これからもっと必要とされる、"バイヤー"という仕事。
"バイヤー"と聞くと、百貨店やセレクトショップだけの話だと感じる人が多いのではないでしょうか。
展示会に行って「ふーん、このブランド最近勢いがあるじゃない」と言っているような、そんなイメージ。
でも私自身前職でバイヤーを間近に見てきて思うのは、彼らは"編集者"であり"営業職"であるということ。
百貨店や大手のセレクトショップになればひっきりなしに「出店したい」という相談がきますが、それをよりわけつつ、新しいブランドや商品を発掘するために自分で足を使って探しに行く。
そんな泥臭い仕事だと思っています。
アパレル業界の衰退もあってあまり日の目が当たらない"バイヤー"という仕事ですが、これからは既存の流通業界ではないところで、さらに必要とされていくはず。
そう思ったのは木下斉さんの「稼ぐまちが地方を変える」を読んだのがきっかけです。
本の中で、衰退しかけている商店街は店舗誘致の際に積極的に営業をかけろと書いてある部分があります。
そして大切なのは、どんなテナントにきてほしいかを明確にイメージして、合致するテナントにこちらから営業をかけて口説き落とすことだと。
商店街というのはもともとの交通量がある程度担保されているので、家賃を下げたり行政からの補助金さえあれば出店者希望者を見つけること自体は可能です。
でも出店側も商店街の交通量頼りで「店を出すこと」が目的になっている場合は、結局うまくいかないことが多いんですよね。
だからこそはじめの数店舗はここぞというところを見つけてきて、誠実に現状を話しながら一緒に戦う"同志"になってもらう。
遠回りに見えてこれが一番近道だというのは、私自身も非常に腹落ちした部分です。
最近徐々に人気が高まりつつある松陰神社前も、STUDYというカフェが有望なシェフや若手のカフェオーナーのコミュニティとして機能し、STUDYのオーナーさんが相談に乗ったりしているうちに徐々に周りに魅力的なお店が増えてきたと聞いたことがあります。
(あくまで伝聞なので実際のところは不明です)
まちづくりで注目を浴びるポートランドも、新しいお店をオープンするには住民の許可が必要で、そうしたプロセスがあることで大手資本ばかりにならず魅力的な個人店が増えている理由であるとされています。
(詳しくはこちらの本をどうぞ!
『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』)
まちの色をつくるのはひとつひとつのお店の個性であり、そこに集うひとりひとりの感性です。
例えばコーヒーショップを出すにしても、感度が高くコアな雰囲気が漂う奥渋谷エリアと大人のミーハー感がある中目黒エリアでは成功するお店の雰囲気はまったく違います。
さらにクラフトマンシップ溢れる清澄白河エリア、文化的な雰囲気が漂う神楽坂・文京区エリアもそれぞれに異なるでしょう。
これらのエリアにはすべて独特の文化があり、それを形づくっているのはそこにしかないユニークなお店と、そこに集う人々です。
それぞれのエリアで一番人気のお店を寄り集めた施設やエリアを作ってもなんの魅力もないように、"そこに根ざし、一緒に文化を作っていくこと"はこれから商店街の活性化や地方創生を考えるときに非常に重要な視点です。
そこで必要なのが、バイヤーという編集者兼営業職なのではないかと思うのです。
商店街やエリアとしてどういうまちでありたいのか、そのためにどんなお店が足りていないのか、そのテナントをどうすれば誘致できるのか。
これはすべて現職のバイヤー全員がやっている仕事です。
今それぞれの百貨店や商業施設、セレクトショップで次のキャリアに悩んでいる人には、一歩外にでればこんなに需要がある仕事なのに!と説いて回りたいここ最近です。
(Photo by tomoko morishige)
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