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個人として「上場する」ということ

スタートアップ界隈にいると、毎日のようにやれ資金調達だ、やれIPOだ、という話をよく耳にします。

一応数年スタートアップに勤めていたわりにはあまりファイナンスに明るくない私は、とりあえず会社を作って、数億円単位で調達して、M&AかIPOでEXITするのが一般的な流れらしいぞ、というふんわりした理解だったため、なんとなく「怖そう」というイメージを持っていました。

さらに、上場するとなると何やらものすごく大変なことらしいぞ…?という程度の理解しかしておらず、経営って難しそうだなあ、自分にはできないだろうなあ、と思うばかり。今思えば、当時はなんともぼんやりした子でした。

今も理解度で言えば30%程度で理解しているとは言い難いのですが、少しずつこうしたファイナンスの仕組みを学んで思ったのは、個人にも「上場」に近い概念があるのかもしれないということです。

上場とは、端的に言えば「誰でもその会社の株を買える状態」ことです。

また、株価という人気度の指標も可視化されることになります。

仮に個人をすべて株式会社に置き換えてみると、「SNSを通して自分の名前で仕事を受けている人」はまさに上場企業と似た状態なのではないか、と思ったのです。

例えば、フリーランスという立場は便宜上誰にでも窓口を開いています。しかし、会社員の場合は勤めている会社以外から仕事を受けることは基本的にほぼ不可能です。

これはつまり、フリーランスは開かれたマーケットで自分のリソースを売買しているということであり、逆に会社員は自分のリソースの売り先を限定し、他の人が勝手に売買できないようにしているという状態です。

もちろん、フリーランスの場合は株の売買と違って「買い注文にNOという権利」がありますし、そもそも資本関係が前提ではないので厳密に言えば株式市場と異なりますが、実際にフリーランスの身の私からすれば、個人の名前で仕事をうけるというのは、感覚として上場にかなり近い気がしています。

また、たとえ自分のリソースをオープンな市場で売買していたとしても、公に存在が知られていなければ上場とは言えません。

「SNSを通して」という条件を入れたのは、SNSこそが個人にとっての株価に相当すると思うからです。

SNSのフォロワー数というのは、自分への評価がダイレクトに反映される指標です。

たくさんの人が「価値がある」と思えばフォロワー数やいいね数が伸びるし、逆に少しでも不誠実なことをすれば直接非難されたり、エンゲージメントが下がったりします。

昔はなぜ経営者が株価を気にするのかよく理解していなかったのですが、自分がSNSという俎上にのせられてみてはじめて、株価、つまり人気や期待が数字で表されることの恐ろしさと責任を感じました。

株価が高い、つまりたくさんの人が自分に期待してくれているときは、様々なチャンスが舞い込んできます。しかし、そのチャンスを逃したり失敗してしまえば、急激に期待値が下がり、それによって再起のためのチャンスも訪れなくなる・・・というマイナスのスパイラルに入る可能性があるのです。

つまり、誰もが「自分株式会社」を運営しているとすると、実名顔出しでSNSをやるかどうかの判断は、ゆくゆく上場する気概があるかどうかによるということもできます。

上記で説明した「個人で仕事を受けるかどうか」「SNSを使っているかどうか」の二軸でそれぞれの状態を企業に例えたのが下記の図です。

企業に勤めて給与をもらい、SNSはやっていないかやっていても趣味程度にしか使わないという大多数の人は、企業で言えば「家族経営」に近い状態です。

昔から付き合いのあるメーカーの下請けとして家族で機会を回す町工場や、家族で代わる代わる店番をしている地元の商店のようなイメージです。

家族経営は規模こそ小さいものの、きちんと信頼を得ることができれば、人の紹介や口コミによって取引先を増やし、「非上場企業」へと進化する可能性があります。

「非上場企業」は、知名度こそ低かったとしても信頼さえ積み上げれば安定しやすく、また経営方針を決める自由は完全に自分たちにあります。

あえて上場を目指さず、仲間だけでまったり楽しく仕事をしたい場合は、ここが最終地点です。

逆に、現在はまだ会社勤めなので仕事は受けられないけれど、すでにSNSを通して知名度と信頼があり、独立するなら仕事をお願いしたい!という企業がたくさんある状態の人も一定数います。

