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今週読んだ海外記事と雑感(2020.4.11)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。

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ニーマン・マーカスが破産申請を検討へ

すでに日本でも報道されていますが、米老舗百貨店ニーマン・マーカスが破産申請を検討していることが判明。申請はまだ確定ではなく、資金繰りに尽力しているようですが、店舗をすべて閉鎖している中で急に業績が改善することは考えづらく、遅かれ早かれ…という気もします。
なお昨夏にはバーニーズ・ニューヨークも破産し、売却先のファンドにて再建中。アメリカでは急激に百貨店の再編が起きています。
この流れはもちろん日本でも起きるはずで、業界の勢力図が大きく変わる可能性があります。
個人的には、ニーマン傘下のバーグドルフ・グッドマンの精神や店舗のもつ独特の歴史がとても好きだったので、そうした精神を大切に守り続けてくれるところが再建に名乗りをあげてくれたらと思いますが、昨夏のバーニーズとは異なり実店舗をもっていることがリスクとコストでしかない今、果たして再建を引き受けてくれるところがあるのだろうか、という心配もあります。

外出自粛不況は百貨店の終わりのはじまりか?

ニーマン・マーカス倒産の可能性を含め、ブランドへの支払いを3ヶ月遅らせる、春のセールを前倒ししてすでに40%引きで商品を販売するなど、どの百貨店も苦肉の策を講じざるをえなくなっています。日本の百貨店は米のようにブランドから商品を在庫として買い上げるのではなく場所を貸して売れた分だけ手数料をとるモデル(消化仕入れ)なので幸か不幸かセールの前倒しによるブランド毀損はほぼ起きないと思いますが、支払い遅延は十分に可能性としてあり、覚悟しておいた方がよいかもしれません。
また各百貨店はこの流れが向こう半年は続くとみて秋冬のコレクションも軒並みキャンセルしているもよう。すでに工場が閉鎖されて生産できないブランドもでてきていますが、どちらにせよ秋冬は大幅に生産数を減らす必要がありそうです。
ちなみにD2Cブランドは従来の在庫買取ではなく日本式の消化仕入れ方式をとっているところが多かったことで、百貨店の不振による影響はそこまで大きくないようです。
メディアとしての百貨店やセレクトショップの存在意義は変わらずありつづけると思いますが、こうした事態になって改めて顧客と直接コミュニュケーションがとれること、ECを含む自分たちがコントロールできる売場を持つことの重要性を感じます。

Shapermintの「おうち時間」シフト戦略

消費全体が落ち込む中、訴求方法を「おうち時間」にシフトしたことでコロナ以前とほぼ同じ水準まで売上を伸ばした補正下着ブランド・Shapermintの事例。もともとは洋服の下に着る補正下着のブランドですが、自宅で過ごす人が増えたことで、主婦を中心にホームウェアとして身に付ける人が増えたことに気づき、訴求内容を大幅転換。
その後FBとIGで一気に広告をしかけ、大幅な売上アップにつながったとのこと。
同時におうち時間を快適に過ごすためのコンテンツを共有する有料コミュニティも作り、顧客のエンゲージメントを高めています。
さらに従業員の解雇どころか採用も行っているとのことで、先週2週間で3人を新規採用。
リモートワークをしながら従来と同じ水準の売上を作っていることに驚きです。
まずは従業員の健康のためにワークアウトや瞑想のコンテンツをシェアしたり、息抜きのためのコーヒーブレイクルームをZoomで設けるなど環境を整え、物販だけではなくコンテンツ作成やコミュニティマネジメントといった遠隔でも比較的作業がしやすいものにビジネスの軸を持っていく。
こうしたShapermintのやり方は、日本のブランドもまなぶところが多そうです。

