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飲食店とファッションブランドの関係性

ここ数年でファッションブランド発のカフェも増え、コラボカフェやコンセプトカフェがオープンするというニュースを聞いてもあまり驚かなくなりました。

カフェを併設するメリットのひとつは、滞在時間が伸び、購入につながりやすくなることです。

また、ブランドの世界観を体験できることでブランドへの理解が深まり、ファンになりやすいという効果もあります。

しかし最近では、カフェ併設型のショップが当たり前になってきたことで、そうしたメリットを深く理解せずに、とりあえずコーヒースタンドを併設しておこうという意識が透けて見えるお店も増えてきたように感じます。

メニューも最近はどこも似たり寄ったりで、どのブランドのカフェに来たのか意識せずに利用している人も多いのではないでしょうか。

本来、ファッションブランドがカフェを含めた飲食店を経営するのは、本業であるファッションアイテムの購入につなげることが大きな目的のはずです。

であれば、もっと飲食店とブランドをつなげる作りにするべきではないかと思うのです。

例えば、アメリカに「BLIND BARBER」という人気理髪店があります。

この理髪店の人気のポイントは、10坪ほどの小さな理髪店を通ると、その奥に広がっている80坪ものバースペースです。

1920年にアメリカで流行した、「スピーク・イージー」と呼ばれる薬局や理髪店の奥に作られた秘密の酒場をヒントに作られたバーなのだそう。

理髪店で散髪した後に立ち寄りたくなるのはもちろん、アール・デコ調のおしゃれなバーで時間を過ごすなら、その前にシェービングを済ませておこうかなと思わせる、相乗効果のあるつくりになっています。

このBLIND BARBERの人気が高いのは、「公然の秘密」である点と、価値観の近い人同士が集まるコミュニティスペースとなっている点だと思います。

理髪店の中を通らなければバーに入れないため、必然的にBLIND BARBERを利用したことがある・利用するつもりがある人が、バーのお客様の中心になります。

もちろん理髪店の利用者でなくても入ることはできますが、心理的ハードルが高くなるため、BLIND BARBERの価値観を共有する人同士が集まりやすい作りになっています。

そんな誰でも入れるわけではない雰囲気が、BLIND BARBERへの愛着をつくり、ブランド価値を高めているのです。

これからのファッションブランドが作るべきは「秘密の社交場」

こうしたBLIND BARBERの事例をファッション分野で生かすとしたら、次にファッションブランドが作るべきは「秘密の社交場」なのではないかと思います。

例えば、自社ブランドのアイテムを身につけた人しか入れない、特別なカフェやレストラン。

新しい顧客を開拓するという意味では、入り口で洋服を貸し出すのもよいかもしれません。

ファッションブランドであるからには、一貫したコンセプトがあるはずです。

そのコンセプトに沿った店づくりに加え、中で過ごすお客様もみな同ブランドのアイテムを身につけていることで、空間すべてがブランドの世界を体現したものになるはずです。

また、空間に足を踏み入れる際にそうした軽い制限があることで、「自分は選ばれた人なのだ」という優越感と、同じ空間を共有した人への親近感をうむこともできます。

ここ最近会員制の飲食店が増えているのも、そうした人の心理を抑えているからなのではないかと思います。

今後はリアルの場の価値が「関係性を深めること」に寄っていく中で、深い愛着をうむコミュニティづくりは必要不可欠なものなのです。

一般的なショップに1時間も滞在することは稀ですが、飲食店であれば2、3時間滞在するのは当たり前のこと。

つまり、うまく飲食店を活用できれば、お客様のタイムシェアを大きく握ることができ、引いてはマインドシェア拡大にもつながるということです。

リアル店舗の価値が再定義されている今、飲食店を通した「過ごす」価値を高めることが、今後のブランドに求められていくことなのではないでしょうか。

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(Photo by tomoko morishige)

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