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ものづくりへの想いは、大企業も変わらない #ローソンPBに思う

昨晩はローソンPBについて竹増社長にお話を伺う配信イベントに出演させていただきました。

開始前はもっとローソンのビジョンや開発背景をローソン視点で語っていただくイメージを持っていたのですが、開始早々から世論を真摯に受け止め、改善しようとしている姿勢に感銘を受けた方も多かったのではないでしょうか。

つまり今回のリニューアルもよりよくしていくための途中経過でしかなく、ここで得られた意見をもとにより多くの人にとって「いいもの」を作っていく。

途中で出てきた「チャレンジに失敗はない」という言葉は、まさにこれからのローソンPBのチャレンジ精神を表しているように思いました。

売上が増えても「失敗」はある

そして印象的だったのは、PBの売上は好調であると数字を示しながらも、ユニバーサルデザインの観点からは「失敗だった」と明言されていたこと。

今回視聴してくださった方の中には、「で、結局売上は増えたの?」「売上が増えてるなら正解なんじゃない?」という意見もあったと思います。
しかし売上が増えていたとしても、使いづらい・わかりづらいという声がこれだけ出ていること自体は「失敗」とみなし、速やかに改善していく。

「売れてるんだからこのままの路線でいきます」ということだってできる状況でもきちんと顧客の声に耳を傾け、売れること以外の価値に目を向けて判断されている点はさすがだなど思いました。

そもそも、コンビニの商品はとても早いサイクルでどんどん改善されているんですよね。
今回のデザインもはじめからアップデートは折込済みで、見づらいという意見に対しても今後どんどん改良されていくのだと思います。

ただ昨晩伺ったところによると、見づらさという「失敗」は受け止めつつも基本コンセプトは変えることなく、今のデザインを生かしつつ改良していきたいとのこと。
批判がでるとつい元に戻して一旦鎮静化しようとしてしまうケースもありますが、自分たちの大枠の考え方や目指すところには自信を持っているのだなと感じました。

「ものづくり」の精神は規模の大小に関わらない

そして視聴してくださったみなさんのコメントにも多かったのが、ものづくりへの真摯な姿勢でした。
特に毎日個人的にお店に立ち寄ってお客様との会話から肌感を得ていく姿勢は、言うほど簡単にできることではありません。

ローソンが大好きだからこそ、そこに並ぶ商品をクルーにも顧客にも愛してもらいたい。
そんなシンプルなモチベーションが、商品開発のレベルを高めているのだと感じました。

こうしたものづくりへのこだわりは日本だと「職人」の世界のことだと思われがちですが、これだけ大きな企業でも丁寧に顧客の声を聞き、それを生かし、フィードバックをまた生かしていくという地道な作業の繰り返しなのだな、という気づきもありました。
私たちが何気なく手に取る商品も、すべて作り手が思いを込めて作ったものである。
そんな当たり前のことにも気づかされました。

もうひとつ面白かったのは、今回リニューアルされたパッケージは日常に溶け込む「ケ」を意識しているのに対して、スイーツは「ハレ」と位置付け、わくわくしながら買ってもらうためにポップな色使いのパッケージにしている点。

コンビニは日用品を便利に買える場所でありつつ、買い物の楽しさを味わえる一番身近な場所なのだとも思いました。

こうした買い物シーンから逆算したパッケージデザインもまた、自分たちで売場を持ち、同じコンビニ内でも商品によって顧客の購買行動が変わることを理解しているからこその住み分けなのだと思います。

こうした分け方ができるのも、自分たちで作ったものを自分たちのチャネルで販売できるD2C的な側面を持つコンビニならではの考え方なのかもしれません。

アクセラレーターとしてのコンビニ

もうひとつ配信中に学んだのは、ローソンは各店舗の裁量がとても大きいこと。
チェーンストアはどの店舗でも同じ利便性を提供することを前提として成長してきたビジネスモデルです。

つまりなるべく例外を作らず、品揃えや店舗レイアウトを画一的なものにしていくことが商売の基本であり、「どこでも同じ期待に応えてくれる」ことの価値がコンビニのひとつの存在意義でもあったわけです。

しかしローソンが目指す「店舗の個性を発揮する」あり方は、今後のチェーンストアのあり方を大きく変えていくかもしれません。

ときどき同じ系列のコンビニでも、あのお店にはあったのに別のお店にいったら取り扱っていなかった!なんてことがよくありますよね。
期待して行った側としては不便を感じることもありますが、お店ごとに個性がでることで、「ローソン」だけでなく「あそこのローソン」という最小単位の指名につながっていくのもユニークだと思います。

さらに番組中にも発信した通り、全国のローソンで限定メニューや協業による新業態が増えていくことで、ローカルではじまったのものが全国区になる可能性を秘めていることも面白いポイントだと思っています。

私も百貨店時代に「百貨店はいいブランドを探してきて、私たちのお客様に紹介することでブランドを育てていくことも役割のひとつ」と教えられてきました。
つまりIT世界でいうアクセラレーターとしていいものを広げていくこともまた、小売に課せられた使命なのだと思います。

そしてコンビニは、日本でもトップレベルの店舗数を誇り誰もが気軽に接する店舗メディアでもあります。
だからこそ本部からの指示を押し付けるのではなくそれぞれのお店の特色を生かしながら、いいものは全国でも取り入れ、新たなヒットを生み出していくことができるプラットフォームなのではないかと思います。

「なんかよかったね」で終わらせないために

今回の配信では、竹増社長の謙虚で真摯な姿勢に感銘を受けた方も多かったと思います。
私も新しい学びが多く、とても楽しい時間でした。

一方で、ユニバーサルデザイン(やアクセシビリティ)の話、コンビニの公共性の話、商品開発においていかに多様な立場の意見を取り入れるかなど、様々な論点もSNSを通して浮かび上がってきています。

人間は感情の生き物なので、実際に顔をみてお話を伺うと好意を感じ、「真摯に話してくれてよかったね」で終わらせてしまうこともあると思います。

ただ今回の議論は一企業に矮小化すべき話ではなく、私たちひとりひとりの仕事においても意識すべきだし、消費者としてライフスタイルを考えるきっかけになった方もいると思います。

番組ではユニバーサルデザインについて少ししか語られませんでしたが、このテーマはアクセシビリティや公共性をどう捉えるかといった視点が複雑に絡み合っているテーマなので、私も引き続き考えていきたいと思っています。

ユニバーサルデザインやアクセシビリティに詳しい方は、ぜひこの機会に「そもそもUDやアクセシビリティとは何なのか」を解説する発信をしていただきたいですし、デザイナーとしてビジネスの目的を達成するためにどのようなアプローチをすべきとかといったお話も聞いてみたいです。

まなびとは、単に誰かの具体例を聞くだけではなく自分なりに抽象化して、自分なりの具体例に落とし込むことで深まるものだと私は考えています。

今回の配信で学んだこと、気づいたこと、自分の視点から他の人たちに知って欲しいことがあれば、ぜひご自身の言葉で考え、発信をしてみてください。

一過性の盛り上がりではなく、一人一人が考え「続ける」機会として、昨日の配信をみていただけるととても嬉しいです。

そして当日リアルタイムで視聴していただき、さらにコメントやハッシュタグ投稿もしてくださったみなさま、そして貴重な機会をくださったハフポストさん、ローソンさんに改めて感謝したいと思います。

これからも、「知性ある消費」が生まれる世界を目指して。

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