通勤時間減少によってPodcastの成長が鈍化

外出制限によって通勤時間がなくなった結果、Podcastの再生回数やDL数の成長が鈍化。これまでいかに「耳」の需要が通勤に支えられていたかがわかります。車の中でオーディオ再生しやすくするアプリはなんと60%も利用数が減少しているとのこと。
また、個人的には今Podcast以外に聞くべきもの、見るべきものが増えたことも減少の一因になっているのではないかと考えています。
自宅からZOOMやインスタライブで簡単に発疹ができるようになった今、インターネットには消費しきれないほどのコンテンツが溢れています。
細かい統計を出すのは不可能ですが、イベントに比べて配信の方が圧倒的に労力がかからないことを考えるとおそらく従来のイベント数以上に配信が増えており、それが「耳」のシェアをPodcastから奪ってしまっているのではないかなと。
そういう意味では、聞いてもらうきっかけとしていかに相互コミュニケーションをするか、つまりライブによって視聴者とやりとりをするかが肝になってくるように思います。
先日私もインスタライブをしながら音声ラジオ収録をしたのですが、今後はライブがメインでそれを収録したものを後からアーカイブとして残していくという手法も増えそうな気が。
記事にもあるとおり音声コンテンツの可能性は引き続き大きいものの、聞いてもらう可能性を高めるにはこれまでと異なる工夫が必要になるのではないかと思います。

コロナに影響を受ける縫製工場の現実

https://www.voguebusiness.com/sustainability/retailers-tell-suppliers-they-wont-cancel-orders-reality-more-complicated

ファッション業界全体が大打撃を受けている今、縫製工場のあるバングラデシュやインドなどのエリアでブランドの商品受け取り拒否や支払いの延期が発生し、問題となっています。バングラデシュだけでも15億ドル相当の商品がキャンセルされ、20億ドル相当が支払い延期となっているもよう。
ZARAやH&Mはキャンセルはしないと明言しているものの、支払い予定日を明確にしておらず、工場からの不満が高まっています。
とはいえ、ブランドとしても、当座の保有現金を増やし在庫量を減らさなければブランド自体が倒れてしまうため、結局工場側があおりをくらうことになってしまう難しい状況にあります。
せめて工場側が自らECを立ち上げるなどして販売できれば…!とも思うものの、グローバルブランドすら売ることを諦めた商品を販売することは容易ではなく、輸出入も制限される可能性が高いため正解のない問いな気もしています。

サブスクリプションサービスが小売に与える影響

香水ブランドSkylarが月額20ドルで提供するサブスクリプションサービス「Scent Club」がローンチから1年で会員1万人を突破し、継続率85%とコロナ騒動の中でも順調に成長している様子。また、特に注目すべきはサブスク会員の商品買い上げ回数が増えていること。非会員の購入回数が平均1回/年に対して、会員の購入は6回とのことで、商品が78ドルというそこそこ値段のする香水であることを考えると、会員コミュニティがビジネスに与える影響の大きさを感じます。
また、会員の半分はこれまでSkylarの商品を購入したことのない顧客層というのもユニーク。
そういう意味では、ブランド自身が運営するサブスクサービスはそれ単体で利益をだすことだけではなく、お試しとして使ってもらった上で通常サイズを購入してもらうきっかけづくりと位置付けるのもよいのかもしれません。
ちなみにScent Clubでは商品を送るだけではなく、会員向けのオンラインコミュニティと限定の割引システムを持っており、単にモノを受け取るというよりはサービスにお金を払っている顧客が多そうです。

各国の中小企業支援施策と現実

日本でも混乱の最中にある店舗の休業補償ですが、世界的にも混迷を極めています。記事では英米独の事例が紹介されていますが、給付型の補償を行っているのは独のみ。英米は無金利もしくは低金利ローンで対応しています。
しかし実際に貸し付けるのは銀行のため、レギュレーションがバラバラな上に煩雑で、実際にはなかなか申し込みにいたらないケースも多いもよう。
大企業が優先されるために中小企業の救済に手が回っていないという不満も大きいようです。
さらにオーナーが連帯保証人となることを条件にする銀行も多く、借り入れを敬遠するオーナーも多いようです。
飲食店や小売店舗の補償は急務とはいえ、店舗が閉まれば取引先も売上を失いますし、店舗の販促や支援を行なってきた会社にも大きな打撃があり、その補償範囲は果てしなくなってしまいます。
そして過去の歴史を振り返ってみても、どこかが危機に陥っても世界の大部分は無事だったために輸出入で保てた部分がありましたが、今回は全世界の経済がストップしてしまっているため、その場しのぎの補償だけでは国家財政が先に破綻してしまう。
マクロで見たときの正当性とミクロで見たときの感情とが入り混じるここ最近です。。。