これは、株の売買が制限されているスタートアップがIPOするのを心待ちにされている「上場準備中」の状況に近いものがあります。

会社勤めをしながらSNSのフォロワーが1万、10万と増えている状態の人は、企業で言えばラウンドB、Cを経ていよいよあとはIPOか、と言われているような感覚なのかな、と。

そしてそういった人たちが実際に独立すると、いよいよ「上場企業」になります。

ただ、ここで気をつけなければならないのは、上場した瞬間に他の銘柄と横一列で比較されやすいということです。

会社員としてどこかに所属しているということは、どれだけ個人として影響力をもっていても、その影響力の中には少なからず所属企業への信頼が混じっています。

企業で言えば、有名なVCが資金をいれているからとか、注目のベンチャーとして大手メディアに取り上げられていたからといった理由で信頼度が上がるのと同じことです。

しかし、上場した瞬間そうした後ろ盾はなくなり、ライターならライター、エンジニアならエンジニアという業界の中で横並びに比較されることになります。

このあたりの話は、下記の記事が非常にわかりやすく面白かったので、もっと詳しく理解したい方はぜひ読んでみてください。

上場した途端、会社は“銘柄”と呼ばれる」。
(中略)
非上場企業に対しては投資のチャンスが限られているから、基本的には投資家側も「投資させてください」っていうスタンスであることが多いわけだけど、上場した途端、投資家からは「別にお前じゃなくてもいいよ」っていう扱いになる。上場っていうのは、発行体と投資家の関係性が著しく変わるイベントだなっていうことを思い知らされた言葉でした。
上場したら会社は1銘柄。スタートアップが直面する現実

また、もうひとつ忘れてはいけないのが、一度上場したらそう簡単には上場廃止はできないこと、特に一度SNSで有名になった場合、もう二度と「有名ではなかった頃」には戻れません。

私自身、実名顔出しでSNSをやっているのでたまに実名でやるべきか相談を受けることもあるのですが、その際は勝間和代さんの「『有名人になる』ということ」を読んで、それでも実名の方がメリットがあると思ったらそのときはじめて実名でやればいいと思う、と伝えています。

上場が必ずしもいいことばかりではないように、実名顔出しもメリットとデメリットがあり、性格的に合うかどうかや最終的な目標によって慎重に判断すべきだと思うからです。

すべての企業が上場を目指しているわけではないように、個人も全員が有名になる必要があるわけではありません。

事業体としての規模も同様で、非上場企業には非上場企業の、家族経営には家族経営のよさがあります。

4つの区分には優劣があるのではなく、向き不向きと最終ゴールのイメージの違いがある。それだけのことなのです。

私自身は今やっとマザーズに上場できたかなくらいの立場ですが、自分が企業だったとしたら上場している状態なのだと気づいたとき、「上場」というものに対するイメージが随分変わりました。

以前は上場したら自分の意思だけでは舵取りができなくなるし、人の金儲けの道具にされるだけなのではないかという悪いイメージがありました。

もちろんそういった側面もあるかもしれませんが、私はSNSの発信力をつけることで舞い込むチャンスの量も質も大きく変わったため、最終的に成し遂げたい夢の規模が大きければ大きいほど上場のメリットも大きいのかもしれないと感じるようになりました。

上場を通して株価が公になると、株価(=期待値)の上昇とそれに伴って転がり込んできたチャンスをかたちにし、そしてまた株価が上がる…というサイクルが可視化され、さらなる注目とチャンスに恵まれるようになるからです。

非上場であれば身内だけの話題で終わってしまいますが、上場していればより広い範囲までアプローチすることができ、気づいたらあっというまに自分の想像以上の場所まできていた、ということになります。

もちろん実際の企業の場合は、資本が絡むステークホルダーが複数いるためもっと話は複雑になのですが、「自分株式会社」に関して言えば、何も資産を持たない人間が大きな夢を叶えようとするならば、上場以外の選択肢はほぼないと言ってもいいのではないかと思います。

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自分は4つのうち最終的にはどの区分を目指したくて、今はどこにいるのか。

この二つを理解することで、次にやらなければならないこと、自分に足りないものが見えてくるのではないかと思います。

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※実際に会社経営を経験したことがあるわけではないので、表現や理解に誤りがありましたらぜひご教示ください。

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Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

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