接しているかの方に如実に表れる。

私は普段小売の現場に赴くことが多いので、経営者が「真実」を言っているかどうかは店舗の日常にすべて反映されているもんな、とひとり納得したりしていた。

短期的な結果だけではなく、一挙手一投足のすべてが評価の対象になる。同じ個人事業主として、背筋の伸びる話でもあった。

菊池選手は普段から相当量の読書をこなしているだけあって、汎用性のある学びに昇華して言語化するセンスに溢れ、加藤さんとのやりとりは経営者同士の対談のようだった。

スポーツ選手でここまで抽象化や言語化ができる人は稀少な存在だ。けれども、言葉の面からアシストできる人を介在させれば、スポーツ選手からビジネスパーソンが学べることは多岐にわたるはずだと私は思う。

現に私はいち野球ファンとして、これまで何度も選手たちの生き様や姿勢に感化され、励まされながら社会人人生を送ってきた。

どうやっても結果がでないときの向き合い方。チームの中で自分の価値を発揮し、居場所を作るために何をすべきか。期待に応えられなかったとき、批判の声をどう受け止めるか。

選手の数だけ哲学があり、ドラマがある。

野球を通して学んだそれぞれの考え方が、血肉となって私の今の価値観を形成している。

本が誰かの人生を変えることがあるように、アスリートの生き方もまた誰かの人生に影響を与えうるものだ。

だからこそ、スポーツはスポーツ、ビジネスはビジネスときっぱりわけてしまうのではなく、両者がお互いに学びあえる場があるといいよなあ、と思う。

経営者がスポーツ選手から学べることは多いはずだし、逆もしかりだろう。特にこれからの個人としての発信戦略は、アスリートも経営者も同じ課題にぶつかるはずだ。同じ業界内で似た状況の人が見つけられなかったとしても、業界が違えば同じ悩みをもつ人はいくらでもいる。

私も普段野球に関するnoteを書くときはなるべく野球ファン以外の人に届けられるように意識しているのだけど、noteは異なるクラスタをゆるやかにつなぐ力があると思う。

だからこそ菊池選手がはじめられたnoteも、野球ファンだけではなく異なるクラスタの人が興味を持ち、関わりあう場になっていくといいな、と期待している。

プロの世界は孤独だ。仲間はライバルでもあるし、立場上本心を吐露できないこともある。

でも、だからこそプロ同士でお互いの生き様から学び合い、励まし合うことでそれぞれのパフォーマンスが引き上げられていくのではないかとも思う。

私はまだまだ力をもらってばかりの立場だけど、いつか自分が生み出したものが、回り回って彼らの力になる日がくるように一歩一歩進んでいこうと思う。

世界はきっと、その循環で少しずついい場所になっていくのだと信じて。

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