D2Cブランドの値引き戦略

これまでD2Cブランドの多くはセールをしないことを信条にしてきましたが、ここにきてキャッシュフローのためにセールを決断するブランドが増えてきています。ただ、ブランドイメージを落とさないために単なるセールではなくタイムセールで時間を区切ったり、セレクトショップやインフルエンサー経由の販売だけディスカウントしたりと工夫を凝らしているもよう。特にインフルエンサー経由の販売は韓国でも3年ほど前から広まっていた方法で、新規顧客に対してのみディスカウントをするという点で有効な施策だと思います。
これで当座の運転資金を稼ぎつつ、オンラインコミュニティやコンテンツ課金といった新しいビジネスモデルを用意する、というのがD2Cの今の基本戦略なのかなと思います。

「瞑想インストラクター」という外出自粛時代の新たなインフルエンサー

ずっと家の中にいなければならないストレスを解消するため、ヨガや瞑想のコンテンツ人気が急上昇し、美容系ブランドがこぞって人気インストラクターとコラボしたライブ配信をはじめているとのこと。瞑想アプリの「Headspace」によれば、3月中旬からストレス解消のために瞑想をはじめた人は17倍、その中で不安を解消する方法として取り入れはじめた人が12倍に増え、瞑想への関心が高まっていることがわかります。
Kiehl’sなどのブランドもこうしたコンテンツをIGTVやライブで流すことでファンのエンゲージメントを高めており、コスメの使い方よりも瞑想やヨガのコンテンツの人気が高いそう。
外に出られない分、美容よりもウェルネスやメンタルヘルスに関心が向きつつあるようです。
これまでコスメブランドの中にも、効能や時短といった機能ではなく「ルーティーン」という精神的なアプローチに重きをおくものがでてきていましたが、今後コスメブランドもそうしたメンタル面へのアプローチが求められ始めているのかもしれません。

「リベンジ・バイイング」は本当に起きるのか──中国の先行事例から考察する

徐々に外出規制が解かれつつある中国で、消費の揺り戻しはこれから起きていくのか?についての考察記事。中国では「リベンジ・バイイング」というワードが使われ、外出できるようになった今、消費をしよう!というムードが盛り上がっているようです。
一方で、外出規制の間もECでの購入意欲は衰えず、3%の成長を見せていたとのことなのでリアル店舗に行けるようになったからといって急激に消費が増えることはないのではないかという見方もあります。
また、コロナの世界的な流行と、その前に起きていた米中貿易摩擦もあって、今後の経済への見通しが暗いことから、年収の高い層ほど消費意欲が鈍化しているもよう。
これはおそらく日本を含め他国も同様で、収束の目処がたったあとも消費マインドが戻るにはしばらく時間を要するのではないかと思います。

***

毎日海外メディアの記事をピックし続けてもう1年以上経ちますが、現在ほど「この習慣を続けてきてよかった」と思ったことはありません。

情報は欧米と中国に偏りがちではあるものの、経済活動の復活という意味では中国の動きが、しばらく外出が規制されるという意味では欧米の動きが今後の打ち手を考える上でとても参考になります。

中国の景気動向に関してはまだ外出規制が解かれたばかりなこと、世界中ではウィルスが蔓延している状況を鑑みると、実店舗への影響を断じるにはまだ時期尚早とはいえ、2ヶ月間外出規制されると急速にオンラインへの順応が進むのだなという感覚があります。

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